寝取られエロゲ世界にTS転生したら幼馴染が竿役間男だった件について   作:カラスバ

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Fall in one
キッズスペースのあかり


 9月になっても夏の熱気はなかなか消えない。

 とはいえ病院はエアコンで快適な温度に調節されているので不快に思った事はない。

 むしろ窓から入って来る温かな風を心地よく思えるほどだ。

 ただ、エアコンの効いた部屋に慣れ過ぎたら、今後エアコンのない生活に戻った時大変だろうなと思うけど。

 

 そして全身の至るところの骨を折った私の回復度は一体どうなっているのかと言うと、かなり順調に回復している。

 むしろ順調過ぎて怖いくらいだ。

 なんにせよ、今では身体をがっちり固定していたギプスは外され、代わりに包帯が巻かれている。

 身体の自由度が増して大分動きやすくなり、お陰で今は自分でご飯を食べる事も可能になっていた。

 いやー、他人にご飯を食べさせられるのって、どちらかというと不便さが増すのね、初めて知った。

 ともあれ、身体も後もう少しで完全回復、これはもう退院もすぐかな、とそう思っていた。

 

 全然違った。

 

 ほぼ1か月ずっとベッドに固定されていた私の身体は当然のように筋肉とか諸々が衰えている。

 それを復活させるために、そして骨達がしっかり私の体重に耐えてくれるように、リハビリが必要になって来る。

 マジかよ。

 マジです。

 そこら辺の事をお医者様に聞いてみたところ、「2か月は骨折が最低限治る期間だから」との事。

 リハビリの時間は入れていなかったらしい。

 ちなみにリハビリは最低でも1か月以上は掛かるみたいです。

 マジかよ。

 マジらしい。

 

 と、まあ。

 そんな訳で心の中は変わらず「マジかよ」で一杯だったが、しかし早く家に帰る為にはいっぱいご飯を食べて栄養を取り、それからリハビリを頑張るしかない。

 余談だが、この病院のご飯はかなり美味しい。

 病院食は不味いとはなんだったのか。

 

 そして一応車椅子に乗ってだけど病院内を自由に動き回れるようになった私は、最近キッズスペースに足を運ぶようになっていた。

 一応私、12歳なので小児病棟を利用していて、だからキッズスペースへも入れる。

 そこでは私みたいに骨折しちゃった子供とか、あるいは原因は分からないけど点滴をしている子とかがいて退屈をしていた。

 とはいえ、今は過疎しているみたいで、私含めて2人しかいない。

 あるいは動き回れるのが私達くらいしかいないのか。

 元々そこまで規模の大きい病院ではないけれど、ちょっと寂しい。

 実際は、ここに子供がいない方がきっと幸せなのだろうけど。

 

 と言う訳で、私は今日もキッズスペースへと足を運び、『彼女』に会いに行く。

 案の定、キッズスペースでは『彼女』が手持無沙汰気味に本を読んで私の事を待っていて、そして私がやってくるのを確認するや否やぱっと表情を輝かせ「お姉さま!」と手を振って来る。

 うーん、走り寄れない事をこんなにつらいと思った事はない。

 看護婦さんに車椅子を押して貰い、私は『彼女』の元へと移動する。

 

「あかりちゃん、元気にしてたかな?」

「はい、お姉さま。あかりは元気です!」

 

 聖園あかりちゃんはにこにこと笑いながら私を出迎えてくれる。

 夜空を切り取ったような黒い髪に珍しい青色の瞳、身長は小柄で私よりも低い。

 お姉さまと慕ってくれているが、しかし実際は同年齢同年代である。

 

 聖園あかりと言う女の子は、この世界のヒロインの最後の一人だ。

 お嬢様キャラでかつ病弱キャラで、もしかしたら病院で会えるかなとか思っていたら、案の定だった。

 それからコンタクトを取ったのだが、なんだかんだあって今ではとても仲良くして貰っている。

 

