寝取られエロゲ世界にTS転生したら幼馴染が竿役間男だった件について 作:カラスバ
入った時と違って黒男は既に着替えを終えて外に出ていた。
相変わらずむすっとした表情をしていて、腕を組みながら壁に寄りかかっている。
とはいえ小学生だからその姿は可愛らしい……と思うのは失礼だろうなこれ。
黒男は黒男なりに何か思う事があったのだろう。
それが何なのかは分からないけど、だけどこのままと言う訳にはいかない。
「その、黒男……?」
私がやってきた事に気が付いた黒男は視線だけをこちらに向けて、それから少し気まずそうに「……おう」と返事を返してくる。
どうやら私に対して何か腹を立てている訳ではないらしい。
その事に少しだけホッとする。
「帰る?」
そして私の短い問いに対して彼は少し逡巡したあと、「ちょっと、来いよ」と歩き始めた。
どうやら場所を変えたいらしい。
「そういう事なら」と私は彼の背中を追いかける。
……決して隣を歩こうとはしない。
なんて言うか私も気まずかったし、それに彼も今はそれをしては欲しくないだろうと思ったから。
そうして私達は無言のまま市民プール内を移動し、それから外へと出た。
もしかして、帰るのだろうか?
しかし黒男は駐輪場がある方向とは真逆の方へと歩き始める。
この方向にあるのは――公園だ。
そして私の予想通り黒男は公園へと足を踏み入れて、それから木陰の下にあるベンチに腰を下ろす。
私はその隣に腰を下ろすが、しかし黒男はそこですっと距離を取って来る。
微妙に傷ついたが、まあ、そういう気分なのだろう。
「……」
「……」
しばしの沈黙。
私は黒男の言葉を待つ。
……多分、時間にしては五分にも満たなかっただろうが、それでもその静寂は永遠に感じられた。
「……あいつ」
そしてようやっと黒男が口を開いたと思ったら、尋ねて来た事と言えば、
「平井直人って奴」
「あー、うん。さっき会った子ね」
もしかして、将来寝取る事になる相手として何か運命的なものを感じた、とか?
「歩夢、どう思ったよ」
「え、私?」
どういった意図の質問だろう、良く分からない。
私の意見を聞きたいのだろうか?
「えーっと、普通に好少年だと思ったけど」
「そうじゃなくてさ!」
一瞬衝動的に叫びかけ、それから黒男は遠慮がちに「カッコ良かったとか、思ったん?」と尋ねてくる。
え、カッコ良かった?
んー、まあ。
「社会的にはカッコ良い部類には入ると思うよ」
「……なんて言うか、歩夢は」
口ごもる黒男。
何か、言い辛い事を言おうとしているらしい。
「何て言うか、その。あれだ」
「あれ?」
「……良い言葉が見つからない」
「ふーむ、少し待ってようか?」
私は黒男の答えを待たずにベンチから立ち上がり、それから近くにあった自動販売機の元へと歩いていく。
500円投入し、スポーツドリンクを二本購入する。
それを持って帰り、彼に手渡しすると、どうやらその時点で言葉が見つかったらしい黒男が口を開く。
「歩夢ってあまり男に興味ないって思ってた」
「んー、まあ。それは」
確かにそうかもしれない。
頷いて肯定する。
そしてここでその話をするという事は、つまりそういう事なのかもしれない。
「平井直人君に私が興味を示してた事が、意外だった?」
「……」
「そかそか」
つまり、いつもと違う様子を見せた事に対して不安を感じたって事かな。
確かに、あんな風に初対面の男に対して名前を聞くのは、普段の私らしからぬ行動だったかもしれない。
「だけど、……いや。確かにこれは、黒男に対しては失礼だったかな。貴方を置いて話をしようとしちゃってた訳だけど」
「そう言う訳じゃ――」
少し黙った後、「――そうかも」と項垂れる黒男。
「ま、確かにね。今日は黒男と一緒に遊ぶ筈だったのに私、我儘言ってばかりだったもんね……もしかして、イヤだった?」
「いつもの事だから、慣れてるよ」
「じゃあ、さ」
私は一つ、彼に提案してみる事にする。
「今日のお詫びにさ。黒男の好きな事、私、可能な限り応えてあげるよ?」
その言葉に対し、黒男はびくりと身体を震わせる。
何かを怯えているようだ。
……怯える要素、あるか?
もしかして、良からぬ事考えてる?
「申し訳ないけど、えっちな事は駄目だかんね。あくまで健全なものオンリーだから」
その言葉を聞いたかどうかは分からないが。
黒男は少ししたあと「じゃあ」と口にし。
それからまた口を開いたり閉じたりしたあと。
ようやっと、その事を私に言ってくる。
「この夏、小学生最後の夏。一杯一緒に二人きりで遊びたい」
「んー?」
「だ、ダメか?」
「いんや」
なんていうか、その。
年相応の子供らしい願いだなって思った。
エロ餓鬼だし、てっきりおっぱい揉みたいとか言ってくるかと思った。
……別にそのくらいなら許しても良い気もしていたけど。
「でも、出来るなら私は家の中で遊びたいな。ゲームしたい」
「……なんつーか、歩夢は変わらないよな」
そう言って笑う黒男の表情はいつも通りだった。
馬鹿っぽくて餓鬼っぽい、そんな何も考えていなさそうな笑顔。
「歩夢と幼馴染で良かった」
「そう?」
「おう、毎日飽きないからな」
「それなら良かった」
私は笑い、黒男も笑う。
それからスポーツドリンクを一緒に飲み、一緒に「あちー」と口にする。
夏の日、夏の昼。
なんだかんだで、今日は黒男と一緒に来て良かったなと思った。