ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピロード3 蒼き空ある星へ 2

「シルバーシャーク 命中確認っ!」

 

「目標は!?」

 

 誰もフラグを立てるような言動はせず、しっかりと爆発後を観察する

そして、爆発で起きた煙が晴れるとそこには

頭部を消し飛ばされて倒れ込んだディノゾールが沈黙していた。

 

「目標沈黙!やりましたあっ!」

「よっし!」

 

 ウルトラマンに頼らない単独での怪獣撃破、100年前から悲願とされ、度々に実現されてきたそれ

代々の対怪獣組織のレジェンド達

今代のBURKもその列に並んだ瞬間である。

 

「ついにここまできたか……」

 

 大きく息を吐く弘原海

彼の主導するチームが怪獣を討つ事は初めてではないが、今のメンバーではこれが初めて

ようやくこれで、地球防衛隊を名乗るにふさわしい水準と言えるようになった、と言ったところか。

 

「目標、エネルギー反応低下……いやこれはっ!エネルギー値マイナス!明らかに異常ですっ!」

 

「シルバーシャーク!もう一発だ!」

「了解っ!え〜……リフレクターセット!」

 

 すぐにスクリーンに向き直った霧島が複雑な操作を数秒で終え、シルバーシャーク砲の照準を委譲する、しかし。

 

《照準再誘導をおわァァァァッ!》

 

 融合ハイドロプルパルサー

今まで単に迎撃に使われていたそれが、初めて本来の使用法で使われ

照準レーザーを出していたクルセイダーに直撃して爆発した。

 

「タケハルぅぅっ!」

《もう無理だ諦めろっ!》

 

現場では横にいた機体が旋回してベイルアウトを確認しようとするも、爆炎の影響で視界は悪く、それを確認するまでもなく墜落していく、そして機体には脱出の際に爆破されるハッチが残っていた

 

《クソっやられた!シルバーシャークの照準をこっちに回せ!》

《陽動を仕掛ける!》

 

 残った2機のクルセイダーがそれぞれ反対方向に回るが、

極性を反転して復活した双頭のディノゾールには死角はない。

 

宇宙斬鉄怪獣ディノゾール リバース

反転再生

 


 

「キシャァアアアアッ!」

 

「デヤァァァッ!」

 

 エンジンごと翼を破壊され揚力を失って墜落していくクルセイダーを、光と共に現れた巨人が受け止めた。

 

「ウルトラマン……!」

 

「ゼァッ!」

 

 明らかになんらかの力が働いている軌道で低速垂直落下したクルセイダーはそのまま地面に着地し

それを確認したウルトラマンはディノゾールの方へ向き直った。

 

「キシャァアアアア!」「キシャァアッ」

 

 双頭の咆哮と共に断層スクープテイザーが2本連続で振るわれ、同じ場所を薙ぎ払う

鋭利極まるブレードが、まるで一定距離に近づけないための防御柵であるかのように空気を切り裂き続ける。

 

「………………」

 

 2本のスクープテイザーが空間を薙ぎ払って作り出す刃の結界

しかし、元来が分子を掻き集めるための捕食器官であるスクープテイザーを重力下の大気圏で十全に扱う事はそもそも無理がある

徐々にスピードは落ちていっているが

ディノゾールには諦める様子はない。

 

「…………」

 

 ただ、立っているだけ

それだけでディノゾールは疲弊していく。

 

 


 

(雄介、無理に突っ込むのは止そう

戦うなら相手が疲れてからの方が良い

どのみちこの速度で振られている刃の中に突っ込むのは自殺行為だ)

 

「……そうだな……」

 

 振り回されるブレードの速度は徐々に落ちて行くが、止まる様子はない

三分の時間が過ぎるのが先か、スクープテイザーが止まるのが先か

消耗戦が幕を開ける。

 

 振り回されるブレードによって作り出される結界は徐々に緩んでいく

しかし迂闊に突入すれば切り刻まれてしまうのはこちらだ、雄介とザインは逸る精神を抑えて待ち続け、そしてその時間を利用してディノゾールを観察する。

 

「ザイン、あのディノゾールは……もう、死んでるよ」

(何!?)

 

 雄介は気付いていた、胴体の下にある筈の推進器官の発光が無くなっていることに

宇宙空間で推力を失えば待っているのは永久漂流だ、重力下では長く生きられない筈の宇宙鳥が推力を失うなど死んだのと同義である

それを指摘されたことで、ザインも気づいた。

 

(そうか!ディノゾールの特性は本来宇宙空間で生きるためのもの、それらが機能していないというなら、あの状態は本来ではあり得ないイレギュラーな進化形態ということか!)

 

 死してなお、生き続ける体細胞達が起こした奇跡、脳によって制御されていない暴走によってカルス化し、ES細胞のように全能性を発現した体細胞がかつての頭脳部に相当する部位を代用したイレギュラーな形態

反転復活と引き換えに極めて繊細な反重力推進器官が機能停止している、生物としての致命的な欠陥を抱えた生命として行き詰まった形態なのだ。

 

(ディファレーター光線によって進化した私達が言っても烏滸がましいかもしれないが……こんな進化は誤りだ!間違っている!)

 

「そうだな……もう、終わらせてやろう」

 

 宇宙に出ることも出来ず、地上で生き続けることも出来ない宇宙鳥(ディノゾール)

籠の鳥と言うにはあまりにも惨いそれは、もはや見るに堪えないものだった。

 

「「完全に、細胞一つに至るまで!」」

 

 


 

 

「デェアァァッ!」

 

ザイナスフィア

 

 両手に光弾を生成したザインはザインスラッガーを放ち、一本のスクープテイザーを食い止め、左腕を振り払って打ち当てることでもう一本も無効化し

右ストレートを顔面に叩き込んで、逆上がりのように蹴り込んで反転

上下逆になったまま更に半回横に回って左裏拳をもう一つの頭に直撃させる。

 

 

「「キシャァアアアアッ!」」

 

 

 怒りの咆哮を上げる双頭、しかしもう遅い

首を伝った薄赤と青白のスペシウムエネルギーが体内で交錯し、混合し

融合して原子崩壊

大爆発を起こし、欠片すら残さずに爆散した。

 

(おやすみ、名も知らぬ碧き鳥よ)

 

 

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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