ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

9 / 109
エピソード4 降り注ぐ罪禍 2

(地球では星がよく見えないな

大気が濁っている影響なのか?)

 

(だろうな、ここ150年くらいか?内燃機関と蒸気機関の発明によって物を燃焼させる量が急速に増加しその副産物としてSOX(硫黄酸化物)NOX(窒素酸化物)が大気中に増えてる

埋蔵していた鉱毒やガスも噴き出てそれでもやめず、酸性雨やスモッグが有害性を振い始めてからようやく気づいて

今は代替燃料やら再生エネルギーやらと躍起になってるけど、総括して人間の愚かな行いのせいだよ)

 

 枕の上で腕を組みながら窓の外の夜空を見上げる二人、そして自嘲する雄介。

 

(蔑む事は無いぞ、光の国だって文明の発展のために多大な時間と資源の損失を生んだ、人類もその過渡期にあるのだ

環境の復元と真のクリーンエネルギーの発明に至るにはしばらく掛かるかもしれないが

我々は必ず人類が未来を、そして希望を掴むことを信じている)

 

「なんか仙人みたいだな」

超人(ウルトラマン)なのでな)

 

 民は眠り、戦士は徹する夜が過ぎる。

 

 


 

 金曜の朝、朝のうちに有彩の宿題交換を終えて大学へと向かった雄介

今日の午後には取っている講義がないため暇になる、その分は有彩とのコミュニケーションに使おうと考えていたところ。

 

「おっはよ〜っ!」

「お?!」

 

 背中に衝撃を受けて、すぐに姿勢を取り戻す。

 

「どうした?今日は嫌にテンションが高いな」

「ふっふ〜ん!今日は金曜週末デー!……地球に週末をもたらしてくれよう〜」

 

「自動的にくるだろそんなの……」

 

 ぶつかってきたのは同じ講義(生物工学)をとっている同級生にして小学からの友人

闘心寺小鳥(トウシンジ・コトリ)、高校こそ別なれど大学で再び出会った幼馴染である。

 

「いつもなら朝起きれなくて一限サボる癖して週末は元気だよなぁお前」

「モチロン!モットクレロン!」

 

「お前な……」

 

 モチロンとモットクレロンはそれぞれタロウに倒された(というかどうかだが)怪獣である

語感は近いが誤用でしかない。

 

「今日は午後暇でしょ?一緒にゲームしよっ!」

「……FER」

「えぇ〜!メビウスが良い!」

 

「うるさいネビュラコンボ決めるぞコラ」

「フォッフォッフォウ……」

 

 意味深げな含み笑いをしながら両手をチョキにする小鳥、おそらくそれは。

 

バルタンのネビュラ(背後ワープ攻撃)のやつか……まぁバイト終わったら行くよ」

 

「そそ、馬鹿みたいなやつね……あ、そろそろ行こっ!?」

「ん?……やべ」

 

 二人して無言でスタートを切り

二人で並ぶのは危ないので前に小鳥をいかせる

小鳥の方が足が早く、小柄なので雄介の視界が塞がらない、非常に合理的な位置どりだった。

 

「間に合ったっ!」

カン・コーン!

「っし!」

 

「はーい闘心寺OK椎名遅刻〜……そんな顔すんなよ、まぁ……なんかあったんだろ?

理由があるときはちゃんと言えば間に合った扱いに出来るから書いてけ」

 

 自分の生徒は全員覚えている、と豪語する女性、煙王瑠璃(エンオウ・ルリ)教授が咥えタバコで自分の横の書類入れを指す。

 

「そんじゃあ講義を始める、宜しいか」

 

 いつもの一声と同時に一気に空気が引き締まる

たかが一声、されど一声というべきか。

 

「前回の最後は航空機の気密についての説明だった、今回もそこから続く

材料工学の資料集75ページ、開け

よいか、低気圧環境下では空気抵抗が希薄となり、高速を維持しやすくなるため、一般的に航空機は高高度ほど効率よく飛行する事ができる

しかし高高度では気温が低く、金属が収縮するためハッチなど隙間の出来る部位に於いては気密の破壊が起きやすくなる、そのため温度による熱膨張はできる限り小さい材質が望ましい

しかし高密度・高重量の金属は当然ながら航空機自体の重量を増加させ

これが燃費の低下へと繋がる

以上を踏まえて航空機に於いては約70%、機体のウイングおよび外装部は軽量なアルミニウムを主とするジュラルミン系合金によって形成され、強度を要するフレームやエンジン、ハッチ外縁部など変形を許容する事ができない部位にのみ高強度且つ膨張率の低い金属を利用するのがセオリーとなっている。

 また近年、炭素繊維を織り込んだ強化プラスチックおよび化学繊維ワイヤーを利用した多重構造のフレームカバーなどによるさらなる高強度/軽量化が進められている

これによって航空機自体の重量を低減し、燃費を改善しようとしている訳だ

ではここで諸君らに尋ねよう

教科書の81ページより熱膨張率と強度および耐熱性を両立しうる材料を三つ挙げよ」

 

