ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード23 西風来たれり 2

「あぁそうだ、組織再編に伴って配属がいくらか変わる事になった、今日からここはBURK日本支部東京基地怪獣対策室だ」

「目が滑る名前ですね……」

「いつものことだ、お偉いさんはどんだけ名前が長いかで見てるんだよ」

 

 わざとゆっくり発音した弘原海の紹介すら聞き遅れかねない程に長ったらしい名前であるが、前半は省略しても問題ない

実質的には『対策室』の名称が使われるため、前とさほど変わりないのだ。

 

「それと、以前のアリゲラ戦を経て分かっただろうが、クルセイダーズのみに頼っていては戦力不足、今後は陸戦隊との連携を強めていく予定だ

人員交換や混合編成での演習・出撃が増えることになると思う、心するように」

《了解》

 

 全員の返事を聞き届けた弘原海の満足気な表情と共に、今後の編成予定などが提示される。

 

「それで陸戦部隊の皆と指揮系統を一本化する事になったから、今後は色々調整しつつ最適化を目指していく

差し当たっては人員の融通から始めるつもりなので陸戦科出の徹と雄介は特に出向くことも多くなるだろう」

「はい」「わかりました」

 

 二人が頷くと同時に、アラームが鳴り響き、徹は自分のコンソールへと飛びつき、霧島が叫んだ。

 

「エネルギー反応あり、これは……?逆性反応です!周囲の空間エネルギー値大きく減少、止まりません!」

 

「なんだと?」

「生体エネルギー反応増大、光学レーダーに反応、放射線を検知しました!怪獣の種別は爬虫類型(レプタイル)

出現位置はT-70……山中にある発電所です!」

 

「ドキュメントSSSP、レジストコード『ガボラ』です!」

「ウランを食っちまうやつか!」

 

徹が全域監視ドローンの画像に映ったガボラの名を叫び、その名を聞いた竜弥が即座に反応する

核分裂炉による原子力発電所があった市の出身である彼はその種の危険な怪獣のことは頭に残していたのだ。

 

「よく知ってましたねその怪獣です、ご存知の通りこいつは常に体内に放射性物質を取り込み、濃縮している生きた核爆弾です、なので衝撃性・炎熱性武装で爆散させたら危険です、拘束ないし例の重力偏向板での宇宙投棄などの特殊な対処をしなくてはなりません」

 

「まずは人員の救助を優先する、現場に向かうぞ、クルセイダーズ出撃、丈治と竜弥はいつも通り、ヒラと徹は今回予備戦力として待機、雄介は戦車隊に合わせて後詰め、俺は駒門と出る、今作戦は初の陸戦隊との共同戦となる、誤射・射線遮蔽に注意しろ!」

《了解!》

 

 前アリゲラ戦に於いては予備戦力に空戦部隊がなかった、陸空を別に扱うのならむしろ他兵科は邪魔になることもあるため構わないのだが、戦力・指揮系統の一体化を進めるべき時にこれは非常に危険だ

単純に空戦系の怪獣に著しく対応し難く、戦車隊や砲兵隊に練度による相性の超克を求めることになるだけではなく、一歩間違えば『空戦部隊側から歩み寄る気はない』というメッセージにも見えかねない。

 

(雄介、クルセイダーの性能は高いが、突出した火力は却って誘爆リスクを呼び込む、気をつけるんだ)

(わかった!)

 

 雄介は今回後詰めであるため、陸上車輌と発進タイミングを合わせて出撃し、現場後方にて事態の全容を見渡すポジションとなる

直接ガボラと接触する確率は高いとは言えないが、だからといって油断が許されるような敵ではない。

 

「BURKジャパン・クルセイダー 椎名雄介、出撃ッ!」

 

 宣言と共に音声認識でメインシステムが起動し、エンジンの轟音と共に戦闘モードに移行したクルセイダーが飛び立つ

それと同時に、ビジライズ処理されたモニタの眼下ではシルバーアローの三輌

低速飛行とはいえ地上走行で飛行機についてくる速度を発揮するシルバーアローのトルクの暴力は、しかし徐々に勢いを減じていき、最終的に時速120キロ程度に収まる

いかに地下シークレットハイウェイでもその速度で爆走できるのは流石の妙だが、クルセイダーとは徐々に距離が開き始めた。

 

(雄介、旋回を入れて間隔を詰めるべきだ)

(いや、ここでチンタラする訳にはいかない)

 

 そもそも高機動を活かして先行し、露払いを務めるのも戦闘機の仕事

地上車輌との連携も考慮する必要はあるが、行軍速度の差自体はあって当然のものである。

 

〈こちらクルセイダー1、現着した!目標を発見、これより交戦する!〉

〈クルセイダー2、援護に入ります!〉

 

 ガボラを施設から引き離すため、戦闘に突入する先鋒達

奥に陣を敷いた戦車隊と周辺の避難誘導を担う歩兵部隊

場所が場所なだけに人は少ないが、発電所は重要なライフラインであるため、出来るだけ傷つけずに怪獣を狙い撃ちする必要がある

幸いにも原子力を扱う発電所としてすらも異様なほど堅牢な防壁や密閉構造を持っていたがために繰り返されるガボラの攻撃にも大した被害を受けている様子はないが、放射熱線はそれだけで周囲の放射線量を跳ね上げる環境破壊兵器にも等しい攻撃だ。

 

〈森林火災には注意してください!〉

 

 通信から霧島の声が聞こえるが、数千度の高熱を宿す放射熱線などもはや火事云々の話ではない

直撃すればクルセイダーといえども焼かれる程度のことで済ませられないだろう。

 

「クルセイダー3、現着しました

これより陸戦隊と合流します!」

〈了解、よーく見とけよ雄介(しんじん)!〉

 

 火炎放射を見切って回避し、急接近して機関砲を撃ち込むクルセイダー2機

練達の武技が可能とする曲芸飛行でヒットアンドアウェイを繰り返し、少しずつダメージを与えながらガボラを建屋から引き離していく。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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