ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード29 栄光なき勝利 3

「日本に邪神型出現ですか、なるほど、かつてのクトゥルフを思い出す

しかし今度は我々も案山子ではない……否、案山子にされてはいない

レオに海越えは酷ですが、ここは頑張ってもらいましょう」

 

 フランス支部のアメリエラ支部長が日本への支援派兵を宣言し、自らの袖内に隠された鍵で机の錠を開き、その中に隠されたレバーを引いてエクスカリバー・レオが解禁される。

 

 

 

「邪神というなら我々も黙ってみているわけにはいきません、度重なる恩を返す時が来ました、さぁ皆さん、力を貸してください

我々ロシア支部は助けて貰ってばかりの腑抜けた恩知らず共ではないということを見せつけてやりましょう!」

 

 ロシア支部長ユーリャが首から掛けた短剣型アクセサリーを書類机の上の小さなコンソールに突き立て、遥か天上に配されしロシアのエクスカリバー・サジタリアスが起動する。

 

 

 

「……海魔神コダラー、かつてオーストラリアに現れたというかの邪神であるか!」

 

 支部長としてドキュメントオブフォビドゥンの秘匿情報に対する閲覧権限を有するローマ支部長ルクレティウスは唸る

コダラーは海に自身の肉体から削り出した古代藻を繁殖させて酸素を奪い、硫化水素によって生きる嫌気性生物以外の全ての生物を駆逐した実績がある、古代藻がコダラーの力によって維持されているような眷属であれば良いが、もしそれが物質として残り、あまつさえ繁殖などしてしまえば世界の海はたちまちのうちに生物達の姿を消してしまうのだ。

 

「滅ぼさねばならない、文字通りに一片残さずだ……致し方あるまい」

 

 核の発射ボタンの如く厳重に保護されたそのボタン、ローマ支部の最終兵器(エクスカリバー)を稼働させるためのボタンを前にして、彼は躊躇う

ローマ支部のエクスカリバーは他のエクスカリバーとはルーツを異にするものであり、性質もまるで異なる

そのため迂闊に起動すれば自らの心臓に自らナイフを突き立てる事になりかねないのだ。

 

「……事態が致命的になるその時まで、これを使うわけにはいかない……」

 


 

(チェン)、日本から電話ってのは?」

「はい、邪神降臨だそうです」「逃げんぞ宇宙まで」

 

 中国支部はこの日、予定していた衛生の打ち上げを急遽早めて(対外的には人工衛星の乗った無人)ロケットを打ち上げた。

 


 

 

「見つけた!アレが日本に来たっていう邪神ね!チームスティンガー、総員攻撃開始よ!」

 

「「「ラジャー!」」」

 

 アメリカから飛んできた惑星探査及び異星環境用戦闘機BURKスコーピオン、わざわざスペックの劣るスコーピオンで出撃してきた理由はコダラーの能力にある

コダラーの肉体から生成される古代藻は周辺の酸素を食い尽くす、それは陸上に繁茂した場合極端な酸素濃度低下を引き起こしてしまう可能性がある、大気圏内に於いて普通のエンジンは外気を吸収して燃料を噴霧・爆発することで加速するが、大気成分に酸素が無ければ爆発を起こすことができない、それでは戦えないどころかまず飛ぶことさえ出来ない、故に通常の戦闘機に於いて想定される大気環境と異なる環境になっても通常通りの稼働を行うことができる異星環境用の機体であるスコーピオンで戦いに来たのだ。

 

「見てなさいよね!神だの何だのって上から目線してる奴らなんて木っ端微塵に吹っ飛ばしてやるんだから!」

 

「言ってるうちに来たぞ!」「散開!」

 

 邪神の権能によって湧き上がる海の赤い海面から現れた異形の魚型怪獣をいなして反撃、眷属はそこまで強いわけではないのか即死して活動停止するが、こいつらは無限に湧いてくる眷属にすぎない。

 

「新種の怪獣まで出てくるのか、厄介だな」

「無尽蔵に出てくる眷属ってんなら雑魚掃除は程々にしないとな」

 

 諦めの色の濃いメンバーだが、それで戦意が途絶えるほど甘くはない

眷属全てを殲滅することはできなくても、無限に湧くそれを一体一体処理していくことには意味があるのだから。

 


 

「……総員防護装備着用せよ、これより戦闘区域に突入する!」

「了解!」

 

 陸戦隊は主戦場が至近距離であるため、一応防護装備を着用して急行する

江渡隊員もそれは同じだ。

 

「今作戦は使用弾に制限はない、できる限りに争い続けろ!」

「了解!」

 

 戦闘区域に突入するや否やメテオール兵装の起動許可が支部長から降り、各々の車輌に搭載された特殊兵装・機能が起動する

ペダニウムランチャーを基礎とするビーム砲もその一つだ。

 

「……総員攻撃開始!」

 

 陸戦の華たる戦車隊が列に並び、その巨砲に砲火を咲かせる

人類の生存を賭けた戦端が今開かれた。

 

 


 

 

 雄介は総員出撃の際、もちろん本人にも知らされていないが、あえて別の機体に乗せることで自然に離脱して変身できるように配慮されている

そのための自律不時着機能さえ備えている革命者(レボルシオン)は軽快に飛翔し、真っ先に戦闘区域に突入していく。

 

(雄介、奴は邪神コダラー、かつてウルトラマングレートが戦った強敵だ

なんと必殺技のバーニングプラズマをバリアもなしに打ち返して反撃してきたという!)

(反射能力じゃなく物理的に押し返したのか!?なんてフィジカルだよ!)

 

(慎重に戦うべきだ、気をつけろ!)

 

〈総員、メテオール兵装発動承認!〉

 

 その警告と同時に届いた支部長の声、人類史にあらざる異文明由来の超技術・メテオールが解禁される

全員が戦闘領域に突入すると同時に各機はそれぞれメテオール・イナーシャルウィングを展開して超機動を開始するのだった。

 

「ファントムアビエイション・スタート!」

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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