 タバコを離して灰皿に押し付けた直後、一気に表情を変えた教授は平坦な声で説明文と問題を読み上げていく。

 


 

「や〜っと終わったあ〜!」

 

 同時刻、境商事の藤井真理営業課長は社屋内で大きく伸びをしていた

背筋を反らすと同時に豊満な胸が更に持ち上げられてブラの容積限界をオーバーし、シャツの胸元を大きく押し上げる姿は幸運な数人以外には見られる事はなかったが、その中でも手元のコーヒー缶を握り潰した愚かな男はせっかく用意させた会議資料を染み抜きする作業に熱中させられる羽目になった。

 

「間に合った〜凱君もありがとうね」

「い、いえ」

 

 まだ若さを色濃く残した青年は課長へと軽く頭を下げて自分の仕事へと戻る

新人の彼が任されるのは主に型式の定まった書類をコピーして届ける程度の雑用だが、毎度課長へ押し付けられる膨大な仕事量においては簡単な仕事だけでも分配できるのは大きな助けとなっている事に違いはない

任されるのがショボい仕事であっても不満らしい不満も出さず、腐らず手を抜かず

一つ一つに確認を取り、自己判断を避けて冷静。

彼の振る舞いは新人としては良くできている、その点には謙遜も遠慮もさせる事はなく、組織を取り仕切る長として

真理は正しく彼を評価していた

即ち、未熟ながら芽を持つ才人と。

 

「そうだ、お昼はもう決めてる?

良かったらランチに行かないかしら?」

「え?良いんですか」

 

「誘っておいてダメとは言わないわよ

じゃあ後で食堂いきましょ?」「はい!」

 

 覚えることも緊張することも多い新人時代、らしいミスも多い青年だからこそ

メンタルケアも指導者の仕事

真理は仕事に手抜きをしない女だった。

 


 

「ねね、午後暇?ひまでしょー!」

「朝に言ったろ、3時くらいから行く」

 

「むむむ……女!?」

 

「お前は一体何を言っているんだ?

バイトだバイト、ほら飯行くぞ」

 

時刻は11時、昼には少し早いが

大学から毒ヶ丘邸は遠い

今から軽く食べるくらいなら12時には間に合うかもしれないが、長話に付き合ってはいられない。

 

「はーい、そんじゃあまたね」

 

 小鳥の軽快な足音が去ると同時に雄介はコンビニダッシュを始め

そして昼の分の弁当を確保して

毒ヶ丘邸まで向かう。

 

「よぉし12時ジャスト、しつれいしまぁーす」

 

 信号に止められて少し焦るも、結局いつもの時間にたどり着き、館へと入った雄介

そしてそれをわざわざ出迎える有彩。

 

「いらっしゃい、先生」

「あぁ、来たよ……それじゃあ早速、昨日の宿題を見せてもらおうか」

 

 いつも通りそっけない雄介に対し、明るい表情の有彩はその抱えたバッグを指差して。

 

「先生、まだお昼食べてないでしょ、今日もコンビニ?」

「あ、あぁ……効率がいいからな」

 

 雄介はカバンから若干寄ってしまっている弁当を取り出して見せる。

 

「も〜!ビニ弁ばっかじゃ体に悪いよ!円盤とか添加物とかさ」

「塩分な!?円盤は弁当には入らん」

「間違えただけ!それにお弁当サイズの円盤もない訳じゃない……よね?」

 

 軽口を叩きながら、雄介は屋敷の食堂へと移動して、そこを使わせて貰う

電子レンジに弁当を突っ込み、約40秒ほど待つ

 

「……あれ?」

 

 途中まで機嫌良く音を立てていた電子レンジが急に止まる

それだけではなく電灯の光も消えてしまった。

 

「停電か?」

 

 スマートフォンの画面を表示してみるが、そのような情報は提示されず、不審に思っていると直ぐに電気は回復した。

 

(一体なんだったんだ……)

(分からない、だが計画的でない停電ならすぐに原因究明のための捜査本部が設置されるはずだ、その報告を待とう)

 

 ザインの言葉は冷静だったが、結局直ぐには原因を確認できず

電灯が使えなくなってしまい、非常用の懐中電灯で勉強するわけにいかないので今日は休みにして解散となった。

 


 

「みぎゃーっ!データァァァァッ!」

 

 無事二時間分の進捗が飛んだ小鳥の絶叫は3軒隣まで響いた。

 

 


 

 そして日曜日の朝、例の停電の原因は未だに掴めていないが、高圧電線の破損ではないかという推測だけは立てられている

幸い病院や大学などは天候や怪獣など災害を見越した対策の無停電電源装置があるために問題はなかったが、一般家庭ではそうもいかず、数多くの被害が出ている

警察もBURKもそれなりの人数を出して調査を行なっているそうだ。

 

「今のうちに充電しとくかな」

 

 現状ではまだ停電する可能性は否めないため、スマホ用のモバイルバッテリを購入した雄介はコンセントにそれを繋いだ。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。