不運な味噌屋は帰りたい   作:ガラクタ山のヌシ

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できましてございますー。


第14話

寮に帰ってから田所ちゃんに聞いた話だが、わたしがちゃん研のお手伝いをしてたちょっと後くらいに、同じ極星寮の幸平くんは丼研の存続をかけた食戟で鮮やかに勝利を飾っていたらしい。

いやぁ〜すごいなぁ〜。

嫌味とか皮肉抜きにして純粋に尊敬できるわ。

しかも相手はあのえりなちゃんの傘下の料理人なんでしょ?

いやもう…わたしなんかとは格が違うよね!!

な〜んて…自分で思っててもただただ悲しくなってくるわけで…。

 

「くぅっ…胃が…」

 

同年代との比較は、競争心を促進するうえで必要らしいけど…わたしみたいなタイプには正直キツい。

一刻も早く帰りたい…でも入院中の母さんに必要以上に心配かけるわけにもいかないんだよなぁ…。

 

「それに、あの手紙の差出人の本意を聞かないことには帰ろうにも帰れないしなぁ…」

 

しかも面倒なことに、もうすぐ宿泊研修なるものがあるらしい。

朝食の時におばあちゃんがそんなこと言ってたし。

 

なんでも、例年だと毎日のように強制送還&退学を喰らう生徒が多数出て来て、最終日にはだいたい初日の半分くらいは退学になってるとかなってないとか…。

いやまぁ、厳しい校風なのはなんとなぁ〜く分かってたさ。

でもここまでとは…。

 

「それだけ上昇志向が大事ってことなんかねぇ…」

 

それとも世界に羽ばたく日本人料理人を輩出する名門遠月からすればこのくらい普通なんだろうか?

…普通ってなんだっけ?

 

「え〜っと、今日の授業で持ってく味噌はこんなもんでいいかなぁ…」

 

取り敢えず、悪目立ちはしたくない。

でないといつ退学させられるか分からないストレスに加え、周囲からのよくない感情まで向けられてしまう。

幸い手作りの調味料や材料の使用は学園側も了承してるし問題はない…と思う。

空気になるんだわたし。

出る杭は打たれるんだ…。

打たれるのは痛いんだ…。

大丈夫、いつものことだよね。

 

「とにかく今は、授業を落とさないことを考えないと…」

 

そう呟いて、自室のドアノブをひねり…。

 

「お、スゲー量の味噌だなぁ…ちょっと見せてくんね?」

 

……うわぁ。部屋を出たところで会いたくない人にエンカウントしてしまった…。

ミスター陽キャ、幸平創真。

田所ちゃんの所感ではいい人…らしいが。

ただ、今のわたしには劇薬が過ぎる。

ずっと日の当たらない地下暮らしのモグラさんに、太陽の光は毒なんだよ…。

ただでさえわたしは望んでここにきたわけじゃあないのにさ。

入学早々大活躍されてる姿見せられたらさぁ…。

 

泣きたくなるよね。

 

頼むからそっとしといてくれない?

 

アハハハハハ……はぁ。

 

…帰りたい。

 




次回から合宿編、かなぁ。
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