ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

40 / 109
エピソード14 ラプソディ 5

「さて、私の言い分はここまでです」

 

彼女は新たに淹れた紅茶を眺めながらそう言い、雄介のやや冷め始めたカップ、そして雄介自身へと視線を上げる

2人席で向かい合いながら。

 

「では今度は俺が語ろう

BURKの定めるところに於ける侵略行動の定義として、①地球又は人類に対して間接的あるいは直接的に攻撃する行為

 

②予告なく誘導に従わず各国の定める非常防衛線を超過する行為

 

③ドキュメントオブフォビドゥン及び各組織の定める規則に従う秘匿情報の無断開示

としている、このうち1.2両方に該当する以上、ギランボは敵性存在として認識せざるを得ない」

 

「ではどうすると」

「無論、こうする」

 

 二つのティーカップの湯気越しにBURKガンを向け、そのまま睨みつける雄介。

 

「これが防衛隊としての仕事だからだ、民間人であろうと元隊員であろうと敵ならば殺す

だが特例規則として②は予測不能な非常事態及びあらゆる手段を用いても意思疎通が困難な場合にのみ黙認されることもある

①については……解釈次第だ

極小スケールかつ他に害がなく、本人に利益があるならそれでいいとする事もできるだろう」

 

「銃を突き付けられながらの平和とは、随分と刹那的なあり方をしていらっしゃるようで」

「はあ……」

 

皮肉げに微笑みながら今度はチョコレートケーキへフォークを入れる彼女はあくまで余裕の様子を崩さない。

 

「これは本人と議論するべき事だ

お前が精神を乗っ取っているのなら解除してくれ、一応言っておくがまず本人の了承を得ずに乗っ取りを行うこと自体が既に攻撃行為だからな」

 

「ええ、分かりました

でも彼女の方がすこし混乱してしまうかも知れないので、時間を下さいな」

 

 軽く頷いて了意を示した雄介の前で、彼女は椅子を立ち、それと同時に廃材の山からパイプや板が飛び上がってベッドを形作る。

 

「はい、幽体離脱」

 

するり、と本当に彼女の肉体を残して精神体となったギランボだけが起き上がり

今度はふわりと浮いてテーブルまで戻ってくる。

 

「さぁ、彼女が起きるまでは準備の時間

まずはティーセットを揃えましょう」

 

 四脚の椅子と同じ数のティーカップが揃い、雄介の冷めた紅茶もどうやったのか再び湯気が立ち始める。

 

「何か入っているわけでもないのですけれど、疑り深い人」

 

 ギランボは霊体化してなお夢乃と同じ姿のまま笑って、片手に取った杖を振る。

 

「でも用意しないのも失礼だから、淹れ直させてもらいました」

 

 彼女の声と指先の一振りが超空間の様相を変えていく

夕焼けの公園から都会の片隅の住宅街、その一棟の建物の中即ち夢乃の家に近い姿へ。

 

「落ち着ける場所の方が良いですから……あぁ、普通のお宅にティーセットは似合いませんね

こういう時は卓袱台かしら?」

「ちゃぶ台って……まぁいいが」

 

眠り姫をよそにくだらない話をするうちに目が覚めたのか、今度はそちらが身を起こした。

 

「……んぅ……?」

「これで良いかしら、ねぇ夢乃」

 

「うん……うん?貴女はだれ?」

 

 同じ顔をしている2人が向かい合う。

 

「我は汝・汝は我、なんていうつもりは無いわ、以前一度会っているのだけれど

覚えてはいなかったかしら?私はギランボ、異次元から来た奇夜祭(ハロウィン)の魔女よ」

「ハロウィンの?……えっと」

 

 記憶を辿っているらしい彼女と向かい合ったまま、ギランボは姿を変える

彼女と以前に会った時に取っていたものなのだろう、銀髪長身碧眼の麗女へと。

 

「目を覚まして、記憶を開いて、縁を結んで、3つ数えるの

アン・ドゥ・トロワ」

 

 指先から星を散らしたギランボが三つ数えると同時に夢乃は一気に目を見開いた

精神体のギランボが憑依していた間の記憶をどこかに封じ込めていたのだろう

暗示のキーワードと共にそれを解除したのだ。

 

「貴女、私の体で随分と好きにしてくれたわね!」

「えぇ、楽しいこといっぱいしたわね、遊園地にも行ったし、花鳥園とか港とか色々見て回ったわ」

「そういう事じゃなくって!」

 

 勢い強く言葉を遮った夢乃は今度は急に言葉を止める。

 

「す……スカートが……短い……っ!」

 

 

 

「確かに」(一般的基準よりも短いのは事実だな)

 

 空気を読まない男どもに険しい視線を向ける夢乃と、それが悪いとは微塵も考えていないギランボの姿は対照的。

 

「でも短い方が可愛い事って多いじゃない?ミニスカの方が人の集まりも良いし」

「だからそれが恥ずかしいって事よ!」

 

 もはや彼女は涙目だった。

 

「まぁ今はそれを議論する時間じゃない、まず考えるべきはギランボの影響についてだ」

「うぅ……」

 

 長い長い沈黙が始まった。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。