「真理姉まってよ!」「♪〜〜」
中学生ほどの姉妹2人が道路を駆ける、白線を踏み越えてコンクリートブロックに乗り、電柱を躱して駆け抜ける
真理と呼ばれた逃げ側は素早く歩道を飛び回り、自転車や他の歩行者をひらりひらりと躱して駆け抜けているが、追いかける側はそうもいかずに度々足を止めてしまっている。
「もぅ待ってよぉ!」
突風に靡く三つ編みに押されたメガネがずり上がり、そのまま飛ばされそうになった彼女は咄嗟に眼鏡を押さえていたがために、その瞬間を見ずに済んだのかもしれない。
姉の方はちょうど信号のある横断歩道へと足を踏み入れたその時に風が吹き、僅かに体勢を崩してからすぐに取り戻す
その一瞬の間、ミディアムヘアが風にさらわれて広がり、左側の視界を塞いでしまっていた
人間の反応速度からすれば、塞がれていなくても変わらなかった
ただ、気づくのが遅くなるだけ
信号無視の乗用車が通りがかったその事実は変わらない。
ドン、と軽く、大きな音が鳴った。
「危ないよ」
次の瞬間、少女の目に飛び込んできたのは乗用車のボンネットが蹴り潰されて止められる、あまりにも現実性のない状況だった。
「……え?」
「ほらお姉ちゃん返してあげる」
すらりと伸びた脚の持ち主の声は涼やかで、まるでなんということもない一コマであるかのように軽い
だからこそ、理解できない。
「きゃん!」
「ふぎゅっ!」
体ごと押し除けるように突き出された姉を真正面から受け止める羽目になった妹はそのまま転びかけて、寸出の所で踏みとどまる。
「次はないからねー」
呑気な黒い女性の言葉に気を取り直した姉妹がひしゃげた車を見やると、ちょうどそこからでっぷりと太った男が降りてくる。
「おいテメェ俺の車に!」
「黙れよ」
気迫と共に翠風が短い一言と共に地球人の限界をはるか上回る力で一息に車を蹴り潰し、悲鳴をあげて逃げようとする太った男をその足元から湧いた影の糸が縛り付ける。
「ひっ!ひぃぃい!た、たすけてくれぇ」
「……お前の恐怖は使ってやる」
意味不明な雑音を撒き散らす男に心底まで嫌悪感に満ちた表情を浮かべながらその能力によるシンクロを施し、即座に気絶した男の精神力の弱さを笑いながら影に沈める。
「こっから離れなよ、せっかく助かったお姉ちゃんなんだから」
姉妹を突き放した翠風の頭上には天を衝く紺色の光柱、恐怖に濁ったその色が呼ばれる怪獣の特徴だ。
「……滅びの片割れ、コダラー」
かつて姿を現し、古代の戦士によって海の底に追放されし滅びの巨神、海魔神コダラー、天の果てに追放されし天魔神シラリーと対になる邪神の一柱
仮にも神たるそれをこのような浅ましく醜い輩が喚び出した事に感慨を沸かせながら翠風は告げる。
「2人とももう助からないかもね」
「怪獣警報発令……タイプアンノウン!」
出現地点がオーストラリアという遠方だったのもあり、認知の進んでいないコダラー、それを即座にタイプエビルに分類することはできなかったのか、まずは識別不明とするBURKの公式発表が市街地中に流れる。
「……あれは……!」
非公式情報ファイル、
あらゆる生物の潜在意識に恐怖を喚起する滅びの具現を目の当たりにした時、霧島裕一は悟った
あれは“神”だと。
「即時対応を取る、クルセイダーズ総員出撃!」
〈キャバリアーズ総員出撃!〉
それを見た時、2人の隊長は拳を握った
かつて何の抵抗も出来ずにただ駆け回り、ただ叫ぶ無様を晒した己への怒りに
滅びの具現、神たるそれはかつての狂気の邪神クトゥルフのその形態を思い起こさせる醜悪な姿だった。
〈この件は俺が直接管轄する、指令権限は日本支部総括として執行させてもらう、九重・弘原海両隊長は各部隊にて陣頭指揮を取れ!
オペレーターとして霧島と槙島、それぞれの情報整理と作戦監督を」
その声と共に作戦室に駆け込んでくる朽木支部長と秘書の秋さん。
「レーダーと救護の管制については私が行います、皆さんは戦闘に集中してください!」
「はい!お願いします!」
〈手をお借りします、先輩!〉
元オペレーターであった秋からすれば槙島は後輩に当たるのだが、あくまで秘書として勤めている彼女からすればその呼び方はもうやめて欲しいものであるのだが、今だけは仕方ないと諦める。
「まずは周囲の非常勤を呼び集めろ、避難誘導を開始する!」
ハリのある声に仕切られて支部長の直接指揮が始まった。
今後の作品展開の方針は?
-
ニュージェネ系統
-
昭和兄弟系統
-
ンネェクサァス(ねっとり)