ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード30 空にて 1

「ギシャァァァッ!」

 

「ちぃっ!」

 

 宇宙にて、赤い光が流星群のように過ぎ去っていく

それら全てがこのシャトルを狙った攻撃の流れ弾。

 

「……私死ぬんですねぇ……」

「うるさいぞ!死にたくなければ静かにしろ!」

 

 ロケットの外装などとうに吹き飛ばし、内部に隠されていたフライトユニットが露呈している

そのブースターによる推力の水増しがなければとっくに落とされていただろうことは明白だが、コアユニットとフライトユニットだけでは戦闘もクソもないため、ほとんど無防備に宇宙に放り出されてしまったともいえる。

 

「リブラ本体はまだか!スペーシーは!」

「ドッキング前に足止めたら落とされます!それに接近しすぎです、ワイバーンの火力に巻き込まれちゃいますよぉ!」

 

「戦娘なんだろお前なんとかしろよって!」

「いくら徒手空拳がつよくても怪獣レベルじゃどうにもなりませんよっ!」

 

 (チェン)龍華(ロンファ)BURK中国支部隊員兼支部長護衛兼秘書兼愛人、見た目は12歳ごろの少女に見えても20を既に過ぎている

特殊部隊養成施設出身の戦士であり美人秘書でもあるのだが、流石に怪獣相手にどうこうというのは畑違いが過ぎる

邪神相手ならば尚更にだ。

 

 そう、今目の前にしているのは天魔神シラリー、海魔神コダラーと対を成す空の果てに追放されし邪神である

コダラーが地球に呼び出されたことで封印が解けて覚醒したシラリーは、手始めに地球から出てきたばかりの矮小な人工物を叩き落とそうとしているのだ。

 

「デュアッ!」

 

 しかし、赤い閃光がそれを遮る、トラベルスフィアによる体当たりが光条の幾つかを叩き落とし、そのままシャトルを確保した彼はトラベルスフィアを解除して姿を現した。

 

「ジャッ!」

 

 銀主体に紺のラインが入るマッシブなボディ、ザイン達よりも遥かに筋量の多いその肉体の持ち主は我らが師たるウルトラマンクライムだ

宇宙の無重力空間にも関わらず、まるで地に足を突き立てるかのように体を固定し、構えをとったクライムはシャトルの安全を確保しながらシラリーへと飛び掛かる

超高速移動という程ではないが、到底目で追うことはできない動きだ。

 

「キャァァァアッ!」

「デェァァァッ!」

 

 天の魔神であるシラリーを相手に宇宙戦を挑んだクライムはしかし相手の土俵でも有利に立ち回ってみせる

シラリーの展開する固有領域、天魔神殿(デスペリウム)は光を奪えどクライムの意志によって展開される力場を侵食できず、相殺され

時間制限のない宇宙戦では光の減衰など意味はない。

 

「格闘戦は不利なんじゃないのかオイ!」

「……いえ、見たところ大して差は無いみたいですよ、邪神相手では光線技擦りにも意味はありませんし……ほら、お互いに殴り合いが成立しています」

 

 シャトルの中では劉支部長と燈の言葉が続いていた。

 

「今のうちに行きますよ、リブラ本体はすぐそこなんですから」

 


 

(ザイン……いかん、その技は!)

 

 かくなる上は無理やり街岡隊員を気絶させてでも変身する覚悟を固めたゼファーだったが、戦闘が終了した直後の衝撃波が大きく車体を揺らしたことで計画を変更して自ら車外に放り出される事で行方不明となり、しかるのちに肉体をウルトラマンのそれへと置き換える。

 

「デュアッ!」

 

 バリアの内側にあった全ては消し飛び、コダラーごと自爆したザインは光となって一度散ったあと、無理やりに自己修復で復活する

本来ならばタロウのウルトラ心臓のような再生器官によって行われるべき復活プロセスだが、彼の場合は修復装置による外部からの修復であるため、反動は大きい。

 

「……ッ!」

 

 復活直後にまた倒れ込んだザインを抱えて宇宙へと飛び立ちながら彼を自らのインナースペースに収容し、一時的に合体状態になって輸送する

生命維持においては鉄板の手法であるのだが、今は戦力増強の意味合いもある

宇宙では今、教官が戦っているのだから。

 

(あれは……!?)

 

 変身せずとも聞こえたエクスカリバー・サジタリアスの発射音、そしてダイナマイトすら防いで見せたエクスカリバー・ヴァルゴの防御

だが、この戦いで起動されたエクスカリバーはまだある

戦闘開始からわずかに遅れて投下されたエクスカリバー・カプリコーンはいまだ天から落ちる最中にあったのだ。

 

「デュアッ!」

 

 念力で巨大な刀を手元に引き寄せ、そのまま満身の力を込めて投擲する、狙いはただ一つ

今まさに発射されるシラリーの光線を妨害する事だ。

 

 宇宙であるゆえに音はない、ただ静かに空間を貫き、当たる物全てを切り裂く聖剣が突き刺さる

次の瞬間、エネルギー収束器官を攻撃されたシラリーの念波による絶叫が振り撒かれ、片腕が爆散した。

 


 

「…!」

 

 目の前で今放たれようとしていた光球が爆発し、シラリーの腕ごと消滅する

その様にわずかに目を奪われながらも視線は正面に保つ

飛来した何某かはともかく、シラリーを倒さぬことには未来はないのだから。

 

「ギシャァァッ!」

「デュッ!」

 

 即座に再生するほどのリジェネは持ち合わせていないのか、エネルギー漏出の赤い光を残しながらもシラリーが突撃してくるが、クライムは不動の構えでそれを受け止めた。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)

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