ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード17 白雲白霞 4

 凄まじい振動、エンジンが爆発しているということは知っていてもそれを実感することになるとは思わなかった雄介は悲鳴をあげ掛けるが、男の矜持でそれを堪えながら速射砲をぶっ放した。

 

「残弾は!」「残り30です!」「よし!」

 

 ガンダーもただ撃たれるだけの的ではない、頭部からの冷凍放射攻撃を急旋回で回避しつつ上昇の負荷に耐えながら爆弾倉を開放

機首は再び敵へ向かい、その前方に狙いをつける。

 

「投下します!」「はい!」

 

 降下してくるガンダーを水際で叩き、あわよくば撃ち落として空中で爆殺する

その作戦の中核として極めて重要な武装である中国製スペシウム弾頭誘導弾、神虎を除いた全ての武装がいま、雄介の手に委ねられているのだ。

 

「命中した、戦果確認!」「了解」

 

 背後に上がる爆炎と噴煙は確かにガンダーの体表を焼いている

1000°cに及ぶ高熱を発するナパームの焼夷効果に苛まれているであろうガンダーは暴れ回るが、ゲル状の高粘性液体燃料は易々と剥がれはしない。

 

〈ナイスぅ!〉〈お前天才かっ!〉

 

 通信に流れる声を聞き流して旋回上昇する機体の軌道を先読みしつつ再び機関銃の発射準備

遅れて出撃してきたA-2、A-3の2機も合流して左右からガンダーを挟撃する。

 

〈今が好機だ!体勢を崩すぞ、一斉攻撃!〉

 

 突撃してきた弘原海の機体が人外の軌道で敵の背後を取り、背に生えた羽根を撃ち千切った

その瞬間。

 

「コンタクトまで2.1.今っ!」

〈うぉっしゃぁぁぁっ!〉

〈fireッ! 〉

 

 隊列が整いガンダーは空中、こちらの準備は十分だ、弘原海の指示に従った5機の風龍全てが翼下ハードポイントに積まれた装備の使用を宣告する。

 

《神虎炸裂誘導弾(ミサイル)、発射!》

 

 火星地層下で採掘された高純度スペシウム鉱を更に純化した再精製スペシウム結晶を弾頭として搭載したミサイルが放たれ、一斉に爆発

爆風がスペシウム結晶を加圧・加熱し、瞬時かつ高度に圧縮されたスペシウムが原子崩壊を起こす

核弾頭となんら変わらない条約違反の秘匿兵器が青白い死を振り撒いた。

 


 

「日本の方は大丈夫かしら?」

 

 ところ変わってオーシャンベース

呑狼明は考えていた

日本/天空・アメリカ以外各支部からの精鋭チーム派遣ということも相まって非常に混沌とした戦場となることが予測される

シードラゴンは大型の攻撃機であり、軽戦闘機であるセイバーや高速爆撃機である風龍とは速度規格が合わない

性能が統一できない機体では連携は困難だ

無論阿吽の呼吸が有れば地上車両とすら連携を取ることはできるのだが、急造された捏上げチームでそんなことは期待できない

シードラゴンを使うべきか、性質を合わせて対怪獣爆撃機、海蛇(シーサーペント)を使うか、あるいは速度を合わせて戦闘機海馬(シーホース)を使うか

どうするべきか、何ができるか

優先するべきは何かを考えていた。

 

〈作戦開始日となりました、ガンダー出現に備えて出撃してください〉

 

 彼女が咄嗟に選んだのは、海馬(シーホース)

他支部ではBURKケルピーとして知られる哨戒機を改造した転用戦闘機である。

 

「仕方ないっ!」

 

 作戦は単純だ、止めは南極基地が担当してくれる、私たちはひたすら機を作るために足止めに徹する

アンタクティカのディザスター級兵器、黒縄地獄(インフェルノ)がガンダーを焼くまで。

 

「オーシャン呑狼明、シーホース、出撃ッ!」

 

 音声で起動したシーホースがハンガーから注水されたカタパルトへ降ろされ

そのまま潜水出撃、海面を突き破って空へ飛び出した!

 

 隊列は複横陣、私のシーホースも大外に付く。

 

「攻撃準備完了!」

 

〈こちらローマ支部空戦隊隊長アスティカ、オーシャンの空戦隊は一人だけなのね〉

「私だけで十分なの、全生命の起源(うみ)、舐めないでもらいます!」

 

〈ごめんね、その子アスカちゃんなの〉

「ちょっと!?」

 

 突然聞き捨てならないワードが飛び出してきた気がしたため、目の前の計器に視線を落とし

そして急激に上昇した環境指数を見た。

 

「来るっ!後で説明してもらうからねぇっ!」

 

 直上に出現した反応を追って真上に機首を向け、ジャベリンを射出するが

ロックした相手を追尾するはずのミサイルは特に芸もない回避で躱されてしまった。

 

〈明、そいつ熱源反応がないわ!〉

「嘘!?サーマルロックできないの?!」

〈回避してっ!!〉

 

 オペレーターの絶叫と同時に身を捩りフルフラップ展開、急減速した私の機体は隊列を外れて大きく左へと逸れる

そして身を戻した瞬間、戦慄した。

 

「凍って……る!?」

 

 遥か天空から海面を突き破って海底まで、巨大な氷の柱が貫いた

そうとしか形容できない現象

空中の水分すらも瞬時に凍結するほどの凍結能力が振るわれたのだ。

 

「やってくれるじゃない!」

 

 フラップを戻して再加速、安定を取り戻すが

幾らかの僚機も凍結に巻き込まれて氷に閉じ込められてしまったようで、各隊も混乱している

いかに戦闘機とはいえど無数に僚機飛び交うこの状況では衝突事故を起こしかねないため、単独での突撃はできない

少なくとも全体指揮を取り戻さなくてはならない。

 

「ジャベリン残弾2!」

 

 それでも仕事は変わらない。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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