ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード17 白雲白霞 7

〈そんな……ウルトラマンまで……!〉

 

 絶望的な事実に目を伏せても、無線から耳へと届く声、暗い感情の奔流が雪崩れ込んでくる。

 

〈諦めるな!凍結したと言ってもウルトラマンだ、そう簡単には死なないっ!〉

 

〈でもどうすりゃいいんだよ!凍っちまったら動けねぇだろ!〉

〈エネルギーを注入するんだ、黒縄地獄(インフェルノ)でなら空間エネルギー量は〉

〈お前はウルトラマンを焼き殺す気か!?〉

 

 無線からは種々様々な声が響く

希望を信じ続ける者、悲嘆する者、右往左往するだけの者、具体的な方法を考える者

十人十色の声が響く。

 

 そんな中で私はとっくに麻痺した生白い指先を無理矢理に動かしてシーホースを陸上基地にランディングさせるのだった。

 

「どうしよう」

 

 日本チームは遠すぎるし、アメリカチームも掛かり切り、私達は今、私達だけでウルトラマンの救助をしなくてはならない

そんな状況でどうするか、私達には経験が足りなかった。

 


 

「これより降下する、超低温領域に入るため通信は途絶するが気にするな」

 

 上空10000メートルで戦闘態勢をとっていたエリアルベースの下部ハッチを開き

人影が降下してくる

人間の生存領域をはるかに超えた低気温と強風をものともせずに突っ切って

ノンパラシュートで降下してくる彼は

天空防衛拠点エリアルベースの支部長、グローリアス。

 

「極低温は慣れたものだからな……」

 

 極限まで温度が低下した空間は全ての物が停止する、空気すら固体化し、真空となり急激に気圧が低下して爆発的な衝撃を生み出し存在するもの全てを吹き飛ばすほどの風が生まれる

その中でさえも動かないのだ

そも『熱』とは原子運動量を指すものであり、それが低下するという事はつまり、動かなくなるという事

絶対零度の中で動く原子はない。

 

 しかし、グローザ星系人は違う

彼らはもとより絶対零度近い温度の星に住み、そこに生きる生物

冷却という概念についてはどの星よりも知り、それを扱う術に長けている。

 

「…ッ!」

 

 凍結した通信機から最後の音

言葉にならない叫びが聞こえて、そのまま消える

電子機器のことごとくが機能を失っているのだ。

 

「無理もない…………」

 

 長く、息をついた彼は重く固い制服を捨て、氷の鎧を生成

そのまま凍りついた海面を歩き進んでいく。

 

 

 そして、その元へとたどり着いた。

 

「ウルトラマンよ」

 

 凍結し、光を失ったウルトラマンの氷像の下から巨大化し、グローザ星系人としての本来の姿を現した彼はウルトラマンのカラータイマーに触れる。

 

「目を覚ませ、お前が死ぬにはまだ早い」

 

 氷の結晶が光を回折させ、体内に取り込むことで輝くように

グローリアスの体もまた、光を取り込むことができる

全身から太陽光を受け、それを収束させてカラータイマーへと注ぎ込み続ける

やがて太陽の熱に焼かれて自らの肉体が溶け出してもなお、止めることなく

己の生命さえも鋳込むように。

 

「蘇るのだ……!」

 

 


 

 アメリカチームの戦闘は極めて長引いていた

本部長すらエクスカリバー・スコーピオンの投入を検討するほどに決定打に欠け

アメリカのディザスター級兵器であるポラリスレイとヘルズゲートは共に使用不能というところまで追い込まれていた。

 

 日本の銀嶺庭園、エクスカリバー・カプリコーン

イギリスの連合国旗(ユニオンフラッグ)雪原銀狼(カレイジャス)、エクスカリバー・ジェミニ

アメリカのポラリスレイとヘルズゲート、エクスカリバー・スコーピオン

それぞれの支部が保有する最終兵器(エクスカリバー)と併せてその所持数は3つに限られている

その内のポラリスレイは燃料製造の目処が立たず、そもそも凍結怪獣には意味がない、強制恒星間転移装置ヘルズゲートは先んじてゲートが破壊されてしまった。

 

 それに伴って非常電源さえほとんどやられてしまい、基地本体に存在するエネルギー武装はほぼ使用不能、生存領域の維持のために全力を注ぎ込まねばならない状態に陥り、チームブレイカーやチームスティンガー達によるアステロイドバスター級以下通常兵器での戦闘も難航している、厳しい状況だ。

 

「……戦況は」

「スティンガー2が落とされました、他は無事ですがクルセイダーのほうのジェネレーターが限界です!」

 

