ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード20 年始 2

「隊長ッ!……」

 

 全くあの人はすぐにリミッターを外す癖がある、誘導装備も防御装備もなしの宇宙戦など自分には恐ろしくてできないと言うのに。

 

「下手すれば帰還すら出来なくなってしまうんですよ」

 

 リミットアウトのために通信回線すら切られているので、この声はただの独り言

単独行動を決め込んだ隊長に代わって

副隊長の私が指揮を執らねばならなくなってしまったので、すぐに通信回線を切り替える。

 

「隊長はいつも通りに突撃したので私が指揮を執ります、異論あるか?」

 

《ありません!》

「よろしい、では総員一旦後退、ステーション前に防衛線を構築します、アームズフォート武装コンテナ、ライトンR30マイン及びペダニウムランチャー準備よろしいか!」

 

〈もちろんです!〉

 

 皆作戦はわかっている、最高火力である隊長の突撃癖まで作戦に入れなければならないのは辛いところではあるけれど、それを補うのが全員による一斉射

拡散射撃によって面制圧を仕掛けるワイバーン隊には流石に押されたのか、ケルビムが僅かに後退する

その隙に一斉に部隊を下がらせ、私も隊列の後尾に着いて後退する、ちょうどその時に宙域に漂っていたコンテナが解放され防衛兵器を展開する。

 

 無線連絡はバッチリだったとはいえ、なんの指示もなくテールブースターを掠るようなタイミングで展開された危険物(アステロイドバスター)に背筋を寒からしめながら駆け抜けて反転し、そのままウェーブカノンの準備に入る

私の使うワイバーンは固有名をシュートザムーン、機動性を犠牲に最高速度と武装射程に極振りしたカスタム機であり、搭載されたウェーブカノンは極細の超収束ビームを放つ狙撃型

理論上では月軌道から大気圏を抜けて地球にいるネズミを狙撃できるほどの射程と精度がある

 

〈ライトンR-30マイン、展開完了!〉

「了解、起爆タイミングはこちらで指示します、総員ビームバルカンで牽制しつつ陣形を整えなさい、十字鏃陣です、アステロイドバスターの真価、見せて差し上げましょう!」

 

 アステロイドバスター級の威力基準は宇宙における小惑星の破壊、つまり戦闘機に搭載されるデブリ排除用のブラスターが元来のそれ

始まりのアステロイドバスターの流れを汲むビーム砲、ウェーブカノンがチャージされていく。

 


 

「向こうは準備よしか!」

 

 リミットアウト状態から復帰し、識別ビーコンを発信してウェーブカノン発射を待たせつつ幼体ケルビムの背後に周って卵殻を壊す

こんな作業を一頻り繰り返してから戦域を離脱して隊列へと戻る、その寸前

ついにブチ切れたマザーケルビムが体当たりを仕掛け、R-30マインが連鎖起爆して凄まじい閃光を撒き散らした。

 

「うぉおぉっ?!」

〈遮光シャッターッ!〉

 

 何機かの僚機は遮光に成功したのか、無事な様子の通信が聞こえるが、衝撃波で隊列が乱れてしまった

強烈な閃光で視界が潰された者達は誤射を恐れて一斉射撃には加われなくなる

だが、彼女は別だ

シュートザムーン、夜逃げを意味する不名誉な渾名だが、彼女の機体は違う

本当に月を穿つことすら可能にする、超遠距離狙撃機なのだ

閃光がどうでも、衝撃波がどうでも、動かされた味方機が射線を遮っていても

必ず当てる、当ててくれる

だからこそ俺は彼女に副官を託したのだ。

 

「ワイバーン隊、可能な者は一斉射撃!」

〈〈〈〈了解!〉〉〉〉

 

 返事はたった四人分、射撃態勢を整えた状態でありながら、衝撃波と閃光から生き残ったのはそれだけだ

だが、その四人は全員特別。

 

副隊長 白山真白の2番機シュートザムーン

 

分隊長 ソラウ・ウェンディの6番機ワイズマン

 

一般隊員 劉基の4番機プロミネンス

 

一般隊員 リットリオ・ベージスの12番機トルネイダー

 

そして俺ことワイバーン隊隊長 浄川飛龍の1番機ドレッドノートを合わせた五機のワイバーンが一斉射撃を行う。

 

《リミットアウトウェーブカノン!》

 

 真白を除いた4機でリミットアウトし、それぞれのウェーブカノンを発射する

俺のは四連装、ワイズマンは湾曲、プロミネンスはヒート、トルネイダーは竜巻型

そしてシュートザムーンは超収束

リミットアウト状態の最大火力はディザスター級に迫るウェーブカノンの集中砲撃

面制圧を重視した拡散型とは違う、一点集中砲撃がマザーケルビムを貫く。

 

「グガァァァァッ!」

 

 装甲や肉体を貫通して、なお体内の中枢部分を貫くには至らなかったのか咆哮を上げるマザーケルビム

しかし、我々とてその程度のことは分かっている。

 

〈ペダニウムランチャー発射!〉

 

 その一声と共に、背後から極太ビームが放たれ、マザーケルビムの頭を消し飛ばした。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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