スペシウムは質量が増すほど、加速度的に反応速度が増加し、安定性が低下し、そしてなぜか半減期も短縮される
つまり大質量であればあるほど爆発しやすく、爆発威力が高いのだ
5機の風龍から発射されたスペシウム弾は見事にタイミングを揃えて爆発し
相互に爆風を煽り合って青白い光を振り撒いた
それはウルトラマンのスペシウム光線にも劣らないほどの火力を発揮してガンダーを焼き尽くす
はずだった。
「ギシュァァァァッ!」
爆発的な大音声と共に、全方位に衝撃波が放たれ、各機それぞれに隊列を崩しながら安定を取り戻すために機体を制御する。
その刹那に、ザインは見た
爆発の寸前に凍結能力で氷の鎧を作り出し、防ぎきれずに削られて飛散した氷片を再凍結したガンダーの姿を。
〈総攻撃ッ!削り倒せっ!〉
現在の最大火力であるスペシウム兵器を使ってしまった以上、既にそれ以上の戦果は望めない
だからといって、諦めはしない
弘原海の叫びよりも早く各機全武装をアンロックし、飽和攻撃を仕掛けた!
〈いっけぇぇぇぇえっ!〉
〈オラオラオラオラオラオラァァッ!〉
〈死ねぇぇぇぇ!〉
〈っ!〉
単装砲の連射が、急降下爆撃がガンダーの氷質組織を破壊する
普通の怪獣なら、これで撃破できたのだろう
それができないからこそ、スペシウム兵器に頼ったのだろう
それを忘れたわけではない
だが、ただ座して死ぬほどに人間というモノは諦めが上手くない。
〈まずいっ!〉〈くっ!〉
反撃に出たガンダーの凍結光線が機体下部を掠り、ハッチが凍結して作動しなくなる
爆撃機にとってそれは致命傷だ
まして一度攻撃態勢をとっておきながらその有様を晒せば、それは大きな隙となる。
ガンダーの攻撃はその機体へと、風龍B-1へと集中した。
〈退けっ!〉
その直後に比良泉の駆るA-2が急降下爆撃による突撃を仕掛け、連続着弾した爆弾がガンダーの体表に大きな衝撃を与えて後退させる
が、B-1の飛行姿勢は安定せず、武装もほぼ全てを失った状態だ。
〈風龍B-1、緊急退却せよ〉
〈了解……まさか私たちが最初に落とされるなんてぇ……〉
〈撤退します〉
弘原海の指示と結の嘆き
そして翼を翻した機体が退却していく。
「カバーに入る、弾は?」
「速射砲15発、焼夷弾ゼロ、爆弾ゼロです!」
しかし、こちらもほぼ全てを打ち尽くしたため、残りの武装はわずか
弘原海の声にも焦りがチラつく。
〈機動に自信のあるものは撹乱に入れ、隙を作って核を狙うぞ!〉
〈支部長権限によりアステロイドバスター級兵装を解禁した、これより砲撃支援を行う〉
そして、その直後
頭上から紅い閃光が降り注ぎ、ガンダーを叩き落とした。
「なにっ!?」〈砲撃だと?〉
〈シルバーシャークです!〉
反応はさまざま、しかし対応は皆同じ
一斉に残弾全てを吐き出して、最後の一斉攻撃を行った
風龍は設計時点からエネルギー兵器を想定せず、実弾兵器のみで火力を賄うように作られている
ジェネレーターさえ動いていれば際限なく撃てるビーム砲を備えていないが故に、弾切れは常に悩みの種となる
だが逆に、やりきれない事こそ最も忌むべき失敗として考えるのが戦士達。
「……(行くぞ)」
(ああ)
前方に集中している駒門の背後で固定ベルトを外した雄介は光へと変わり
キャノピーをすり抜けて降り立つ
ウルトラマンとして。
「デュァッ!」
巨大な光の戦士としての肉体を持つザインは変身直後こそ一瞬体感速度の誤差に硬直するも、すぐさま身体をコントロールして着地し、構えをとる。
「ギシュァァァァッ!」「デェァッ!」
空中から体が半分ほど焼失したガンダーが降ってくるのを視認するや否や両手にスペシウムエネルギーを出力し、それを発射
直撃したガンダーはさして抵抗もなく爆散した。
〈……よし!帰還するぞ〉
〈いや、まだだ!ウルトラマン!オーストラリアのチームが壊滅的状況にある、行ってくれっ!〉
オーストラリアは日本から見れば地球半周の位置にある、ウルトラマンの音速を上回る速度をもってしても時間は掛かる
しかし、それは大気圏内の通常航行での話
一旦宇宙まで出ればもうエネルギー減衰も制限時間もソニックブームも気にする必要はない
マッハ50を超える真の限界速度を発揮できるのだ。
「デュァッ」
ザインは去りゆく戦闘機に視線を合わせると、ひとつ頷いて飛翔する
遥か、遠く星の空へ。
ローマ支部の風龍に搭載された通常兵装、ダンツァトリーチェ
ドイツ支部のベルクシュナイダーから発想を受けたと言われるそれは、二枚組のプロペラのような形をした極薄ブレードを内蔵するクラスター爆弾
風に乗って回転しながら半径数百メートルを巻き込む拡散領域とコンクリートでも切り刻む斬撃性能、そして製造の容易さを以て、一時期は主兵装にすら抜擢された
生命倫理に背いた非人道的兵器である。
「まさかこうも効かないなんてね……」
ローマから出向してきた隊員、ソフィア・アグリーコラが表情を引き攣らせたのは、そういう理由だ
人道的でないとして、対生物使用を禁じられるほどの火力を持つ兵装が、全く効かない
鉄すら切り刻むブレードが、ただの氷に止められてしまっているのだ。
氷から僚機を脱出させるべくダンツァトリーチェをぶつけたはずが、氷の柱は多少削れた程度であり、既に復元しかけていた。
「どうすりゃいいってのよ!」
〈メテオール使用申請っ!〉
「艦長!メテオール使用申請です!」
「……全機能解放を許可する、生き延びろ!」
現場の明からの要請に応え、BURKオーシャンの基地母艦、オーシャンベースの艦長にして全海洋域防衛支部の支部長
アルメンタム・ニトリオが支部長権限を使用して地球外技術による兵装をアンロックした。
〈了解、permission shift to maneuver!マニューバモードッ!〉
次の瞬間、機体から展開される三対六枚の光の翼
黄金の粒子を振り撒きながら揺れる姿はまるで鋼鉄の天使のようだ。
〈音響爆雷起動〉
対海底攻撃用兵装、音響爆雷
水の中でこそ真価を発揮する衝撃波攻撃であるが、今回の使用法はむしろ逆
威力が高すぎると危険なのだから、空中で暴発させる
その瞬間凄まじい高音が鳴り響き、耳を劈く。
衝撃と爆圧が空気を叩き
戦闘機達の飛行軌道を揺らし、その黄金に輝く姿を強制的に見せつける
その姿はあまりにも輝かしく、神神しく、ガンダーすら吹雪を止めて見入るほどに眩しかった。
〈総員一時撤退!態勢を立て直せ!〉
その言葉に動かされた各機が撤退を開始した、メテオール維持時間残り55秒。
〈ここは私が凌ぎ切るっ!〉
今後の作品展開の方針は?
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ニュージェネ系統
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昭和兄弟系統
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ンネェクサァス(ねっとり)