「ヒドラはどうした、砲撃支援に入ったのではなかったのか?」

「その…凍結攻撃で全滅しました」

「……」

 

 貴重な攻撃手段であったアステロイドバスター級ヒドラは運用人員ごと凍ってしまったらしい。

 

「融塩炉は?」

「未だ加熱中ですが、現在温度2000°を超えています

もう2分もすれば十分かと」

 

 太陽光を収束し、発生した超高温による塩化ナトリウムの分解で直接電気を得る、通称太陽炉

限りない太陽のエネルギーを直接人類の利用可能なエネルギーへと変えるこのシステムはあまりの高温と規模からまともな場所には建設できないとされていた

そしてそれらは事実として衛星軌道上に建設され、そこから無線送電が為される構造になっている

BURKの保有する最高機密の一つではあるが、ガンダーの凍結能力によってダウンしてしまった通常電源と発電所に代わる非常用電源確保のために止むを得ず緊急稼働を試みているのだ

 

「2分は長い……あと2分持たせられるのか?」

〈指令、大丈夫です、お望みとあらば何時間でも持たせて見せる!〉

〈隊長の言う通りです、頑張って見せますよ〉

 

「……頼む、お前たち

シルバーフラグズの状況は」

〈レストア完了、丁度今から飛べます!〉

 

「よし、チームシルバーフラグズ、出撃ッ!スティンガーズは帰還せよ!」

〈了解ッ!〉

 

 BURKクルセイダーの夜襲用カスタム機ナイトレイダーに乗ったチームスティンガーが帰還し、代わりに空へ飛び立つのは旧式機BURKストライダーに乗ったチームシルバーフラグズだ。

 

〈スティンガー1、帰還したわ〉

〈スティンガー3、補給と修繕を頼む〉

〈スティンガー6、帰還〉

 

〈こちら機械科(メカニカ)、クルセイダー受け入れまでは少し掛かる、我慢しろ

それより中身(パイロット)の体力は大丈夫か?〉

〈冗談、機体より先にヘバるわけ無いでしょ〉

 

 憎まれ口と共に帰還したスティンガーズの面々は次々に機体を降りて司令室へと帰ってくる。

 

「スチームない?私指冷えちゃった」

「湯でいいか、今沸かしてる」

「ちょっと!火傷しちゃうでしょ!」

 

「……バカは風邪をひかないと聞くが……?」

「アンタねぇ!私の事馬鹿にしてんの?!それに風邪と冷え症は別でしょうこのっ!」

 

「喧嘩はそこまでだ、今は作戦中だぞ

ブレイカー3ッ!?」

 

 諌めようとした指令の目の前で、ガンダーの攻撃を受けて爆砕したブレイカー3の駆るスカイマッケンジー

パイロットの安否を求めるが、衝撃でモニター画像にも砂嵐が混ざり、細かい姿までは追えない。

 

「クソっ!融塩炉はまだか!」

「あと20秒っ!」

 


 

「……ッ!」

 

 全身がひび割れ、溶け出してなおも力を、命を注ぎ続けたグローリアスが崩れ落ちる

ウルトラマンとグローザ星系人、高熱と低温のエネルギーを旨とする星人達の相性は最悪であり、生体エネルギーすらもその性質がまるで合わないのだ

故に、どれほど力を注いでも

その力がウルトラマンの熱を呼び覚ますことはない

 

 その、はずだった。

 

「……やったか……!」

 

「……ディ」

 

 カラータイマーに注ぎ込まれたのは太陽光、地球に於いてウルトラマンの活動エネルギーを支える光源の力

そして、いかに力にならないといえど

その心まで無駄にはしない。

 

「ジュァッ!!」

 

 凍りついた表面を破砕し、ザインが再び立ち上がる

そして砕け散った氷の破片から鎧を生成し、グローリアスのそれと同じように身に纏った。

 

 氷像と化し、完全に凍結して永久停止した2体目のガンダーを一瞥し、最後に残るアメリカの個体を倒すため北を向く

その時

白いヒビ割れが音もなく空間に走り、空がガラスのように砕け散って穴が開く。

 

「デュッ!?」

 

 囁くような声が聞こえた。

咄嗟に引いて構えをとったザインの視線の先には、砕けた次元隔壁とそこから伸びる超空間の道

そしてその先に見えるBURKの戦闘機達だ。

 

「早く行きなさい、遠すぎて長くは持たないわ」

 

 

 白いドレスを着た銀髪の美女が巨大な次元回廊を展開し、次なる戦場へとウルトラマンを導いた。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)
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