寝取られエロゲ世界にTS転生したら幼馴染が竿役間男だった件について   作:カラスバ

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夏の熱はまだ去らずにここにある


秋が終わるその時まで

「こんにちは。黒男、さん」

 

 にこっと笑って挨拶をするあかりちゃん。

 あれ、さっきの冷たい視線は見間違えだったかな?

 いやまあ、この可愛くて優しいあかりちゃんがあんな恐い表情をする訳ないし、きっと私の勘違いだったんだろう、うん。

 そしてキッズスペースに入ってきた黒男はあかりちゃんを見て少し警戒した表情をする。

 正確に言うならば、人見知りしている感じだった。

 

「え、っと」

「聖園あかりと言います。聖園と、そう呼んでください」

「あ、あ。俺の名前は――」

「毒島黒男さん、ですよね。お姉さまから、しっかりと、お話は聞いております」

「お姉さま……?」

 

 ちらっとこちらを見てくる。

 やめろ、強引に呼ばせているのかこいつって視線を向けてくるな。

 私とあかりちゃんがとても仲が良いからそういう風に呼んでくれているし、呼ばせているんだよ。

 文句あっか?

 

「いや、でも。二人とも、もしかして一緒に何かしてたのか? ……邪魔だった、か?」

「ううん、大丈夫だよ。二人でやる事にも限界があったし、黒男が来てくれたのは僥倖だったかも」

「ぎょーこー?」

「ちょうど良かったって事だよ」

「時々歩夢って難しい言葉を使うよな」

「年の功と言いたまえよ、君ぃ」

「同じ年だろうが」

「そりゃそうだけどね、っと。ともかく折角来たんだから、一緒に遊ぼうよ――あかりちゃんはどう?」

 

 私はあかりちゃんに尋ねる為に彼女の方を見――そこで彼女が凄く寂しい表情をしている事に気付く。

 

「あかりちゃん、もしかして二人きりで遊びたかった?」

「い、えその……ただ、二人はとても仲が良いんだなーって思っちゃって」

「そりゃあ一応そこそこ長い付き合いだしね。幼馴染って奴」

「それはあかりも、知ってるよ? だけど……」

 

 あかりちゃんは目をきゅっと瞑る。

 まるで何かを我慢するかのように、何か思いを閉じ込めるかのように。

 

「黒男さんは、その。お姉さまとはよく遊んでたのですか?」

「え、ん。そう、だな。結構遊んでいたとは思うぜ?」

「それは、良かったですね……」

 

 素直に羨ましいです。

 彼女は言う。

 

「お姉さまもお姉さまで、黒男さんと話していた時、とても嬉しそうでした」

「あかりちゃんと話すときだって、私はとても嬉しいよ?」

 

 あかりちゃんはもしかして自分と一緒の時は我慢して接しているのではないかと思っちゃったのだろうか?

 それなら違うと否定したのだが、しかしあかりちゃんは首を横に振る。

 

「あかりもお姉さまと一緒にいて、とても楽しい」

「それは良かった」

「今まであかり、独りぼっちだったから。病院にずっといて、遊ぶ友達もいないのは、それは私に勇気がなかったのがいけなかったからなのかもだけど。だけどお姉さまが話しかけてくれた時、あかり、とても嬉しかった」

 

 凄く凄く、嬉しかった。

 

「だけどね。あかり、分かっているの――お姉さまは、私が退院するよりも早く、ここからいなくなっちゃうん、だよね?」

「それは……」

「それは凄く良い事だよ! それは知ってるの、だけど――だから! あかりはお姉さまとの時間は大切にしたくて」

 

 彼女は少しだけ潤んだ瞳をし、決意の籠った口調で言う。

 

 

 

 

 

 

「病院にいる間は。私と、一緒に一杯遊んで欲しいんです」

 

 

 

「それは、」

「歩夢」

 

 私が何か答えるよりも早く、黒男が踵を返す方が先だった。

 

「俺、やっぱ帰るよ」

「いや、でも」

「歩夢、俺からのお願いだよ。その子、あかりだっけ? 一緒にいられる時間は限られているんだろうし、それなら一緒にいてやってくれ」

 

 そう一方的に言い、一度にこりと笑ってから、こちらの返答を待たず黒男はキッズスペースからいなくなる。

 その背中を見、あかりちゃんは申し訳なさそうにしつつ――喜びが隠しきれていない感じだった。

 

「……お姉さま。私、最低かな? 黒男さんだってお姉さまと一緒に遊びたくて来てくれたのに、邪険に扱っちゃって、それで」

「それ以上は言っちゃいけないよ、あかりちゃん」

 

 ぽん、と彼女の頭に手を乗せる。

 

「黒男だって、そこまで子供じゃない。いろいろ考えた上で帰ったんだよ。その意思は尊重しなきゃだよ」

 

 私とあかりちゃん、二人の関係を考えてくれた。

 いなくなった事は寂しいけど、だけどそれは彼が私とあかりちゃんの事をよく考えてくれたからだ。

 

「だから――」

「ううん、お姉さまは多分、分かってない」

「ん……?」

「分かってないままが、良いの……」

 

 どういう事?

 

 しかしあかりちゃんはその事の答え合わせはしてくれず、ちょっと無理気味に笑顔を浮かべながら言う。

 

「じゃあ、何をしよっかお姉さま!」

「……そうだな、じゃあやっぱり当初の予定通り、本を読もうか」

「うん、うん! それじゃああかり、この本を読んで欲しいな!」

 

 彼女が持ってきた本を手に取りながら、私は微笑む。

 

 あかりちゃんと今、一緒にいられる時間は少ないけど、それまでは彼女が満足するまで一緒にいて上げよう。




なんでコメディ作品な筈なのに黒男君曇ってばっかりなのかって?

そりゃあまあ、作者の性癖だからとしか言いようがないっす。


そして黒男君をより曇らせる為には、登場人物をどのような感じにすれば良いのか。
……考えるまでもないですね、はい。

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