ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード17 白雲白霞 3

「作戦決行はガンダー降下タイミングに合わせて14日後、いつでも開始できるように用意は万全に備えるよう

また、本作戦の呼称はオペレーショントライデントとします」

 

《了解!》

 

 駒門の声が会議を打ち切り、全員が行動を開始

まずは事務方が各方面に連絡を取り始め、それと同時にシュミレーターのために実働部隊が席を立った。

 

 

「それでこの作戦、彼には伝えるんですか?」

〈伝えて良い、なんなら作戦人員に入れてしまえ、14日あれば復帰できるだろう

できる限り支援に徹してもらおう〉

 

「了解しました」

 

 作戦室裏の階段で無線越しに密談する駒門、無線の先にいるのは無論弘原海だ。

 

〈一応マグネリュームを用意しておけ〉

「では、そのように指示しておきます」

 

 二人の間の連絡が切られ、お互い一つ息をついた。

 


 

「しかし、妙だな……

アキレスの時も、カイナの時も変身者にここまでの反動はなかった、

変身回数は確認できる限り15回、だけだ

それにアキレスは重傷を負うことはあっても変身者本人が動けなくなることはなかった……」

 

 弘原海は日本支部の支部長室へと続く長い階段を歩きながらつぶやく。

 

「変身自体を止めるか、あるいはもっとサポートを手厚くできればいいが」

 

 流石に毎度毎度入院させてしまうわけにもいかない以上、なんらかの手段でダメージを回避するか、あるいは変身自体を抑制すればダメージは抑えることができるだろう

それを本人が良しとするかは別として。

 

 

「失礼します」

「お、来たか」

 

 長い階段を登り切り、扉を開いた先にはいつものヒゲ、朽木竜胆日本支部長が座っていた。

 

「俺も聞いたぞ、14日後というじゃないか……策はあるのか?」

「はい、作戦は決定しました

まずは民間企業への依頼費とお役所の手続きすっ飛ばしでのお小言の方を片付けます

して、問題ですが

アメリカ以外の支部から風龍を借り受けたいのです、宜しいですか」

「……何機だ?3機?」

「いいえ、私も出ます」

 

 それを聞いて、支部長のメモに走らせる筆が止まる。

 

「……その言葉の意味は、わかってるんだろうな?」

「もちろんです」

 

「そうか、ならいい

諸々は事務にやらせるから、お前達は最優先で慣熟訓練を済ませろ

それと奴はどうなった?」

「はい、彼ですが……生体損傷により身体に復元困難なダメージを負っています

14日あれば復帰には間に合うかもしれませんが、潜性損傷の回復は十分ではないかと」

 

 支部長は指を空中からデスクに戻して、引き出しから新しい紙を取り出し

それにパンパンと判を押していく。

 

「わかった、じゃあ復帰次第サポート人員に入れておけ、いつものように誤魔化してな、これが命令書だ

いくら強情でも長官印付きなら従わざるを得んだろうよ」

 

 そうして、日は過ぎていく。

 


 

 

「作戦開始日となりました、依然ガンダーは確認されず

「了解、引き続き警戒されたし」

 

 BURK風龍への機種転換を終え、クルセイダーズは出撃待機に入っていた

長期待機に備えて半数ずつ仮眠をとり、半数は出撃に備える

 本作戦は元来日本支部のみで実行するつもりだったのだが、エリアルベースからの出向という形で2機の風龍が更に追加されている

速度重視の機体である風龍(フェイロン)は炮龍ほどの火力はないが、一撃離脱に徹する運用での成績は信頼できる域にあるだろう。

 

「……流石に午前0時なんてこたぁ無いか……」

 

「複座式で実戦なんて何年振りですか?全く嫌になりますねぇ」

 野郎のケツなんて眺めても仕方がないため、諦めて前方に意識を集中する二人

風龍A-1、待機中。

 

 

一方、機体ごとエリアルベースから一時出向してきた美女達の方は乗り慣れているのか特に文句も無いようで、二人して顔を見合わせていた。

 

「どれに乗っても性能は同じなのに、わざわざ所属で分けるなんて意味あったんでしょうか?」

「私たちが野郎にセクハラされない、かしらね、昔あったのよ」

 

〈……交代までは集中を維持して〉

 

 駒門の乗る風龍B-2からの通信に肩をすくめた風龍B-1メインパイロットの結陽菜(ユイ・ハルナ)

正面に視線を戻した同機サブパイロット三河秋穂(ミカワ・アキホ)がそれに気づいた。

 

「外気温急速に低下、ガンダー来ますっ!」

〈総員出撃!迎え撃て!〉

 

《了解ッ!》

 

 待機中の風龍A-1 B-1 B-2の三機が未明の空に飛び立つ

パイロットはそれぞれ竜弥+徹、結+三河、そして駒門+雄介だ

残りの機体はA-2に丈治+比良泉、A-3には弘原海と戦闘型(B・T)機動火器管制(・F・R・)人工知能(AI)のタンデムである。

 


 

「君の仕事は奴の観察

できる限り奴の弱点を探って」

「はい」

 

 ザイン=雄介は突貫で爆撃機の操縦訓練を終わらせ、副操縦席に座っていた

できる限りスリムな流線形状に保ちたいがためにコックピットのピラミッド型という座席配置はわかるのだが、前席メインパイロットの操縦席は大型バイクのような騎乗型、後席副操縦席及びその後ろに逆向きに備わる2つのオペ席は座席型とアンバランスなのは謎だ。

 

「機体は副側からでもコントロールできるようになっているけれど、操縦は私がします

攻撃についてはそちらに一任するから適宜、ただし76ミリ単装砲は40発のみ、レートは1/1sの再装填なし撃ち切りなので注意されたし

シュミレーターなら山ほど撃てるけれど、実際は弾数もないしブレるから確実に当てられる時以外は撃たないように

なお本作戦に於いては特別改修で取り付けた翼下ハードポイントから撃つことになるミサイルの複数同時着弾が鍵となります

これは私がやるから意識する必要はないけれど、落とされたら即座に作戦失敗と考えなさい、まぁ……あなたが落ちることはないから安心して良いわ」

 

 雄介が思い出すのは駒門の声

シュミレーターでの成績は高いわけではなかったために緊張の取れない雄介を励ましながら、同時にできる限り詳細に説明をしてくれた声だった。

 

「ガンダーは凍結能力と飛行能力を持ち、天候を操る力を持った強大な怪獣、狙うなら一点突破よ

スペシウム兵器である神虎ミサイルなら6発同時着弾すれば理論上それができる

だからあなたには通常兵器でそのための隙を作ってもらう」

 

「手順さえ間違わなければ誰が撃っても当たるもの、恐れずに、

あなたの感覚で撃って構わないわ」

 

 

 

「……よし!」

 

 操縦桿に存在するバルカン発射ボタンに指を掛け、保護カバーを開ける

サブパイロット側の席は武装コントロールに注力するため、メイン側と同等である操縦系の機器を敢えてカットしてある

間違って飛行軌道がブレる心配もない。

 

「接近する、牽制を!」

「了解ッ!」

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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