「……うぅーん、なんの反応もないですねぇ……」
報告後、一時間ほど複合レーダーの監視情報を見つめていてもなんの反応もない
反応が出た座標も録に絞り込めず、これは流石にスカと考える方が良いだろう。
規定の警戒時間を過ぎてもしばらくレーダーを見つめながら仕事を続け
ついに日が暮れるというその時に、わずかながら持続的な反応をとらえた。
「緊急連絡!複合レーダーに反応あり、反応即時消失せず!隠蔽工作を施された敵性体と判断!」
〈その反応の座標は!?〉
「あまりに微弱なため、絞り込み切れていませんが、おそらくT-20〜23と思われます!」
ヘッドセットから聞こえる弘原海の質問に対して答えたのはBURK日本支部基地に程近い座標、敵はすぐ近くにいる可能性が高いのだ。
〈事態の緊急性を認める、憶測でも構わん、敵の正体はわかるか?〉
「本当に憶測ですが……生命感知レーダーにすら微弱な反応しか無いということはまともな生命活動はしていない生物と考えた方がいいでしょう」
〈それは?〉
「菌類、岩石、あるいは単元素鉱物、ガス生命体など、我々炭素系生物の常識では考え得ない生態を有する生物のことです
これらは基本的に生命エネルギー反応が弱いので感知しずらいものなんです」
霧島は手元にある端末を引き寄せてタイプし、サーバーのメモリ領域へアクセス
アーカイブ・ドキュメントの中に幾らかの例を見出し、それらを表示する。
「たとえば『フェミゴン』は霊体とされる性質を持つ怪獣で、人間に憑依することで実体化します
非憑依状態では物質に接触することすらなく、またエネルギーをほぼ持ちません
本質が光そのものである『プリズ魔』はそもそも生命反応を持たず、無差別に光を吸収するためレーダーを撹乱します
また、これはちょっと違いますが虫型『インセクタス』は幼虫状態に於いては人間の体内に潜伏するほど小さく、これもエネルギー感知はほとんど効きません
それとこいつは電磁波を吸収する体表構造を持っているため、普通の物体感知用レーダーも効きません
このようにセンサー類を掻い潜る常識はずれな手段を持った怪獣というものは一定数存在しています」
〈しかし、それらをどうやって警戒すればいいんだ?〉
明確な解決法、特効的な対策は存在しないと言っていいそれらに対して
解決を求める弘原海の声。
「……すみません、僕にもそれは分かりません、ですがなんらかの行動を起こすタイミングでは、人間にアクセスしたり巨大化したりと反応が増大する場面があります
常に警戒を維持すれば、あるいは」
〈そうか、よし、レーダー監視は常に付けるよう、24時間態勢で任務に当たってくれ、槙島をスライドさせて2人でしばらく保たせろ
俺は事務局にあたって増員を入れるよう働きかける〉
「了解しました」
自分の仕事がもし間違っていたらただの待ちぼうけになってしまうが
なんにせよ警戒に越したことはない
レーダーが一定の反応を示した以上は、警戒に入るべきなのだ。
「よし、がんばろ」
今夜は濃いコーヒーのお世話になるのだろう声が、インカム越しに弘原海に届いた。
「あぁ……動くことすらままならん」
かつては銀色にゆらめいていた生体鎧装も黒く燻み、滑らかであった関節もギシギシと軋む
幸いセンサー類の技術は未熟で設置も甘いようで、人目さえ掻い潜れば問題なく潜入できるようだが、この状態では歩くことさえ苦痛だ。
「…………」
沈黙と共に歩き、軋みと共に進む
命を懸けて、進む。
おまけ
霧島裕一(キリシマ・ユウイチ)
本作オリジナルのキャラクター
年齢22 BURK在職歴3年
BURK 日本支部作戦室付きチーフオペレーター
好物は大豆
苦手はコンビーフ
怪獣の種類、名称、生態に詳しく
直接視認さえできれば既知の怪獣・宇宙人なら一目で種別を看破することができる
以前はBURK日本支部京都分所に勤めていたが、アキレス編中盤にてBURK日本支部東京基地に転属してきた。
今後の作品展開の方針は?
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ニュージェネ系統
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昭和兄弟系統
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ンネェクサァス(ねっとり)