ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード28 モンスターレックス 3

「きゃぁぁぁっ!」

「ぬぅぉぉっ!」

 

 空間ごと吸い上げるような吸引、その勢いは遥か昔のジェットビートルならば最高速でも逃れられないほどだ

クルセイダーの速度はジェットビートルやマックアローよりはよほど速いとはいえ、アトラクタースパウトの吸引速度に対抗するには機体の剛性が足りないのである

ぐちゃり、ぐちゃりと音を立てるように開かれた五角形の口が内部の肉質を見せびらかしながらクルセイダーを喰らわんと迫る、否、吸い上げる。

 

「キュゥウェァァァア!」

 

「隊長!」(雄介!)

 

 ザインの呼びかけと共にマイクを切った雄介はザイナスキーを握りしめ、その光を解き放つ。

 

「ザイン・イグニッション!」

 

 叫びと共に輝くシルエットが人のそれを外れ、大いなる光の戦士へと変わる

地響きを鳴らしながら着地したザインはひとまずタイラントの横面から打撃を加えて腹腔を閉じさせようとする。

 

「デェヤアッ!」

 

 拳の一撃は確かにクリーンヒットした、しかし、怨念のもたらす凄まじいフィジカルによってタイラントはダメージを無視して吸引を続行している

アトラクタースパウトの空間自体を自己を中央に収束するという特殊な構造からしてクルセイダーの自力脱出は望めないため、なんとか救出するかあるいはタイラントの吸引そのものを止めるかなのだが、後者は荷が重いようだ。

 

「クライム教官のようにパワーがあれば……!」

 

 技の重みで言えばカタログスペックに大差はない、無いはずなのだが、やはり経験によるものか、そこには確かに格の差が存在している

雄介と一体となったザインの拳よりも、彼の拳の方が遥かに鋭く強い

今ここにいるのが自分ではなくクライムならば、タイラントの体幹を崩せずに難儀しているなどということはなかったはずだ。

 

「だなんて、言ってられねぇよなぁ!」

(まさしくだ、気合いを入れろ!)

 

 拳を握り直して全身の力を一点に注ぐ、光が拳に収束し全力の右拳で敵の胴を打ち貫く

そのイメージを明確に作り出した2人の心が現実を塗り替えて、理想のあるべき姿へと変える。

 

ライトニングナックル

VS

デスファイヤー

 

 雷の力に依らない光の拳が数千度の炎を貫通し、そのままタイラントの胴を押し除けて殴り飛ばす

爆発と共に燐光の残滓が煌めき、風に溶けて去っていく

完全に決まった一撃だが、タイラントとてパンチ一発で沈むなら暴君など呼ばれてはいない

殴り飛ばされてアトラクタースパウトの次元収束は中断されたが、それは割り切って直接叩く方向にシフトしたのか、不時着したクルセイダーに目もくれずに猛進してくる。

 

「キャシャァッ!」

「デェアッ!」

 

 ワイヤーを切られて欠損した鎌、それを落としたメガネのようにひょいと元の位置に掛け直して調子を確かめもせずに振り回してくる、なるほど、元が射出兵装ならば固定具となる機能も備わっているはずだ

一方ザインも頭についたスラッガーを抜き、念力とスペシウムエネルギーを込めて対応する

切断武装同士での戦いならばより強度の高い方が有利だが、スペシウムによって擬似的に刃を形成しているスラッガーはエネルギー尽きぬ限り作り直すことが可能だ。

 

「押し切るぞ!」〈おう!)

 

 剛力のタイラント相手にも鉄腕のパワーを生かして対抗するが、片腕の対処に躍起になっていれば全身凶器たる合体怪獣の能力が火を吹いてきた

キングクラブの尾がうねり、頭越しにザインに直撃する。

 

「デュァァッ!」

 

 足元の高架路線を盛大に踏み崩しながら倒れるザイン、しかし不幸中の幸いでもあるが、距離が離れたことで誤射のリスクを無視して遠慮なく攻撃できるようになった。

 

〈総員一斉射撃!〉

 

《了解!》

 

 ようやく到着した十八式のチタン芯徹甲砲弾の斉射とクルセイダーズ全機のミサイル一斉射撃

流石にこの一斉爆発は衝撃を殺せなかったのか、タイラントが姿勢を崩して大きく後退る。

 

「デェアッ!」

 

 雄介(ザイン)も気合いを込めて全力の念力で空中回転させて頭からタイラントを突き落とし、そのまま頭が地面に埋もれるほどにめり込ませて固定する。

 

(雄介、エネルギー消耗は激しい、ザイナスフィアは撃つな!)

「……くっ!」

 

 トドメにザイナスフィアを使うつもりだった雄介は一瞬手が止まるが、すぐに再び動き出し、無理やり地面から頭を抜いて復帰を試みるタイラントに拳を叩き込む

エネルギー消費の少ないスペシウムソードによる切断を試みるため、スラッガーにエネルギーを込めて。

 

「ギシャァァァァッ!」

 

 しかし、再び紫のオーラが全身から放たれ、至近距離にいたザインを吹き飛ばす。

 

「デュェアッ!」

 

 その背後から現れた光がザインを受け止めた。

 

(待たせたな、ザイン)

(ゼファー先輩!)

 

 度重なるダメージとエネルギー消耗で点滅していたカラータイマーを見たゼファーは自らのエネルギーを分け与えてその点滅状態を回復させ

2人の戦士が頷きあう。

 

「ジャッ!」「デュアッ!」

 

 構えをとった2人の突撃に対し、タイラントも姿勢を取り戻して反撃に出る

全身のオーラは著しく目減りしているがなおも健在であり、各武装も使用不能というわけでは無い

戦力としての己に些かたりとも不足はないと判断したのか、歴戦の勇士相手にも果敢に立ち向かう。

 

「ギュィァァァアッ!」

 

 絶叫を上げたタイラントの胴を突き、肩を殴り、腕の鉄球を削るゼファー

背面に回って蹴り付け、回転と同時にスラッガーで薙ぐザイン

多様な武装や怪獣の部位を合体しても、あくまで頭は一つであるタイラントに対して連携戦法によってお互いのマークを外しあう攻撃を繰り出す2人

やがて弱り切ったタイラントに向けて、必殺の一撃が放たれる。

 

スペシウムソード

×

ゼファードスライサー

 

「「デェァァァッ!」」

 

 2人の剣がX字状に交差し、暴君を切り裂いた

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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