ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード21 兆候 1

「来た、ようやくだね……!」

 

 遙か上空、バリアの向こうに視線を向ける

私の用意した最強の使者、智天使の名を冠する怪獣ケルビム、祖なる神ほどではない、限りあるものではあるが桁外れの規模を持つその生体組織が全て子たるチルドケルビムの素材となり、死骸からすら無数の子を発生させる

たとえ地球襲来そのものが阻止されても、砕けた無数の破片が流星群として降り注けば地球中に拡散したケルビム細胞が同時多発的に無数のケルビムを誕生させるだろう。

 

 死ぬ事すらも計算に入れた一手

流石にマザーケルビムほどの巨体を肉片ひとつと残さずに完全消滅させるような兵器を使うことはないだろうと踏み、そして確かにその通りになったのだ。

 

「さぁ、おいで、かわいい子供達」

 

 天より降り注ぐ流星群に、微笑みを向けた。

 


 

「んゆ〜……」

 

 目を覚まし、星降る夜空を見上げて顔を上げる

纏った薄緑の衣は軽く柔く、いかにも頼りないものだ。

 

「……………

あぁ、そうか

…………」

 

 深い眠りから目を覚ましたのは未だ半分、力あるもののみ

本来の主人は未だ底知れぬ眠りの中にある

それを知った彼女は、ただ燃える星屑の群れを眺めていた。

 

 


 

「失礼します」

 

「たぁく、いつまで待たせるんだよ!」

「業務開始時刻には間に合ってますよ!」

「……失礼しました」

「逃げんな」

 

 挨拶を残してくるりと反転して研究棟の方に向かおうとする雄介の襟を掴んだのは竜弥だ。

 

「僕も仕事があるんですが……」

「お前の仕事場はここだろ、ほら人事」

 

 竜弥が握っていた辞令書を受け取って見ると、そこに書かれていたのは実に理不尽な謎の配置転換だった

対怪獣作戦室付き分析官とはなんなのかまるで理解できないが、とりあえず仕事場が変わった事だけは受け入れる雄介。

 

「ちょっと何言ってるのか分からないですね」

「安心しろ俺達も分からん、いつもの事だ」

 

「いつの時代も上の考えることなんて理解できないものなんですよ、そんなこと考えるより今ことを考えましょう

具体的にはほら、椅子の配置とか……椎名君、席はどこがいいですか?」

「動かす荷物が多いので、できれば扉近くが良いですね、オペ席とか空きありますか?」

 

 徹、竜弥とかわるがわる話掛けられて忙しく首を動かしながら応える雄介

席自体にこだわりはない様だ。

 

「お前コーヒー飲めるか?」

「あんまり濃くなければブラックでいけますね、濃いのはミルク使いますけど」

「俺と同じだな、ここブラック人気ないんだよ、飲もうぜ、ほら淹れてやるよ」

 

「それより!先に荷物動かしませんか?」

「……そうだな」「ですね、手伝いますよ」

 

 珍しく雄介の側から話を打ち切り、もはや古巣同然となった研究棟のデスクを引き払うための準備を始めた。

 


 

「……流石に無茶が過ぎたのでは?」

「なんの件だ?」

「人事異動です、新年早々に配置転換などほぼないことです、それに存在しない役職をでっち上げてまで彼を作戦室に引っ張り込む必要などないのではないですか?」

 

 弘原海の視線は鋭い

しかし朽木支部長の口調もまた堅かった。

 

「人事異動も役職設置も俺の職務の権限内だ、なんの問題もない

それにな、折角ウルトラマンを味方につけたというのに遠巻きに眺めさせるだけでは味気ないだろう?」

「それで!嵐真がどれだけ怪我をしたと!」

 

 弘原海はデスクに詰め寄るが、朽木支部長は表情を変えない。

 

「……では彼の犠牲は、果たしてどれだけの命を救ったと思う?我々(BURK)も国連も軍隊も、もはや存在しない暗雲に満たされた醜悪な世界が出来上がる寸前にまで行ったのだ、

彼と彼のウルトラマン無くしてこの世界は無いよ

だからこそ、より早期に新たなウルトラマンを取り込む姿勢を取った、その判断を私は下した、これを間違いだとは言わせない」

 

「……しかし!彼らはまだ若い、戦闘組織であるBURKは成長の途上にある彼らを歪めてしまう、戦いの中でしか生きられない兵士なぞ、存在するべきではない!」

 

 なおも食い下がる弘原海に対し、あくまで冷ややかな眼差しを向ける朽木支部長。

 

「より大いなる善のために、犠牲を見逃す事は必要だ、我々はそうやって星を守ってきた

犠牲無くして成功はない

一見無いように見える時も、水面下には犠牲者が転がっているものだ

科学特捜隊も、ウルトラ警備隊も、ZATもTACも、GUYSも常に犠牲を支払ってきた

我々BURKもまた、それに準じるというだけだ」

 

「……くっ……」

「組織内でのいがみあいは悲劇しか呼ばない、我々が睨み合っていても何も解決しないのだ、話を戻そう」

 

 デスクの上に積まれた書類の束を取り上げて、数枚の写真と英語の報告書を見せる朽木支部長。

 

「昨日襲来した宇宙凶険怪獣(brutal space monster)ケルビム、その超大型個体だが、どうやら多数の隕石を従えていたそうだ

聞く話によると、その中には幼体と思しき個体が紛れ込んでいる、と」

 

「……」

「現在地球周回軌道に乗った隕石は極めて広範囲に流星群として降り注いでいる

この事態に対し、国連は機密クラスⅣとして秘した上で大規模怪獣災害警報を発令しBURK全基地に対応を求めている

我々日本支部としてもこの対応は行わざるを得ない」

「わかりました、陸戦部隊との連携訓練を進めます」

「いや、それには及ばない」

 

 即座に現在の空戦メインである作戦室メンバーと一般的なケルビムの戦力を比較して、陸戦部隊の武装車輌や戦術の共有を必須と判断した弘原海だが、支部長はそれを制した。

 

「日本基地のエクスカリバー・アリエスは封印中だ、ディザスター級以上の兵器の制限数にカウントされない」

「しかしそれは」

「まぁ否定されたんだが地球の危機だ、なんとか言いくるめてもぎ取って来た

これで1枠、ディザスター級を増やせる

そこでだ……何がいい?

実際に使うのはお前たち実戦部隊、使えない兵器などあったところで無用の長物に過ぎんからな」

 

「……では、あれを」

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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