ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード20 年始

「新年明けましておめでとうございます」

 

「新年、明けましておめでとうございます」

 

(新年の挨拶というやつか、季節行事でも有名なものだ、光の国でも地球滞在歴のある方々は大半やっているが、私が自分でやるのは初めてだ

まぁとにかく、明けましておめでとうございますっ!)

(声大きすぎ)

 

 三者三様の年明けを迎え、お互いに頭を下げる

特に、いつのまにかいつものコートではなく紅白の振袖に着替えていた翠風は簪と口紅までばっちり決めている気合いの入りようであった。

 

「で、化粧は良いにしてもどうやってそれ持ち込んだんだ?」

「先に褒めてくれないの?

ほら、似合ってる可愛いよえっちだよ抱かせろとかさ」

「いや可愛いのは事実だけど最後のはちょっと言えないかな……」

 

 雄介が頬を掻きながら視線を逸らすと、その先の方へと割り込んでくる翠風

そのまましばらく謎の追い駆け合戦が続き、流石に疲れた雄介が動きを止める。

 

「ん」

 

 そのまま雄介に組み付いてきた翠風が唇を頬につけて囁いた。

 

「ゆーくんは私のものだよ、我愛你(ウォアイニー)

「……お、おぉ」

 

「ほらほら、年越えたしもう寝ちゃお?私もお風呂入ってくるね!」

「ん、行ってらっしゃい」

 

 精神的衝撃から疲労がぶり返してきたのか、急速に霞む視界を無理に持ち直して姿勢を戻す雄介に、さらなる一撃が加えられる。

 

「覗いても良いんだよ?」

「誰がだ全く……俺の自制心をバカにするな」

 

 しかし、光輝く鋼の意志の前には悪魔の囁きさえ通用しないのだった。

 

「ざーんねんっ!」

 


 

「……グルルルルゥ……」

 

 地球圏、月天周防衛線

季節感どころか地球の環境そのものとすら隔絶された宇宙ステーションに設営された防衛基地

宇宙防衛拠点スペーシーベース。

その新年はやや物騒な幕開けとなった。

 

「これは……マザーケルビムッ!

隔絶した強豪個体だ、心して掛かれッ!」

 

BURKスペーシー ステーション2

現在アキレスの盾によるバリアは度重なる強引な突破や謎の干渉による損傷が相次ぎ、防御力が低下している

そのためBURKスペーシーの防衛線は従来より外側に拡大し宇宙機雷や対宇宙船兵装なども配備されているのだ

 

「来るぞっ!回避っ!」

 

 BURKスペーシーの有する宙間戦闘機

BURKワイバーンが12機、4機編隊で飛んでいく。

 

「アステロイドバスター級兵装の使用を許可、ウェーブカノン一斉射ッ!」

《了解ッ!》

 

 ワイバーンの中でも一際大きな追加武装を背負った機体、隊長専用機ドレッドノートはその追加武装コンテナに載ったビーム砲を連射し

それなら追随する僚機も機首に搭載されたビーム砲をぶっ放す。

 

普段は悩みどころが多く、基本的には副武装として配されるが、宇宙でのみ例外的に扱いの良くなる武装がある

それがビーム兵器

宇宙では地上環境と違い空気がない・対流がない・遮蔽物がない

即ち弾速が制限されず、弾道がブレず、減衰が少ない

そのため実体武装よりも圧倒的にビームの使い勝手が良くなり、結果的に宇宙でのみ例外的に近接防御兵装以上のビーム砲が全機標準装備されているのだった。

 

 一斉に降り注ぐビーム砲を全身に受けてなおマザーケルビムは進行をやめない

どころかそれでは自分を止める火力にはならないとばかりに勢いついて、周囲に浮いていた隕石片を操り防衛部隊へと射出して来た!

 

「ギュルウォォォッ!」

 

 しかしBURKスペーシーとは宇宙から攻めてくる怪獣宇宙人と真っ先に対峙する第一の防壁であり、故に最も多くの戦闘経験を積んだ海千山千の猛者達である、ただの隕石如きでは撃墜されるだけに終わるのがオチだ

だが射出された隕石は内部にケルビムの幼体を内包した擬似卵殻であり、それらが意志を持って特攻してくるという仕掛けを持っていた。

 

 どう運用しても高密度な放射線を振り撒くため、条約で地球環境での使用が禁止されているハドウジェネレーターから出力されるハドウエネルギーで稼働する準永久機関であるワイバーンであっても、メテオールであるイナーシャルウィングを用いたファントムアビエイションのような無茶な機動を取ることは基本的にできない

それこそ内臓を犠牲にするような負荷が掛かるからだ

だが、それでも宇宙の戦士達は躱して見せた

意志を持った鉄砲玉達の特攻を、ものの見事に躱して見せたのだ。

 

 

「グルルルルゥッ!」

 

 ケルビムの怒りの声が上がる、が、そんなことは防衛隊にとってなんのノイズにもならない。

 

「むぅぅんっ!反撃開始!ワイバーン隊、全武装を解禁するッ!」

 

 叫ぶが早いか、隊長は最低限の防御力を担保するための電磁防壁を解除して、その余剰出力を推力へと回すリミットアウトモードを発動した。

 

「リミットアウト!クアッドウェーブカノンッ!」

 

 通常機体下部に1門しか搭載されていないアステロイドバスター級兵装、ウェーブカノン

それを追加装備に3門という無茶な積み方をしているため、単純に考えれば彼の機体は他の4倍の火力を発揮するのだ

だが、話はそう単純ではない

特別にチューンアップされた隊長専用機とはいえ、他機と大元の出力は同じ

ワイバーンの出力規格でまともに撃つことができるのは2門のみである、それゆえに通常時は冷却時間の短縮のためにしかつかえず、4門同時発射ではエネルギー不足を起こして大した火力にはならないのだ。

 

 だからこそ、リミットアウト

姿勢制御も誘導ビーコンもレーダーセンサーもロックオンも機内電灯も他のエネルギー全てを廃して、ただ一撃に注ぎ込む

それでようやく放つことができる規格外武装、四連装収束波動砲、クアッドウェーブカノン。

 

 一つのジェネレーターから出力され、完全に重なる波動が共振し、増幅しあい、相乗して莫大な火力を発揮する。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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