寝取られエロゲ世界にTS転生したら幼馴染が竿役間男だった件について   作:カラスバ

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獣が鳴く頃

 雛木歩夢の回復は人並み外れたものだった。

 そもそもとして骨折自体が綺麗なものだったのですぐにくっついたというのもあったが、筋肉の衰えもほとんどなく、その為すぐに松葉杖をついて歩けるようになっていた。

 この調子ではすぐにそれも必要がなくなるだろう。

 そして、だから病院にいる必要がなくなってしまったのは間違いなかった。

 

「少しだけお別れになるのは、正直寂しいね」

 

 歩夢はどうやら再びどこかで会えるようになる事を信じてやまない様子だった。

 確信しているようにも見えて、その自信は一体どこからやって来るのだろうとあかりは不思議に思って仕方がなかった。

 とはいえ、彼女のそういうところを一々突っ込んでいたらキリがない。

 あかりは曖昧な笑みを浮かべながら、「そうだねお姉さま」と相槌を打つのだった。

 

 とはいえ、あかりもあかりで体調は良好だった。

 今では点滴も不要で少しなら病院の中庭に出る事も許されている。

 だから……と言う訳ではないが、今日、彼女は一人で中庭をとぼとぼと歩いて時間を潰していたのだった。

 今までは看護婦の人と一緒にいる事が条件だったが、今日はこっそり抜け出している。

 多分、いや、絶対この後怒られる。

 もしかしたら病院では混乱が起きているかもしれない。

 そのような想像してもなお、あかりは病院に戻ろうとは思わなかった。

 

 考えるのは、歩夢の事。

 そしてこれからの事。

 歩夢はまた会えると信じているみたいだが、しかしあかりはそう楽観的には考えられない。

 どうしようもない程後ろ向きで、ネガティブで、なにより悲観的だった。

 だからきっともう彼女とは会えないと思っているし、その事を考える度に心が重たくなっていく。

 そして、そうすればそうするほどに頭を締めていくのはあの男の子。

 

(毒島、黒男)

 

 歩夢曰く、彼女の幼馴染。

 歩夢と一緒にいる事を許されている存在。

 どこか自分と似ているところがある男。

 

 

 そして、彼女がそんな事を考えていたから、なのだろうか?

 いや、そんな事はないだろうとあかりはすぐに否定する。

 この世界は何時だって予定通りに進行する。

 だからこれはきっと――あくまで予定調和なのだろう。

 

 病院の中庭にあるベンチの上に、毒島黒男が座っているのを目撃したのは。

 

 ……声を掛ける理由はない。

 そもそも正直言って、あかりは彼の事を嫌っている。

 だから本来ならば無視するべきだった。

 だがしかし、彼女はどういう訳か黒男に接近して声を掛ける。

 

「……なに、しているんですか」

 

 あかりの問いを聞き、そこでようやく彼女の存在に気付いた黒男は目を見開く。

 

「お前は」

 

 どうやら名前を思い出せないらしい。

 お前の事なんかどうでも良いと言われているようで、少しイラっと来る。

 

「あかりです。聖園あかり」

「ああ、歩夢の友達の」

「それで、何をしているんですか貴方は」

「それは――」

 

 彼は瞳を動揺で揺らす。

 

「――なんでもねえよ」

「お姉さまに会いに来たのですか?」

「……」

「会いに行けばいいのに、勇気がないんですか?」

 

 自然と言葉に棘が出てしまう。

 そしてその挑発的な言葉に黒男はどうやらむっとしたらしい。

 

「お前には何も関係ないだろ」

「そうですね。だから、こうして無神経に言えるんです」

「そう言うお前こそ、歩夢と何かしてればいいんじゃないか? そっちの方がずっと有意義な筈だと思うけど」

「それ、は」

 

 思わず黙ってしまうあかりの姿を見、黒男は何を思ったのかは分からないが、ともかく「ごめん」と頭を下げる。

 

「なんで謝るんですか。貴方には関係がないでしょう、黒男さん」

「いつも一緒にいるのに今日はそうじゃないって事は、何かあったんじゃないか?」

「ないですよ、そんなの。貴方がそんな風にお姉さまと一緒にいなくても大丈夫なように、私だってお姉さまと一緒にいなくても、大丈夫なんです……!」

「……別に、あいつと一緒にいなくても大丈夫って訳じゃねーよ」

 

 イライラする。

 いらいらする。

 なんでこの人の言葉を聞くたびにこう、心が掻き乱されるのだろう。

 ああ、そうだ。

 自分は、この人が羨ましいんだ。

 何もかも自分が欲しいものを持っているのに、それをすべて無駄にしている。

 それが分かってしまうから、腹立たしいんだ。

 

「私は、黒男さん――貴方の事が、嫌いです」

 

 だから、ついその思いを吐露してしまう。

 

