ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード29 栄光なき勝利 1

「2人目のウルトラマン、インスタントじゃないサブトラだったのか……」

 

 影のなかから声が湧く、邪神クトゥルフの狂信者たる眷属の一つ、影の輩達だ。

 

「早急に量産体制を整えねばならない」

 

「だがいかに量産する、数を揃えても所詮アリゲラでは例の人形すら対抗できん」

「ならば種を変えるまで、ちょうど良い素材が落ちたところだ」

「拾えるか」「可能だ」

「しかし隠密性に劣る我々の影では発見のリスクがある」

「私が行こう、市民を使えば容易いはずだ」

 

 同じ声同士の話は打ち切られ、影の一つが群れから抜け出て行き、崩落したビルや高架の下からその影を広げていく

まずは容易く広げられる範囲の、拾いやすい破片を回収する

おそらくハンザギランを由来とするであろう棘、バラバのワイヤーの切れ端、レッドキングと思われる蛇腹革、様々な素材を回収して残る大きな破片は人を利用して回収するため、BURKの処理班到着までは影に潜み待つ姿勢を取る。

 

 体長50m級の大怪獣……だけに限らず、怪獣の死体というものは粉々にしようと焼き尽くそうとどうあっても影響を残す

ことに植物型などは残骸の炭化片から再生して埋め立て場から発芽、なんて可能性すらある

そのため古くから怪獣の死骸や生成物は可能な限りに回収して封印・破却処理を行うのだが、そのための回収人員に乗っ取りを仕掛け、その身分を利用して残骸を回収するつもりなのだ。

 

「あ〜〜……んっしょと!……めんどくさぁ……」

 

 キャリーを引きながら哀れな隠キャ少女が通りがかったその瞬間、彼女の影へと入り込む。

 

「お゛っ!ん゛ん゛ん゛っっほぉ゛っっおっ……おっ……おっほぉ!」

 

 突如として体内に異物が挿入されて内臓を攪拌されながら脳味噌を弄くり回されるのは堪えたのか、物凄い音が上がる、もちろんそんな事があれば周囲の人が集まるのだが、速やかに乗っ取りを完了させた少女のガワを被った狂信者は素早く誤魔化し始める。

 

「大丈夫かー!?」「なんかあった?」

「わかりませーん!」

 

 さも今現在到着したかのばかりのように見せかけてキョロキョロと周囲を見まわしながら問いに答える狂信者。

 

「すぐそばでなんかすごい声が聞こえたんですけど、何があったんでしょう?」

「……さぁ?怪獣の死に損ないってわけでも無さそうだが……?」

 

 周囲との距離があったことに加えて明らかに常ならぬ声音であった先ほどの叫びと少女の声は繋がりを感じさせなかったのか、周囲は怪獣の死体片の回収を再開する

少女もその流れに乗って同じようにパーツを回収し始めるのだった。

 


 

「体が……」

 

 激しい疲労が運動を阻害するなか、煙王教授の講義を受ける雄介

そもそもウルトラマンへの変身という行為は肉体自体を粉々に分解して作り直すにも等しいため、多大な負担が全身に掛かる

パートナーが肉体に特殊な事情を抱えたザインである雄介はさらに5割増しの負担を受けることになり、早々に限界寸前に至っていた

頻繁に休養を取ってはいても、肉体の限界というものは融通が利くわけではない。

 

「雄介」「ん?」

 

 隣にいた明に話しかけられた時に、即座に反応できたのも奇跡と言っていいだろう。

 

「眠い?」

「……正直に言えば」

 

 教授が教授なだけあってマシだが、これが小森教授のような声の小さく抑揚のないタイプの人だと本当に寝てしまいそうなくらいな眠気に襲われているのだ。

 

「次コマは講義ないでしょ、食堂行って寝よ?」

「……そうする」

 

 2つ後のコマには別の講義が入っているため移動の必要があるのだが、そこまで意識が保つか怪しい雄介は安全を鑑みて大人しく眠る選択を取る。

 

「素直でよろしい」

 


 

 

「……もう、小鳥の次は明ちゃんも?ゆーくんの浮気性」

 

 タイラントを失ったばかりの翠風であるが、そのリアクションはいつものそれと変わらない能天気なそれ

所詮本腰といったところで本人が努力をするわけではなく、ただ単に触媒として力を貸すだけである彼女の仕事は楽なものだ

とはいえ闇というものはそう簡単に見つかるわけでもない、彼女からすればこの前のモールはまさに奇跡的な代物だったのだ。

 

「まぁ……今はこっちもお探し中だし、許してあげる」

 

 ため息を一つ残して翠風は姿を消した。

 

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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