ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード29 栄光なき勝利 4

 ファントムアビエイション、直訳すれば幽霊飛行、それは地球外由来超高度技術メテオールによる慣性・重力制御で行われる既存の航空力学に喧嘩を売った超機動。

 

「うぉおおお!」

 

 人外の飛翔を授け、その代償に極めて高度な空間認識能力と瞬間的な判断力を要求するあまりに玄人向けの機能、それこそメテオール・イナーシャルウィングによる超機動ファントムアビエイションである。

 

「ガァァアアッ!」

 

 邪神の戦哮による大気の揺らぎすら乗りこなし、そのまま突き進んで攻撃を開始、わずかな時間のみ許される超機動によってできる限りに肉薄してミサイルを叩き込む

邪神の固有領域が展開された以上、光を束ねるビーム砲は減衰して大した成果にならないのだ。

 

〈よし!行けっ!〉

〈食らえぇぇっ!〉

 

 比良泉と駒門の2人の駆るクルセイダー2.3がそれぞれの収束ビーム砲とガトリングを発射する、やはり火花をあげる程度に過ぎないビームと、それに対して肉を抉るガトリング

 

「グギャァァァァアッ!」

 

 邪神の咆哮に海が唸り、水位が上がると同時に赤く染まった血色の海水が触手のように持ち上がる

水の触手のそれぞれが複雑に畝り、その質量を持ってクルセイダーを捉えようとする

本質は(レーザー)である以上、シルバーシャークも流石に大量の水をまとめて蒸発するほどの威力は発揮できないだろう。

 

「デヤァァッ!」

 

 故に、変身する

ウルトラマンの肉体によって膨大な水を受け止め、同時に念力ではじき返すのだ。

 

 

 その判断と共に即座にレボルシオンを乗り捨てた雄介はザインと肉体を置換して、そのまま海水の触手を止めて反撃に出る

邪神に支配された領域の環境はそれそのものが怪獣級の脅威になり得るが、現実を書き換える固有領域といえば念力も同じ事

強力なウルトラマンは必殺技や強化態の発揮などに伴う膨大なエネルギー放出を二次的に利用して固有領域を展開する事もできるのだ

ウルトラマンゼロのシャイニングフィールドやネクサスのメタフィールド、父のウルティメイトゾーンがそれに当たる

雄介(ザイン)はそこまでのエネルギー量を持たないにせよ、相手の領域の支配率を削ぐ程度なら実現可能な実力はある。

 

ウルトラ念力

VS

海魔神殿(オースデモニウム)

 

 

「グキャオァァァアア!」

「デッ……ダァァアッ!」

 

 百を超える触手群達に対抗こそすれど相殺までに至らず、咆哮を正面から受けてダウンするザイン

しかし、そこに太陽が現れる。

 

〈特殊照明弾投下!〉

 

 弘原海の機体に積まれていた6発の特殊照明弾、マグネシウム粒粉と高濃度酸素の混焼による白炎が放つ凄まじい光がわずかに闇を焼き払う

人類の掲げる勇気の灯火が戦士の助けとなり、邪神の眷属どもを薙ぎ払ったのだ。

 


 

「止むを得んケースだ……使うべきか……?」

 

 一方、防衛基地では支部長が1人思案をめぐらせていた、エクスカリバー級ゾディアックウェポン、エクスカリバー・カプリコーン

日本支部の有する最初のエクスカリバー

最終兵器(エクスカリバー)級という括りを制定するきっかけとなった始まりの聖剣、ビーム砲・高次元バリア・巨大マシン・戦艦・光通信装置・超高速輸送機などさまざまな種類の兵器達に対してあまりに無骨かつ無茶苦茶なそれ

怪獣の能力の再現を期待して製造されたウルトラマン用巨大兵装にして純粋物理刀剣、その名を『エクスカリバー』である。

 

 固有領域によるビーム減衰・無茶苦茶な再生による超耐久能力・巨大すぎる出力による妨害の突破・圧倒的なパワー

邪神の揃える能力に対抗できる最終兵器として、まさにそれは相応しい。

 

「……うむ」

 

 対外的には気象観測用人工衛星『つるぎ七号』、その内部に格納された聖剣を解放するための鍵、それは竜胆支部長自身の左目

正確にはその眼窩に収まる義眼に内蔵されたICチップである

支部長は迷いなく自らの左目を引きぬき、そのままコンソールの上部パネルへとそれを読み込ませる。

 

「最終兵器級ゾディアックウェポン、エクスカリバー・カプリコーン、投下」

 

音声認証と共に11種それぞれに異なる鍵とそれを受ける錠、その中で最も秘匿性の高い義眼のチップが認証され、遥か彼方の星が天より堕とされた。

 


 

「デュァァッ!」

 

 拳を構えて突撃するザインと、それをフィジカルの差で受け流し続けるコダラー

粘性を帯びた表皮は鰻のように打撃を滑らせ、正確な打撃を無為にする

しかしザインもそこで諦めることはなく、スラッガーを抜いて光剣による斬撃を仕掛けた。

 

「デュアッ!」

 

 

 

 一方身分を完全に秘匿しているために変身に手間が掛かる江渡(ゼファー)は自分と同情している街岡隊員を如何に撒くかを考えていた

戦車はその複雑な操縦系統から基本的に複数人で動かす物であるため、雄介のように1人では出撃できない、そのため同乗者を如何にして撒くかという問題はどうしてもついて回ってしまうのだ。

 

(せめて被弾でなくても衝撃か何か受けてくれんものか……!)

 

 一瞬失礼なことを考えてしまうが、そんな事はおくびにも出さずに操車を見守りながら機銃で反撃しに行く江渡

その奮戦を背にして怪魚や触手による攻撃を次々に交わしていく街岡の手腕はますます冴え渡るのだった。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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