(雄介!ゼットンの倒し方は!)
「分かってる!意識を逸らして
宇宙恐竜ゼットンは怪獣の中でも特に強力な種族であり、その実力は宇宙に蔓延る有象無象の怪獣達とは一線を画する
故にウルトラマン達もその存在には警戒を払い、経験則から対ゼットン戦におけるセオリーを作り出していた
『バリアを躱して光線技』という一種の脳筋解決ではあるが、パワードやゼロ、ジャックといった数人のウルトラマン達によって考案された立派な作戦である。
(ゼットンはブリーダーによって強さが上下する、テレポートを使った以上は
「とにかく行くぞ!」
被害を広げる前にゼットンを街から離すべくゼットンの背後をとる
ゼットンの足元にいた少女は念力で浮かせ、飛ばして避難させてもらう
少し強引だが片手間ではこれしかできない!
「ゼァアアッ!」
【ピポポポポ……】
初手から光線は悪手という前例を踏まえ、万力の拳で格闘を挑むザインに対して、ゼットンもそれに応じて飛び込んでくる。
(移動はダッシュ、格闘応戦
少なくとも念力特化ではないぞ!)
(了解っ!)
特徴的な蛇腹の腕が振り回され、ザインの腕を薙ぎ払う
見た目には雑な振り回しにしか見えないが、巨大な腕から繰り出されたそれはウルトラマンすら吹き飛ばすほどのパワーを発揮した。
「ゴゥワッ!」
しかしこの程度では倒れない
反撃の拳が黄色く発光する顔面に叩き込まれ、しかし。
【ピポポポポ】
意に介した様子すらなく、さらなる攻撃を続けるゼットン
裏拳、膝蹴り、体勢を崩したザインは殴打されて吹き飛び、ビルを巻き込んで倒れ込んでしまった。
「シウワァァァッ!」
しかし、それだけで済ませる
爆発が上がり、煙と共にその姿が隠れる
風に煙がかき消されたその時
倒れ伏したザインのカラータイマーが鳴り始める。
(なんてフィジカルだ!拳を顔面に受けて怯みすらしない!)
「クソっ!エネルギーが!」
爆炎による致命傷を防ぐために膨大なエネルギーを消耗してしまったザイン
未だ敵に有効打を与えられていないにも関わらず、限界が近づいて来る。
(焦るな雄介!)
雄介はダメージを堪えて立ち上がろうとするが、ザインはそれを制した。
(よく見るんだ、ゼットンの様子がおかしい!)
そう、ゼットンは倒れたザインには目もくれずに風に舞う砂埃を振り払い腕を振り回して何もない空間を薙いでいる、暴風で吹き飛ばされ、足元に転がった自転車を蹴り飛ばしている
(まるで近寄る者の全てを無差別に攻撃しているようだ……)
「戦うにしては動きが無軌道過ぎる……アイツは一体何が目的で暴れてるんだ?」
(聞いたことがある、『ゼットン』とは作られた人工生物であると
ゼットンはゼットン星人がとある惑星にありとあらゆる生物を集めて殺し合わせ
その結果生き残った強者達の遺伝子を交配して作り出した遺伝子の怪物なんだ!)
「人型昆虫みたいな外見の癖して恐竜とか呼ばれてるのはそのせいか!」
通常、地球における生物の外観に似通う特徴を持つ怪獣は『爬虫類型』や『昆虫型』などそれぞれに分類されるが、ゼットンは違う、なぜか『分類不明』に属しているのに冠する二つ名は"宇宙恐竜"そう呼ばれるのは既存の遺伝子タイプどれにも似つかわしくないその特異な遺伝子が所以だったのだ。
【ピポポポポ……】
竜巻じみた砂に業を煮やしたか、ゼットンはテレポートして火球を放つ
結果として旋風は吹き飛ばされ砂埃は無くなったが、その行動は明らかな無駄
ただの風にエネルギーを使うテレポートを切り、挙句の果てに過剰極まりない火球まで使う
その様はまさに暴走
戦う敵か、ただの現象かの区別すらついていないのだ。
(戦うために生まれた弄ばれし生命
他を殺すために作られた殺戮者、と言うわけか)
「じゃあアイツは……戦うことしか知らない生物だってのか」
(おそらくな、あの様では動くもの全てを破壊することしか頭にないのだろう)
「なら……」
(ああ!念力を使うぞ、意識を集中しろっ!)
巨大な脳にシュミレートされる仮想現実が量子的相似性を発現して現実と同期し、仮想現実を書き換えて現実へと干渉する
波動理論からなる現実の書き換えによって世界へと干渉したザインの脳波に従い空間が捩れ、七色の波紋が不可思議な紋様を描き出す。
「ゼァアアッ!」
ザインが、そして雄介が行っているのは脳波同期、ウルトラマンパワードが得意としていた念力による相手の意識への干渉、そして説得
戦意を解消し、理解を促し、平和的方向へと導くための念力である。
「戦うことしか知らないと言うのなら
平和を教えてやればいい
飯食って、働いて勉強して、帰ってきて寝る!そんな平和な生活ってやつを!」
(雄介の記憶を送り込んで、平和な在り方というものを教えてやれば……!)
ザインを介して送り込まれる記憶がゼットンへと届く
メフィラス星人、ザラブ星人、ガッツ星人、ヤプール人、イカルス星人
さまざまな惑星を由来とする祖先達から優秀な脳を受け継いでいるゼットンに、それが理解できないはずはなく
念力によって注がれるその記憶を認識し、理解して
そして自分の行いを省みる。
【ピポポポポ……ピポポポポ……】
沸き立つ念力が二つの脳を接続し、一方に宿る意思と記憶を送信しきり
そして、干渉紋様が薄れて消えていく。
【ゼットォン】
「……これで……」
(いや油断するな!思考転写で記憶は送れてもそれだけだ!アイツがどう解釈するかはわからない!)
そう、記憶や感情を送信することはできても、それらを自分の体験のように実感できるわけではない
思い出を感想文にしたためた所で、それを読んだ人からのレスポンスが必ず自分と等しいということは無いのだ、特に戦うために生まれた存在であるゼットンには感情があるかどうかすら疑わしい
記憶を送信した所で例の声と共に火球を出されてもおかしくはないのだ。
カラータイマーが点滅する中、瓦礫に半ば埋まったままのザインが見つめる先で
ゼットンは立ち尽くしている
そして。
【ピポポポポ……ゼットォン……】
ゼットンは蛇腹に折れた脚を動かして、ザインへと近寄ってくる。
「ザインっ!」(来るかっ!?)
雄介は身構え、そしてザインも念力を備える
しかし膨大な消費によってエネルギーは限界寸前、時間経過も二分を過ぎている
これ以上念力を振り絞ればザイン自身が危うい。
【ゼットォン】
ザインの目がゼットンの水晶体を見つめる中、ゼットンは腕を振り回して
ザインを生き埋めにしている
的確に瓦礫だけを吹き飛ばして
ザインへと手を伸ばし、その腕を掴んで引き上げる。
「デヤァ!?」
【ピポポ……ゼッ……トォン】
そしてそのまま、ゼットンはテレポートして姿を消した。
これがコスモス流、ゼットンの倒し方
今後の作品展開の方針は?
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ニュージェネ系統
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昭和兄弟系統
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ンネェクサァス(ねっとり)