ウルトラマンザイン   作:魚介(改)貧弱卿

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エピソード31 レコードの裏面 

 地上に戻ったゼファーがザインを分離するが、やはり意識は回復しないままの状態で雄介に戻ってしまう

これは相当に重症だ、ダメージによる粒子崩壊や念力結束の解除でもないのにウルトラマンの肉体を維持できないほどにパワーが低下しているということに他ならない。

 

(やはりザインは光の国へ戻すべきか……高度治療を受ければ回復の目はあるだろう)

 

(師匠、ですが一年間の任期を放棄するわけには!)

(戦えない戦士に任期もクソもあるか!)

 

 クライムの一喝はまさに正論だが、邪神二柱とは一般の戦士であるザイン1人に任せるにはあまりにも荷の重いものだエリート戦士であるグレートだって片方を倒すのがやっとなのだから。

 

(しかし!ここで本人の意思無しに決めつければザインも師匠自身だって危うい!)

(私が教官であろうと無かろうと戦力が変わるわけではない、だが一つの命のあるなしは変わる、私もそう長く滞在が許される身ではないのだ、それともゼファー、お前がザインの身代わりにこの地球を守るとでもいうのか!お前には守るべき星が既にあるだろう!)

 

(ぐっ!ですが!)

「待ってください、クライム教官」

 

 それを制したのは、雄介の声

もはや消耗のあまり意識の維持さえできないザインに代わって肉体の主導権を取る彼は自らの足で立ち上がり、声を上げたのだ。

 

(依代の青年、君もまた甚大なダメージを受けている、もう休むべきだ

ザインの代わりの隊員を派遣するから心配する事はないぞ)

 

 クライムの言葉は弟子に対するそれと異なりあくまでも地球人とウルトラマンの立場での言葉

だが雄介はそれを拒絶する。

 

「いいえ、俺は戦います、ウルトラマンとして……今はまだ、俺がウルトラマンザインです

俺が、地球に居ます!」

 

 ウルトラマンと合体した人間として、あくまでウルトラマンとして戦う覚悟を語る雄介

しかし、クライムはその感情論を否定する。

 

(甘い!怪獣どころか車一両相手にするにも難儀する地球人1人に何ができる!群れ、学び、全体として成長するがゆえに強く在れる人類の、その中でお前1人に何が出来るというんだ!)

(師匠、そこまでです)

(止めるなゼファー!)

 

 たしかに人間などウルトラマンの指先一つすら押し返すことのできないひ弱な生命だ

ウルトラマンであっても苦戦を強いられるような怪獣とまともに戦うことはできない

だが、どんな事にも例外はある。

 

「言ったはずです、俺がウルトラマンザイン、俺がこの星の戦士です」

 

 全身に雷光が満ちる、雄介と肉体を共有するがゆえに彼の内に潜在するザインの能力を引き出し、雷を操る力として行使しているのだ

たとえウルトラマンの規模には及ばぬとしても、天然の雷のそれに迫る一億Vの超高電圧が迸る様は伊達酔狂のそれではない。

 

「……」

 

 しばし、睨み合う二人

そしてその緊迫した空気を裂くように、高い音が鳴る

クライムとゼファーのカラータイマーの制限通告だ。

 

(言ったからには、やって見せろ、ザイン)

「デュァッ!」「シュッ!」

 

 二つの光が空の彼方へと去り、そしてウルトラサインが光る

それは激励のメッセージだ。

 


 

「……」

 

 ウルトラサインを見てほくそ笑む、ゼファーとクライムが引き揚げたことで今地球にいるのは当初通りにザインのみ、そして彼は見るからに疲弊している

ならばこちらも相応の怪獣を、油断なくぶつけて倒させてもらおうというわけだ。

 

「元からあったガーゴルゴンとアリゲラ以外にも多数の怪獣細胞が手に入った、培養も現状施設で十分に可能……あの女と違って我々は疲弊から回復させてやるつもりなどない」

「どこまで足掻けるか、見ものだ」

「変身不能のウルトラマンなど、怪獣の敵ではない」

「勝利を我らが手に」

 

 

 声の群れは霞んで消えた。

 


 

「燈、俺はこの職を辞めるつもりだが、お前はどうする」

 

 大気圏突入用ユニットがコアユニットから切り離されて徐々に四神が離れていくのを眺めながら、劉支部長はそう切り出した。

 

「……私は戦娘ですので、買われた身ではどこに行くこともできません、残りますよー」

 

 全世界に点在する怪獣災害被害児童保護養成施設、その中でも特にタチの悪いそれである兵員養成機関の一つ、国立湖北第七女子大学

大学と銘打たれてはいても実態は兵学校であり、幼稚園から大学まで一貫の教育課程を持っている

親を持たない子供達は外で生きる術を持たないため、その環境に適応できなければ死ぬ他にないという前提のもと、イカれた『教育』を叩き込まれるのだ。

 

「そうか。いくらだ?」

「2億ドル……くらいだったと思いますよ?私の証文なんて詳しく見てないですし良くわかりませんけど

潰式ですんで楊式のやつよりはちょっと安いはずです」

 

 身体に過剰な負荷を掛けて成長機能を極端に低下させ、肉体の外観年齢を幼いままにする潰式(カイシキ)、逆に栄養剤を多量に摂取させて長身肉厚に成長させる楊式(ヤンシキ)、燈は潰式の中でも珍しい完全つるぺたである。

 

「2億ドルなら俺が出そう」

「やーん買われちゃいましたー」

 

 対外的には彼女は劉支部長の愛人ということになっているが、事実は違う

彼女は『支部長の愛人』という役職であり、内実としては護衛と秘書を兼任する仕事をしている、そしてそこに一個人としての劉凱は関係ないのだ。

 

「……元中国支部長、人身売買に手を染める、か」

「明日の新聞に載ってそうですね、ただでさえアレな身分ですし、きっと責任取らされますよ」

 

 中国支部はお察しの通り手抜き粉飾賄賂売春とまぁさまざまにやらかしており、その屋台骨も当然腐っている

それも参謀や将師が閣僚の天下り先になるレベルであるから始末に負えず、ほぼ現場と監督官と支部長周辺で回しているような惨状である

そしてその中でも特にアレな連中はいつでも下剋上を狙っている事で有名で、彼らにかかればやらかされている支部内でのあれこれはすぐさま支部長やその他上級職の汚職ということになるのだ

エクスカリバー・リブラのカノンユニット破損喪失も特大の失点であるからしてもはや支部長も退き時と言わざるを得ない。

 

「まぁ……俺も碌な輩ではない事は事実だが、すんなりやられてやるつもりは無いさ」

 

 地球儀のように小さかった地球はいつのまにか視界の大半を埋め尽くし、青い海が迫ってくる。

 

「じゃあ、二人で日本に行きましょう?日本なら外国人でも入りやすいって聞きますし」

「んなスパイ天国なら一人で行きやがれ」

 

 結局二人は最後まで終始噛み合わなかった。

今後の作品展開の方針は?

  • ニュージェネ系統
  • 昭和兄弟系統
  • ンネェクサァス(ねっとり)
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