不運な味噌屋は帰りたい   作:ガラクタ山のヌシ

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第11話

「はぁ〜…結構大変だったぁ…」

 

いやぁ〜、自分の小屋も持ててウキウキハッピー♪ってほどじゃあ無いけどまぁ、息苦しい学園内での楽しみが増えたのは良いことだ。

 

「にしても…研究会って思ってたより色々あるなぁ…」

 

気分転換にと思って散策しようと通りがかった廊下の壁いっぱいに張り出されている各研究会やゼミのメンバー募集の張り紙を見てなんとなしにそう思う。

いったいいくつあるんだろうか?

いやまぁ、わざわざ数えるのはめんどくさいからしないけどもさ…。

うん?向こうに何やら人だかりが…。

 

「もうお終いだぁぁぁ!!」

「落ち着け!!まだ終わったわけじゃあ…」

「チクショウ!!なんだってオレ達なんだよ…」

 

うん?

何やら向こうがざわついているな。

編入試験の時みたく、退学処分になった生徒が暴れてるとか?

 

「ちょっと離れておこう…」

 

触らぬ神に祟りなし。

関わり合いになってトラブルに巻き込まれたら溜まったもんじゃあない。

わたしとしては自己保身に走らせてもらおう。

 

「あら?貴女、入学式の時の…」

 

ふぇ?

 

いきなり声をかけられて、何事かとくるりと振り返ると、そこにはあの時の親切な人が。

隣には何やらお付きの人っぽい生徒もいる。

やっぱ金持ちは身の回りのお世話をしてもらえるんだろうか。羨ましい。

 

「あ、どうも…」

 

流石に無視するわけにもいかず、ペコリと頭を下げる。

え?作法?そんなモン庶民がわかるわけねぇでしょ。

 

「その後は大丈夫だったかしら?まだ顔色が悪いようだけれど…」

「えりな様?この者に何か…」

「ええ、入学式の時に足元がふらついていたから…」

 

親切だなぁ…。

こういうのをノブレスなんとかって言うんだろうか…。

 

「む?お前は薙切えりな!!」

 

うん?もしかしてさっきの騒いでた人達?

何やら親切な人の空気も変わったような…。

っていうかよく分かるな。

 

「お前が我らがちゃん研の部室を取り上げようと言う噂は真か!?」

 

高圧的に質問を投げかけられるも、えりなさんとやらは毅然とした態度でいる。

 

「ああ、話が早くて助かります。期日は追って説明致しますのでそれまでに退去の準備を…」

「そうか…ならば、食戟だぁぁ!!」

 

その言葉…いや、叫びに周囲に集まっていた野次馬連中が俄かに騒ぎ出した。

 

「オイオイ…豪田林のヤツ、『食の魔王』の一族に食戟を挑む気かぁ?」

「まして相手は神の舌…勝てるかどうか…」

「だが、全く希望がないわけじゃあ無い以上、挑むのもまた選択肢のひとつだろう」

「珍しいなぁ〜!!絶対見に行くよオレ!!」

 

周囲が騒ぎ立てる中でも、優しい人…薙切えりなさんは「はぁ…」と一息。

 

「いいでしょう。この学園に通う以上、食戟は生徒の権利です。ただし、私が勝ったらあそこは私専用の調理棟にさせていただきます。そもそもちゃんこ鍋研究会はここ最近結果も残せていないようですし、古いと言うだけであぐらをかかれていても不愉快なだけです」

 

うわぁ…伝統を大事にする人間に言ってはいけないことを…。

毎年毎年新しい発展や発見があるわけがないでしょうに。

むしろ、一見地味で地道な日々の積み重ねが大樹の年輪のように少しずつ少しずつ伝統になっていくわけで…。

そう言う意味じゃあ、彼女の観点はどこかズレてる?もしくはわかった上で挑発として言ってるのか?

って言うか、もしかしてこの人…優しくない人?

そういやあ学園総帥の孫娘って聞いたし、小さな頃から常に結果を出すことばかり求められてきたのか、もしくは…。

 

「オイ!!そこの!!」

「はぇ?わたしですか?」

 

いきなり声をかけられたぁ!?

 

「お前、入学式の時、実家が味噌蔵だとか言っていたらしいな?」

 

チクショー!!

ガッチガチに緊張してたとは言え、何であの時あんなこと言ったんだわたし!!

オーマイガッ!!

 

「ちょっと、彼女は関係ないのでは?」

 

庇ってくれてるのか優しい人ぉぉ…。

 

「勘違いをするな。ソイツの実家の味噌とやらに興味があると言うだけだ」

「は、はぁ…一応サンプルは持ち歩いてますが…」

 

わたしは縮こまりつつも恐る恐るそう返す。

まぁ、実家の味噌に興味を持ってもらえたのは素直に嬉しいけども…。

でも、とっさのことだったとは言え、あんなこというんじゃあ無かったかな…。

いやでも、別に悪いことってわけでも無いし…。

 

「でも、何に使うんです?」

 

そんなこんな、教室に移動したわたしは机の上にサンプルをカバンから出しつつ、ちゃん研の人に質問を投げかける。机が廊下側でよかった。

ちなみに薙切さんとはあのあと別れた。

 

「決まっているだろう」

「へ?」

 

決まってる?何が?

 

「もしその味噌が素晴らしいものならば、この女に一泡吹かせられるかもしれんからな。今は少しでも勝利へのピースが多いに越したことはない」

「え」

 

あれ?もしかしてこれ…

 

わたし、巻き込まれてる?

 

 

「か、帰りたい…」

 

そのわたしのぼやきは宙に消え入るばかりだった。




齟齬があったら申し訳ない…。

え?時系列?
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