ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード28 モンスターレックス 1

「始めようか」

 

 闇の中から抜け出した女、翠風が物影を出て道へ、歩く先にあるのは大型商業施設(ショッピングモール)

 

「ウルトラウム・シンクロナイズ」

 

 彼女の足の進むたびに、街の日陰に満ちる邪念が湧き上がり、形成し、具現化して顕現する

湧き上がった茫洋たるものたちは憤怒、嫉妬、憎悪、悲哀とさまざまな姿を現す。

 

 ベムスター・レッドキング・バラバ・シーゴラス・ハンザギラン・キングクラブ、無形の怨念が集合して怪獣たちを遥か彼方から呼び寄せたのだ。

 

合体(ユニオン)

 

 

 現れた光が集い、結束して一つになり、そして顕現した。

 

「タイラント」

 

 


 

 

「ギュェァァァ!」

 

 暴君怪獣タイラント、上空より出現


 

「こっちも本腰入れてやんないといけないんだ、そろそろ遠慮は抜きに行くよ」

 

 人間自身に直接依存しない闇である感情の残渣、その一つ一つは限りなく弱いが、世界中につながる気脈の結節点に置かれたモールという欲望の器を利用する事で無数に溜め込み、その蓄積した力で怪獣たちを呼び寄せたのだ

アキレスの楯を傷つけるためには人の精神を直接解放しなければならないが、それを無視すれば裏技も叶う

本意ではないが、これも必要な事だ。

 

「無数の怨念を束ねて呼び寄せる都合上、こんなのしか呼べないけれど……行け、暴虐王(タイラント)!」

 

 素材となる怪獣一つ一つの力の規模では比較にもならないほどに強大な大怪獣、始まりの合成怪獣でもある暴君タイラントを呼び起こした翠風はそれを無差別に解き放つ

他とは異なり怨念の具象でしかないタイラントは方向性を持たず、無軌道に暴れ回るしか出来ないのだ。

 


 

「S-1地区に巨大なエネルギー反応を確認!まもなく映像出ますっ!」

 

 霧島の叫びと共に映像が正面モニターへ

そこに映されたのはさまざまな怪獣たちの部位をつなぎ合わせたTYPE Khimaira

約90年前の初出から伝説的な能力をみせつけ、その後もたびたびに出現する強豪怪獣の姿。

 

「……こいつぁ……」

「タイラントだと!」

 

 故に、防衛隊の中でも極めて高い知名度を持ち、これに対処するための戦法も練られている

ベムスターの腹部『吸引アトラクタースパウト』に対処するためには80考案の伝統戦法であるオペレーション・ヤマトが

バラバの両腕に対抗するためには超硬繊維ワイヤーを用いた拘束戦法が、目立った各部位に対応する装備や戦術が用意されているのだ。

 

「クルセイダーズは急行して足止めに掛かれ、できる限り奴を市街地から引き離すんだ!

怪獣警報発令、周囲20キロメートルから全住民を避難させろ!」

「政府に非常事態宣言を要請しました!」

 

〈室長こちらも怪獣を確認した、奴を叩くには現状の装備では戦力不足だ、HEET弾と専用砲身に換装を行うため、十八式の出撃には時間が掛かる〉

「了解した……聞こえたな、各員間を持たせて見せろ!総員出撃!余力を残せる相手ではない、心して掛かれ!」

 

《了解!》

 

雄介はストライダーに1人乗りし、

駒門と弘原海、丈治と竜弥、比良泉と徹の2人乗りで出撃する

もちろん1人でも動かすことはできるが、そもそも複座式であるクルセイダーは単独より複数で乗る方が戦闘力は上がるのだ

レスポンスの問題はあれど頭数を揃えるより戦力の質を重視しなければならない現状ではバラけることはできない。

 

「クルセイダーズ出撃!」

 

 弘原海の号令の下、一斉に全機出撃して編隊を組む、陣形は楔形陣だ。

 


 

「さて、こちらも対応するぞ、緊急事態宣言は出したな?」

「はい」

 

「では支部長権限により第Ⅲ及び第Ⅳ分類武装使用を解禁する、霧島くんにシルバーシャークを使わせたまえ」

 

 朽木支部長も秘書の川中に指示を飛ばし、アステロイドバスター及びディザスター級を解禁する

流石に場所が遠く、運用上の問題でセブンガーは戦力たり得ないが、銀嶺庭園を面展開してクルセイダーの到着まで時間を稼ぐのだ。

 

「メカニカに銀嶺庭園を起動させろ、部位1つだけでも奪うぞ」

「わかりました……作戦室、聞こえますか、こちらは支部長室より川中です、今第Ⅲ及び第Ⅳ分類武装が解禁されました、シルバーシャークで狙撃を行ってください」

 

〈わかりました、シルバーシャーク及びサテライトリフレクター起動します〉

 

 電話越しの霧島の声と共に窓の下から迫り上がってくるシルバーシャークが回転し、その砲口を晒した。

 

「……こちら支部長室より川中です、整備科(メカニカ)聞こえますか」

 

 やや鳴らした後で内線が繋がり、息を切らした若い女性の声が返ってくる。

 

〈はい!こちら整備科より葛木です!〉

 

 応えたのは葛木紗奈、新人整備士だ

おそらくたまたま近くにいたのだろう、急いで駆け寄って電話に出たような雰囲気だ。

 

「科長に伝えてください、作戦室と連携して銀嶺庭園によるタイラントの足止めを行います

直ちにエネルギー充填を開始してください」

 

〈了解しました、座標はどうしますか〉

「作戦室のレーダー盲従でお願いします〉

〈はい!伝えてきます!〉

 

 最後に一言を残して電話は切れる。

 

「……タイラントなら一応他支部にも警戒を呼びかけるべきでしょうか」

「いや、今は他支部もケルビム幼体の対策に忙しい、やめておけ」

「わかりました」

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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