ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピロード2 宇宙から 3

「あぁ、全く酷い目にあった……」

 

 全身の痛みにうめきながら肩を回す雄介

ウルトラマンになってはいても、全身のダメージは消え失せるわけではない

むしろ変身自体が人間の肉体にとっては大きな負担になり得るのだから

ダメージと疲労は増える事すらある。

 

(まさか地球に来てすぐにゼットンとは、なかなか運が悪いと言ったところか

まぁアレは倒さずとも解決できたのだからむしろ良かったと言うべきだろうか?)

 

「そーだな、初代みたいに疲弊してたりエネルギー不足で戦うよりはよっぽどマシ」

 

 大きく息をついて、雄介は再び歩き出す

コーヒーをもう一杯飲むために。

 

(見ろ雄介、警報が解除されたぞ!)

「お、もう解除されたのか、ずいぶん早いな」

 

 無人の街を二人で歩く

ウルトラマンと人間は、日常の平穏を取り戻した。

 


 

「よっしゃぁぁぁああ!」

「祝ゥー!ゼットン撃破ァァ!」

 

 一方BURKの司令室も、祝勝ムードに包まれていた

ゼットンは強力でありながら地球に現れた例も少なく、撃破困難な怪獣であったのだから、それを倒したことを祝する事は責められないだろう。

 

「喝ッ!」

 

 あまり騒ぎ過ぎなければ。

 

「貴様等ゼットンを倒して喜ぶのは良いが手を緩めるな!シークレットハイウェイを閉鎖し警報を解除!混乱防止のために帰還流を想定して交通量の多い道路の各所に交通整理を要請しろ!国土交通省に急遽の渋滞対策の申し込みと警察署の交通課の方に話を通せ!財務省に連絡して防衛費の繰上げの申請と被害額の査定を!

住宅及び財産損害者に対する支援を自衛隊、付近の病院で怪我人を受け入れるように掛け合え!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 弘原海の怒号が司令室に響いた

そして、慌てて動き出すメンバーたち

BURK日本支部は本日もフル回転

これが日本の日常である。

 


 

「あ〜あ、やられちゃったよゼットン

せっかく呼んだのに、ね」

 

 人影は笑う、自分の仕込みが無駄になった事を、そしてそのために使われた物を。

 

「次は何にしよっか、誰にしよっか

なるべく闇があるやつを探さなきゃ

さっきのおっさんじゃダメだったし

もっと色々狙い込まなきゃ行けないね

今度こそ、いい怪獣を見つけたいな」

 

 人影は笑う、新たなる生贄を探して

無人の街を彷徨いながら

人影は笑う、新たなる光を

光届かぬ陰の中から。

 

「さぁ、新しい闇を映し出そう」

 

 黒いコートを纏った女が、影の中から姿を現し、そして闇の内へと消えていく。

 

 


 

「ゼットンを倒した新しいウルトラマン……」

 

一方、有彩は自宅で自分のスマートフォン端末を眺めていた

ゼットン特別警報の解除、それはつまりゼットンの撃破を意味する

怪獣災害の中でも特種怪獣に当たるゼットンを撃破できる実力を持ったウルトラマン、それが新しく赴任してきたという事実の証明だ。

 

まだその勇姿は見れていないけど

戦闘回数が嵩めばBURK広報部のほうから映像が出回るはず

その時にゆっくりと確認すれば良い

新しい英雄(ヒーロー)の姿を。

 

「待ってるよ、ウルトラマン」

 

 最初に出てきたトカゲ型を倒した時の爆発はアキレスの光線のそれよりも大きかった

光で出来た剣は戦場から離れた家からでも見えていた。

 

「カッコよかったなぁ……」

 

 写真一枚として存在しない

名前も姿も知らないウルトラマンへ、有彩は思いを馳せる。

 


 

 本日行われる予定だった午後の講義については明日に送られ、休講となったため、やることのなくなった雄介

営業を再開したカフェでの一服も終え

暇ができたので市立図書館へと来ていた。

 

(ザイン、お前はこの場所は知ってるか?)

(“図書館”は書類・論文・本の集積保存及び情報公開の為にある、という事は知っているが、それ以上のことはよく分からないな)

 

(実は図書館には本だけじゃなく古い新聞や雑誌も残されている

その中でも特に価値のある物は閲覧禁止の“禁書庫”に置いてあるんだけど……今回見に来たのはそれじゃない)

 

 雄介が手にとったのは1983年発行の怪獣図鑑。

 

(それが、どうしたんだ?)

(地球側での記録とザインの記憶データとを照らし合わせて相互補完するため

それに過去のデータをあたることは“温故知新”といって新しい知見を得る為に役立つからな

今後戦う怪獣の対策も、ここから得られるかもしれない

それでなくても画像や説明文を見ながらなら()()()()効率も良くなる)

 

 本棚を離れてテーブルスペースへと図鑑を運び、そこに置いた本の立てた重々しい音に驚きながら装丁された表紙を開く。

 

(最初の怪獣とされるベムラー、正式に地球で観測された中では初期のものだな

正式記録ではないがリトラやペギラなども確認されている)

 

(宇宙中で見ても極めて希少な抗スペシウム能力を持つアントラー、そもそも『存在しない』ために攻撃できないグリーザ、そう言った特殊例と言うべき怪獣を先んじて観測できているのはせめてもの救いか)

(そうだな……もし自分が戦うことになったらどうするか、それを考えておこう)

 

 ページを次々にめくりながら、雄介とザインは言葉を交わす

時折に離席して本を持ち変え、水分や軽食を補給しながら閉館時間の寸前まで、二人の読書は続いた。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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