「ウルトラマンめ、余計な事を……」
転送装置を片手に、鎧姿の男はつぶやく
いや違う
甲冑を纏ったように見えた姿はその男の生体装甲に過ぎなかったのだ
生まれをサーペント星に持つ男
地球風に呼ぶならば、サーペント星人アコナ。
「パンドンといいホーといい、厄介な星なだけあって怪獣も強力
捕まえて見たかったところだ」
挙げた二体は共に体の90%以上が水で構成される自分の性質とは相性の悪い怪獣であったことから自分が運用することはないにせよ、売り飛ばせば相応の収穫にはなっただろう怪獣だった。
「だというのに!
このままでは円盤代さえ賄えない、せっかく100年ローンを組んだというのに……と、いっても無駄か……」
彼はこの遠征のためにわざわざ円盤を新形にしたというのにまるで役に立てていない
どころかこれで丸二年は祖星に帰れてすらいない
アキレスの盾のバリアが健在なうちはワープでさえまともにすり抜けられないことは彼自身が実証済みなのだ。
「あぁ、しかし地球の中でも特に水が良い日本を潜伏先にしていてよかった
でなければとっくに肉体を維持できなくなっていただろうな」
肉体の90%以上が水という性質上、水質が良い場所こそ望ましい
しかし、流石に名水といえども純度が高いにも限度はある
数年を地球で潜伏し続けた彼の肉体には既に不純物が限界寸前まで蓄積し、ひどい体調不良を誘発していた。
「連絡記録
地球時間西暦2057年、11月30日
天の川銀河標準時11.40
経時劣化による体水分子汚濁は厳しく、もはや肉体は限界に達した、私はこれより一か八かの賭けを行う
付近の病院に潜入し高純度精製水を入手、あるいは地球人の肉体へと憑依しての復調の試みである。」
彼は円盤の中で、記録装置に向かって最後になるかもしれない記録を残していた
同族やそれでなくともボーグ星人のような近縁の星人に発見されればその記録が持ち帰られるであろうと信じて。
「もはや作戦と言えるほどの計画性はないため、これは賭けである
我が命を懸けた賭けをこれより実行する」
多少状態が悪かろうと、生体融合する事でお互い回復することができるのは周知の事実
病院という施設には体調が悪化した人間がいる
その中でもいくらかマシな状態の個体に憑依すれば行動自体はできる程度にはなるだろう
その後は高純度精製水を確保して自分自身の状態を万全とは言わずとも回復させたい。
「記録終了、我が最期の記録を発見した人物がいるのなら、サーペント1076-74の12へ、運んでくれるなら幸だ」
最後の言葉を記録して、記録装置のエネルギーをカットする
もう幾許もないエネルギーはできる限りに節約しなくてはならない。
「せめて純水か人体、どちらかだけでも……」
環境の違うこの星では純粋な水はなかなか手に入らない、降下成功後約1年は円盤も正常に動いていたために問題はなかったのだが
ノーバが無差別に降らせた赤い雨の影響で急速にフィルターが劣化して濾過装置がやられ、純水の精製が不可能となり、燃料不足でイオンジェットエンジンも使用不能になってしまった
そして離脱できないままモタモタしているうちにクトゥルフが現れ
アキレスの盾がバリアを展開して、強行突破を試みるも失敗、不時着で今度は発電主機まで破損した結果、私は地球に幽閉され枯死を待つだけの哀れなサーペント星人に成り果てたわけだ。
「……行動を、開始する」
怪獣ハンターとしてそれなりに戦ってきた彼のサーペント星人は
素早く思考を切り替え、賭けを開始した。
「暇だなぁ……」
脳内でテトリスやクロスワードを解きながら知恵の輪をカチャカチャ弄り回す雄介
自分で設定して自分で解くのはなかなか苦痛だが、たまに用意していなかった回答が出てきたりすることもあるため、彼は暇潰しにこれを活用していた。
(これを機に鍛え直したいところだな
雄介の身体にばかり負荷をかけてはいられない)
(それはいいや、俺も入院期間は鍛え直すよ)
こうしてBURK入隊試験の時は自分の運動不足を実感した雄介も都合よく暇な時間ができた事で本格的な錆び取りを始めることにしたのだった。
今後の作品展開の方針は?
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ニュージェネ系統
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昭和兄弟系統
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ンネェクサァス(ねっとり)