「お姉さまとこれからも一緒にいられるから、そんな風にここにいられて。そんな風に感傷に浸っていられる、貴方は、ズルい……!」

「おい、お前――」

「貴方は、ズルいです……っ!」

 

 我慢、出来なかった。

 ――そして気づけばあかりはその場から立ち去っていた。

 動き慣れない足を精一杯に動かし、走る。

 走る。

 ……走る。

 

 そして、病院内にある木々が生い茂り涼しげな風が通り抜ける場所に辿り着いたところで、ようやく立ち止まる。

 急に動いた事で気持ち悪くなった。

 だけどあの場所にいたくなかった。

 羨ましくて妬ましくて、仕方がなかった。

 だから――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 がさり。

 

「……ぇ」

 

 最初に聞こえたのは枝葉の擦れる音だった。

 風で揺れた音なのかと思い、それでも条件反射的に音のした方を見る。

 

 

「……え」

 

 そこにいたのは、()()()()だった。

 真っ黒な獅子のようなボディ。

 しかし頭部はどう見ても山羊のそれ。

 そして背中には真っ白な羽根が生えていて。

 そして尻尾に当たる場所には蛇が生えていた。

 

 脈略のない、どうしてこんないきなり。

 突然の出来事に言葉を失い、呆然自失となるあかり。

 ――しかし、そこで彼女が正気を保てていたとしても、結局結果は同じだっただろう。

 

 即ち、すべては予定調和に進行する。

 

 シュッ……!

 

 その獣に生えた蛇が、槍の刺突かと思ってしまうほどの勢いであかりへと迫る。

 ……そして、その蛇の大口が「がぱり」と開き、あかりの太ももに勢いよく噛みつく。

 

「……ぇへ?」

 

 最初に感じたのは微かな痛み。

 

 ……次の瞬間、彼女は立っている事すら儘ならなくなる。

 

「あ、ぁああ゛あ゛あ゛お゛お゛お゛お゛ッ!」

 

 痛い、痛い、痛い、痛い。

 地面に倒れ伏しのたうち回る。 

 そうしている間にも痛みは増し――そしてある一定のところで突然、痛みが消えた。

 代わりに彼女の身体を襲ったのは――脳みそを掻き乱すほどの()()()()()()

 彼女がもし成熟していたなら、もしかしたらそれが『快楽』であると認識していたかもしれない。

 しかし、人間にとって知らない感覚というのはすべて毒である。

 ビクビクと身体を痙攣させたあかりは地面の上でのたうち回る。

 それを黙って見下ろす獣は――舌なめずりをした。

 

 ちょろ、ろろろろ……

 

 あかりの股間から小水が流れる。

 身体中が弛緩し、溜まっていた水分が流れ出てしまった。

 べろっと飛び出た舌からはとろとろと唾液が零れ、鼻からは鼻水が噴き出ている。

 雫のような涙を流しながら、朦朧とする意識の中あかりは思考する。

 

(これは、罰なの……?)

 

 夢を見てしまった罰。

 ……歩夢と一緒に生きていく、そんな取り留めのない夢を見てしまったから。

 だから神様が怒ったの?

 なんで? 

 私、悪い事をしちゃったの?

 

 しかしその疑問を誰も答えてくれない。

 ただ、罰は粛々と執行される。

 獣がその鋭き爪で彼女の身体を――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

 

 ――雄叫びが聞こえた。

 

 驚き飛び退く獣の代わりに、そこに現れたのは憎たらしい男の姿だった。

 なんで、どうして。

 ここに、いるの?

 

「りょ、ひ、へ……?」

「そんなの、決まってんだろ……!」

 

 質問になっていないその言葉を聞いて黒男は叫ぶ。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 黒男は足元に落ちていた拳大の石を拾い上げ、構える。

 

「『来いよ、化け物』」

 

 きっと睨みつけるが、しかしその足は震える。

 恐怖を感じて逃げ出したくなるその気持ちを……噛み殺し。

 黒男は啖呵を切る。

 

 

「『来いよ、お前の相手はこの俺だッ』!!!!」

 

 

 

 




作画役「あれ、触手じゃないの?」
執筆役「残念だったな、トリックだよ」



以下、登場した獣のプロフィールです。
物語には関係があまりないので、興味がないなら読まなくて良いです。







バフォメット

創作物に登場する鵺やキメラのような見た目の獣。
屈強な獣のような見た目をしているが、その生殖方法は「寄生」である。

まず最初に蛇のような器官から毒を注入し、『その身体を骨格レベルで整える』。
そうした上で自身の子種を流し込む。


……かつてとある部族の間ではバフォメットは神の使いであると考えられ、定期的に娘を差し出し、子供を産ませていた。
産まれた子供は翼の生えた赤ん坊のような見た目をしていて、その中から『天使』が産まれると信じられていた。
当然その翼に飛翔能力はなく、すべての産まれて来た子は『堕天使』として捨てられた。
それでも彼等は自らを神の国へと連れて行ってくれる『天使』が産まれる事を信じて、そして――
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