ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード14 ラプソディ 6

「夢乃はもっと肌を出した方が良いと思うのよ、そんなに可愛いんだからちゃんと見せるべきだわ」

「そんなの私の勝手じゃないですか!」

 

「(……」)

 

 男どもはキャットファイトを流し見ながら待ち続け、その果てに決着がついたのは懐中時計で2時間を過ぎた頃だった。

 

「もうそれで良いからぁ……はぁ」

 

 諦めたのは夢乃の方だ、二時間も続いた議論をようやく打ち切った彼女は疲れ切った顔でベッドへ倒れ込む。

 

「あとね、脚のことなんだけど」

(「「…………」」)

 

 三者が一様に押し黙る一瞬を過ごし

全員で彼女を見つめる。

 

「私は部隊復帰を諦めない、現実(じぶん)には負けないから

必ずこの夢は叶えてみせる」

 

「えぇ、待っているわ

貴女の夢が叶う、その時を」

「でも、それだけじゃない」

 

 共に冷めてしまった紅茶とクッキーを分かち合い、その味に誓う。

 

「貴女と一緒に、私は進む

他でもない貴女自身が認めてくれた金の林檎(私の夢)だから」

「へぇ」

 

 

「茨の道になるわよ」

「覚悟してるわ」

 

「殺されるかも知れない」

「死ぬ覚悟はとっくにしたわね」

 

「生きたまま解剖とかもあり得るわ」

「流石にそれは誰もしないわ」

 

「結局叶わないかも知れないのよ?」

「夢なんだもの、それが叶うかどうかは人次第、でしょう」

 

 ギランボは自らのティーカップを高々と放り投げて、捨てる

カップに残ったままの紅茶がアーチを描き、それが虹へと変わる。

 

「貴女の未来に祝福を、貴女の希望に幸福を

幻想たる奇夜祭の魔女が唱う」

 

 七色の光がやがて集まり、白く変わり、天井が掻き消えて青空へと駆け上り太陽へ。

 

「我ら屍骨と腐肉の饐える墓所よりいでて

かつて栄華ありし館へと歩まん」

 

 夕暮れが駆逐され、廃材は組み変わり

錆びた鉄と腐った材木が生まれ変わる

 

「不幸と悪霊が我らの伴者

憎まれ疎まれ阻まれる敗者」

 

 鉄を炙る火が錆を落とし、鑢がかかり磨き上げられて骨組みへ

落ち枯れた枝華が再び瑞々しく姿を取り戻し、地へと根と葉を茂らせて咲き乱れる

 

「我ら萎えた足で歩まん、

我ら朽ちた喉で語らん

全て、遥か希望(太陽)の元に辿り着くために」

 

 放棄され、朽ちた廃材ばかりが捨てられた廃棄場が生まれ変わり

落ち掛けた太陽は新たにされ高々と昇り。

荒れた荒野は柔らかな草原へ、泥の積もった溝川は花咲く小川へ

かつて遊具や機械だった鉄屑たちは枯れ枝と共に絡み合い、鉄と枝で組まれたガボゼへ

まさに希望を象徴する輝かしい姿へと変わる。

 

「これが貴女の心、今の希望と夢を象徴する世界

さぁ、私を受け入れて」

「うん、一緒に頑張ろう!()()()()()!」

 

 夕暮れに止まった世界に新しい風が吹き渡る。

 

「クラリッサ、それが私の新しい名前なのね」

「可愛いでしょ?」

「言えてるわ」

 

 2人で笑い合う夢乃とギランボ

いや、クラリッサ

そして完全に蚊帳の外になってしまった雄介とザイン。

 

「椎菜君、ありがとう

私を見つけてくれて、クラリッサを捕まえてくれて」

「……それが仕事ですので」

 

 その一言の直後、2人の精神にリンクした超空間が破断し、次元隔壁が穿孔されて通常空間へと放逐された。

 


 

 一方、BURK日本支部では。

 

「空間転移の前兆確認!時空変動帯に振動あり!」

「怪獣あるいは超獣出現の可能性がある、緊急警戒体制!」

「レーダーに反応は?」

「ありません!ステルスの可能性があると思われます!」

 

 

 次元振動に慌ただしく対応していた

無論、全てギランボ改めクラリッサの影響であり怪獣が出現することもなく

ただただ無駄に駆け回るだけなのだが

そんなことを知る由もなく連絡不能に陥っている雄介達を心配しながら現場指揮をとるべく情報を集め出す駒門は置いてあった南瓜の置物を踏んで転び

豊満な胸が地面に押し付けられて歪むさまを幸運な一部隊員に見せつける事になるのだった。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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