ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード15 マクシムス 3

「ジャァッ!」

 

左腕を前に立て、右拳を握り、腰を落として構える宇宙拳法の型

すぐに跳躍し、飛行に移る

ザインの飛行速度はマッハ3、北海道から沖縄まで3分で行くには十分な速度とは言えないが、近場の山林に飛ぶならば30秒で十分だ。

 

「ギシャァァァッ!」

 

 浅い緋赤色のパンドンは土煙をあげて着地したザインを見て叫びをあげながら突撃してきた!

 

「ダッ!?デヤァァッ!」

 

 無論、拳にはザインも自信がある

宇宙拳法の中でも特にローカル、身体的な特徴を持つ種族がその特徴を活かすためにカスタムした特殊な拳を総称する妙妖拳型に属する赤心貫徹拳はこと防御において極めて優秀である。

 

 双方駆け寄って間合いを詰め、パンドンの叫びと共に突き込まれた嘴を受け止める、右腕で頭を押さえ込みながら左足で胴体を蹴り込み、腕力で空中へと放り投げ、自分も飛翔して拳を打ち込み、そのまま三度打ち付ける

顔面を抉る様な一撃がパンドンをのけぞらせた。

 

「デヤァァッ!」

 

 ザインの拳に光が満ち、そのまま大きく体勢を崩したパンドンの胴体を貫通する

完全に致命傷だ。

 

「クキャァァァァァァッ!」

 

 甲高い絶叫を上げながら地面に落下したパンドンは爆散し、それを見下ろしたザインはそのまま飛び立つ

そして空の果てへと飛んで消えて行った。

 


 

〈反応、消失しました……〉

「クソッ!」

 

 現場に急行していたクルセイダーズも基地へと取って返す、その最中

竜弥が膝を叩いた

 

「どうして……なんでいつも間に合わないッ!」

 

 クルセイダーへと機体を更新し、強くなったはずだった、怪獣の撃滅さえ単独でできる性能を備えた

だというのに、間に合わない

何度も、何度も、出撃してはただ帰るだけ

その苦しみの、何と大きなことか。

 

「クソォォオオッ!」

 

 プロテクターは拳を通さず、その衝撃までもを掻き消して

自責の痛みさえ伝えない。

 


 

「ふぅん……なるほど、やるじゃん……あのパンドン、本命はこっちってことか」

 

 小さく笑って、陰の内へ

女は姿を消していく。

 


 

「先生……先生が、ウルトラマンだったんだ……」

 

 今しがた見た光景が、繰り返し再生される

目に焼きつけられた姿は光へと変わる雄介の姿。

 

「先生……」

 

 怪我を心配する自分、勝利を祝福する自分、帰る彼を待つ自分

さまざまな感情に心を分断しながらも彼女は時を過ごしていく。

 

「帰ってきてね、先生……!」

 

 純粋な応援と純真な心

創傷への心配と傷つく心

そして自分にさえわからない、彼を待つ満たされない心。

 

 燃える様に、沈む様にそして焼け付き燻る様に、彼女の心は傷ついていく。

 


 

「おーい!大丈夫かー!?」

 

 怪獣の撃破後、宇宙からテレポートで帰還してきた雄介はすぐさま門の裏手から屋敷側へ。

 

「先生!」

 

 同じく息を切らして屋敷側から駆け寄ってきた彼女と衝突しないように足を止めて

そっと彼女を受け止める。

 

 

「怪我はなかったか?」

「うん」

 

 腕を回して抱きついてきた彼女を引っ剥がし、時間を見て一時限目はちょうど終わった頃であることを確認する。

 

「じゃあ2限の授業のための準備をしようか」

「ん」

 

 こくり、と頷いた彼女と共に

屋敷側へと歩く

どことなく幸せそうな表情の彼女を見遣り、雄介は次の授業が彼女の得意教科だったことを思い出した。

 

「雄介先生も、怪我してないよね」

「大丈夫、そう簡単に怪我するような鍛え方はしてないから」

 

 大学生(ゆうすけ)の背は、中学生(ありさ)からは大きく見えた。

 

 

 


 

 地面に、水に、浸透する

落ち腐りゆく果実にも、焼け付き焦げる草花にも

我燃える、ゆえに我あり

 

 紅き炎が猛るがままに。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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