「朝ごはんはちゃんと食べた?」

「はい、お姉さまが好き嫌いしちゃだめって言ってたから、あかりは残さず食べたよ」

「うむ、偉い偉い」

「えへへ♪」

 

 頭を撫でて上げると彼女はにへらと表情を綻ばせて喜びを表現する。

 うーん、素直な子だな。

 可愛いくてまるで天使みたいだ。

 

「あ、そうだ。今日も髪梳かしてあげよっか」

「良いの?」

 

 そう控えめに聞いて来るが、しかし彼女はまるでして貰いたいと言わんばかりにうずうずとしている。

 

「うん、私のリハビリに付き合ってよ」

「えへ。お姉さまがすぐに元気になる為だもんね」

 

 と言う訳で看護婦さんに手伝ってもらって位置を調整し、早速あかりちゃんの髪を櫛を使って梳いていく。

 とはいえ、必要がないほどにあかりちゃんの髪は滑らかでさらさらだ。

 どちらかというとこれは感覚を楽しんで貰うって感じになっている。

 実際、彼女は気持ち良さげに「んー」と小さく唸っている。

 うむ、何よりである。

 

「いやー、私もあかりちゃんみたいな妹が欲しかったよ~」

「あかり、お姉さまの妹になるよ?」

「血が繋がってないからね~」

「うん、それは本当に良かったと思ってるよ」

「そう、ん? え、なんで?」

「だけど、お姉さまが元気になったら退院しちゃうんだよね」

 

 と、あかりちゃんは少し寂しそうに言う。

 

「いやだな。あかり、ずっとお姉さまと一緒にいたい」

「それはだめだよ、あかりちゃん。あかりちゃんも早く病気を治して、退院しないとだよ」

「それなら、お姉さま。一緒に退院したら、またいっぱい、いっぱいいっぱいあかりと遊んでくれる?」

「当然だよ。他ならぬ、あかりちゃんの願いだからね」

「えへ……お姉さま、好き。大好き」

「私も大好きだぞ~」

 

 ふふ、と笑いながら彼女の髪を梳かしていく。

 

 ……最初から髪は綺麗な状態だったので、その時間はあっという間に終わってしまった。

 

「はい終わり」と言うとあかりちゃんは名残惜しそうだったが、それでも聞き分けがよく「分かった」と頷いてくれる。

 

「じゃあ、今度は何をする?」

「それじゃあ、一緒にご本を読む?」

「あー、本か――今、なんて本を読んでたの?」

「それはね、お姉さま。これは――」

「歩夢?」

 

 そこで、キッズスペースの入り口から私を呼ぶ声がした。

 聞き覚えのある声だった。

 ていうか、黒男の声だった。

 

「おー、黒男。来てたんだ」

「やっぱりここに来てたんだな」

「いやー、良かったよ。やっぱり遊ぶのは大人数の方が良いし、ちょっと付き合ってよ」

「――黒男?」

 

 そん声は。

 おおよそ子供が出して良いものではない、全身を氷結させるほどに冷たい声色をしていた。

 

「毒島、黒男」

 

 振り返ると、聖園あかりちゃんは黒男に向かって冷たい視線を送っていた。

 あ、れ。

 もしかしてあかりちゃん、黒男の事、嫌いだったり……?




一応作者の考えとしては、TS娘が「男として」男の事を好きにならない限り、BL系のタグは必要ないかなと考えています。

そしてGLタグについては――そういう事です。



※書いた頂いた感想を読み考えた末、「ガールズラブ」タグを消して代わりに「TS娘×男」「TS娘×女」の二つのカップリングタグを付けようと思います。

読者の皆様を混乱させてしまい、誠に申し訳ありませんでした。


追記 タグを検索に使っている事は完全に考えていませんでした。

いろいろと考えた結果、上記のタグは消して代わりに「精神的BL」を追加する事にしました。
申し訳ありません。

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