ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

73 / 109
エピソード23 西風来たれり 1

「セブンガーは修理費770万円、自動開閉装置も交換で10万円、いやーこれは……重いっすよ」

「隊長……」

 

「あの時は必要だった、それにノーマルの作業アームでパンチなんぞしたらそれこそ大故障になるだろう

人命を優先した上で最善の選択だ」

 

 机の上に載った見積もりや請求書や予算の表は想定外の大型ロボット兵器であるセブンガー運用における最大の問題を弘原海に突きつけていた

そう、コストである。

 

「……にしてもなぁ……予算が……」

「仕方がない話だと思うんですけど」

 

 雄介もそれについては理解があるが、さすがに金銭云々というのは如何ともし難いものだ。

 

「まぁディザスター級は扱いどころか置いとくだけで厄介ごとを引き込むような兵器ですからねぇ、年度予算案にもなかった訳ですし、それぁ予算も圧迫しますよ」

「だから今補正案を組んでいるんだろうが!」

 

 周囲の視線に圧され、弘原海の肩身は狭くなったものの、流石は隊長と言った所か、事務方を通して防衛省と財務省の方にはもう話は通してあると言い切るのだった。

 


 

「さぁて、今日もお仕事行きますか」

 

 午前7:00、出勤時刻

とある電力会社の発電所に勤める青年はいつも通りにリュックを背負い

車に積もった雪を払ってエンジンを掛ける。

 

「…………」

 

 時間が時間なので都会の大通りとはいえ車通りは多く、すぐ先さえも見通し難い

また雪が降るほどに寒いため、フロントガラスの曇りもあって一層視界は悪かった。

 

「ん?」

 

 一瞬、曇る視界の中に何かのシルエットを捉えたような気はした

しかしそんなはずはない

フロントガラスの正面視界に置いて上半分に空以外のものが写るならそれは道路標識か信号以外にありえないからだ

僅かに疑問を浮かべながらも彼は運転に再び集中する

仕事のため、人命のため、そして何より自分のために。

 


 

「そ、それでは講義を始めます

材料工学では、一般に材料の性質と加工品の性能の相関性を知り、これを操る事を学びます

例えば鋼鉄の炭素含有量を上下させる事で硬度を上げたり靭性を高めたりすることが有名ですね

しかし、導電性については疎かになることが多いです

まぁこれは、半導体や導電線など専門的な部分にしか考える必要がないということ、単純に導電性の高い物質として純銀という最適解が既に存在しているということが大きいでしょう

ですが、我々はこれを超える事を考えなければならない、その理由は分かりますか?叶君」

 

「はい、銀は貴金属であり、埋蔵量が限られた物質です、そのためリサイクルなどによって最大限に利用したとしてもその最大量は常に一定か微減であり、いずれは利用不可能になる可能性が高いからです」

 

「その通りです」

 

 教授はいつも通りに捲し立てるが、叶誠司はそれに応える

そう、物質は混合することは容易くとも分離することは難しい、合金などの加工品から純物質を取り出すことはとても難しいため、銀として使える物質量は常に減少し続けているのだ

銀やレアアースに限らず、それらは常について回る問題である

たとえば石油、例えば水、例えば貴石

ありとあらゆるものには限りがあり、いずれは尽きるものなのだ。

 

「その限界を越えるためのアプローチの一例として、金属を使わない超伝導セラミック材を用いた超高効率導電線を実用化した発電所があります、資料を配りますので目を通してください」

 

 工業化学・電気工学の分野の話になるが、超伝導状態とは全ての物質がもつ『電気抵抗』がゼロかあるいはそれに極めて近い数値になった状態を指す

従来ではそれは極低温環境に特定の金属類といった特殊な条件を揃えなければ達成できなかったが、最近の研究によって常温での超伝導を可能としたのだという。

 

「はい、行き渡りましたね

流石に今回は直接行けないのでパンフレットを渡しましたが、非金属材料(セラミック)によって超伝導状態を作る技術は世界的にもここにだけしかありません」

 

 教授の話は続く。

 

 


 

「ふーん……まぁ、見どころもあるのかもね」

 

 当然のように不法侵入した女は無数の機械類の絡み合う発電所内に立っていた。

 

「なかなか面白いことやっているみたいだし、でもサービスは良くない」

 

「君!なぜそんな所にいる!?」

「別に、私の勝手でしょう」

 

 機械の上部、メンテナンスハッチに続く階段の上から地面を見下ろし

彼女を見上げる作業員を嘲笑う。

 

「なかなかだけど、あまり質は高くない

まぁいいか、ウルトラウムシンクロナイズ」

 

 上から飛び降りた女に作業員が驚くよりも早く、その精神を強制解放された作業員から紫の波紋が放たれる。

 

強欲(グリード)の怪獣、良いのが出るわ」

 

 憎悪の炎、嫉妬の植物、悲哀の水、空虚の無、絶望の闇、さまざまな形質を持つ感情に相応する怪獣達

その中でも上位に位置する強欲の属性は捕食、絶え間ない欲に突き動かされる衝動性だ。

 

「来た」

 

 現実を捻じ曲げ、幻想を上書きする現実改変が行われ、そこに召喚されたのはウラン怪獣ガボラ

放射性物質を主食とし、無限にそれを捕食蓄積しようとする暴食の怪獣である。

 

「ガボラね、微妙だけど……殺戮能力なら高い方かな」

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。