ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード17 白雲白霞 6

「くっ……オラァッ!」

 

 160°急速旋回した海馬がその姿勢のまま軌道を直角にずらし、真横に動いて冷光攻撃を回避し、さらにビームで反撃する

 

「ふぅ……はぁ……ふぅ……」

 

 戦場の熱に浮かされて、荒い呼吸と共に全身に汗が湧く

目に伝った痛みさえも戦意へと変えて突撃した。

 

「ギシュァ……キュシャァァッ!」

 

 まともに狙っては当たらないと気づいたガンダーは多方向への連続攻撃を仕掛けた、たしかに数を打てば盲撃ちでも有効ではあるだろう

だが、甘い

その程度に撃ち落とされる程度では人類最高峰の一人を名乗れない。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 再び直角に軌道を変えた海馬が跳ねる

上昇と下降を繰り返して、飛び跳ねるように攻撃を躱していくのだ

もちろんついでの反撃は忘れない。

 

 

 メテオール維持時間、残り30秒。

 


 

「ザイン、間に合うか!!」

(間に合わせるんだ、そのために宇宙まで来た!)

 

 星の海へと飛び込んだ雄介とザインは急加速して限界速度まで一気に増速

地球半周という繊細かつ大胆なコーナリングを決める。

 

(雄介、エネルギーチャージ頼む!私は移動に全力を集中する)

「分かった!」

 

 雄介の意志がザインの肉体に太陽エネルギーを呼び込み、常に擦り減る力に光を注ぎ続け

ザインは無尽蔵の補給を受けながら際限なく力を解放する

僅かでもバランスが狂えば重力ターンに失敗し、月軌道まで弾き飛ばされるか大気圏に落下するか

鉄骨の上よりも細い辿るべき道を全速力で駆け抜けて

そしてようやく辿り着いた。

 

「うぉぉおおっ!」

「デェアアアアアッ!」

 

 大気摩擦と断熱圧縮で尋常ではない熱を起こし、その全てを現実改変して足へと集め

錐のように右足を突き出して、鋭く貫く。

 

 爆発でも切断でもなく、貫通

ウルトラマン一人分の穴が空いた巨大な氷の柱と共に、爆発的な衝撃波が戦場の空気を掻き回す。

 

「ジャッ!」

 

 片膝から立ち上がって、振り返り構える

左拳を下段前に、右拳は立てて守りに

いつものように。

 


 

 メテオール維持時間残り4秒

その瞬間、わずか4秒で事は起こった

レーダー観測すら間に合わないほどの速度で超高エネルギー体が突撃してきたのだ

そして氷の柱を打ち抜いてガンダーを蹴り飛ばし、そのまま吹き飛ばした

はるか彼方まで吹き飛んでいったガンダーの姿が視界から消えたその時、ようやく翼が消えて超機動形態マニューバモードが解除される。

 

「……ウルトラマン……」

 

 汗が目に入った痛みを思い出して目を閉じる寸前、瞼の裏には彼の姿が焼き付いていた。

 

 

「……戦闘再開ッ!」

 

 しかし、ガンダーの反応はまだ消えていない

一旦上がった気温は再び低下して氷点下に突入、季節は夏であるはずのオーストラリアの湾岸がまた凍結してしまった。

 

「デェァッ!」

 

 拳を構えたウルトラマンはすぐさま飛び上がって空中戦を仕掛け

頭部のスラッガーを投擲した

舞い上がる短刀型武装がガンダーの体表の氷組織を削るが、やはりガンダーの能力柄復氷してしまう

スケートリンクなどにも起こる、周辺の水分を取り込んで再凍結する現象だ

強力なものではないが、再生能力(リジェネ)とみて間違い無いだろう。

 

「デュァ……ダァァッ!」

 

 流石にスラッガーでは埒が開かないと判断したのか、彼自身が突撃して格闘を仕掛けに行く

通常なら高速空中戦では小規模なビームやハンドスラッシュなどの小技で牽制を繰り返すものだが、彼は遠距離戦が苦手なのかもしれない。

 

「デュェッ!」

 

 極めて不自然な挙動で体を回転させた彼はガンダーの凍気の中を突っ切り

そのまま左フックを叩き込んで凍った海面にガンダーを叩きつけた。

 

「……今ッ!」

 

 海馬(シーホース)の武装はメテオール兵装を除けば機首バルカン砲とミサイル6門、翼下にビーム砲2門

ミサイルは使い切ってしまったがビーム砲は撃てる

咄嗟に出力をmaxにまで上げたビーム砲、ドルフィンが遥か遠くのガンダーの額に熱烈なベーゼをプレゼントする。

 

「キヂィィィっ!?」

「デェアアアアアッ!」

 

 体勢を崩したガンダーにスペシウムの光を宿したスラッガーが叩きつけられる

その瞬間。

 

絶対零度(ゼロケルビン)

 

 

 

 

 空間が凍結した

地水火風の全てが、命が、光が、全ての力が失われた死だ

使い手自身の命すら犠牲にした凍結能力(フリーズ)の極地、絶対零度、宇宙の熱的限界の体現。

 

「クソ……」

 

 全てが凍り、全てが止まる、絶対の名は伊達ではない

突入すればこの機体ですら持たない

生身などもっての外だ

だから、何もできない。

 


 

「……私が出る、皆後は頼んだ」

「支部長!?しかし」

「こんなものを見せつけられて、黙っているわけにはいられない

それに、こんなところで活動できるのは私くらいのものだ

 

時間がない、出るぞ」

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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