不運な味噌屋は帰りたい   作:ガラクタ山のヌシ

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お久しぶりです。


第19話

ねむいだるいめんどくさい。

ついさっきまで放送で大宴会場に集まれって言われたから集まってたのはいいけど…。

 

「なんだよ朝食作りって〜〜……」

 

わたしはぼふぅっ…と自室のベッドに倒れこみながら愚痴をこぼす。

テーブルの上のコップから水がちょっとこぼれた気がしたが、わたしは悪くない。

ステージ上の堂島先輩のドヤ顔が今でも思い出せるわぁ〜〜……。

ブン殴りてぇ…いやまぁ無理なんだけどもさー。

朝食はホテルの顔だぁ?知らねぇーよそんなこと。

こっちゃ別に料理人志望でもなんでもねーんですよ〜〜。

ただでさえ五十から八十食に増えたノルマに疲れてんだよこっちはぁ〜…。

田所ちゃんも見たとこクタクタだったみたいだから甘えるわけにもいかなかったし…。

って言うか、田所ちゃんクビになりそうだった〜みたいな話を聞くけどまさかね〜。

しかもそれを賭けて幸平くんが先輩に食戟を挑んだって…まぁあくまで噂だよねー。

 

はぁ〜…忙しさからかいつになく心が荒む。

帰りたい。出来ることなら今すぐ実家に帰りたい。

でも出来ないからチクショウ!!

この逡巡も遠月来てから何度目なんだろ。

来年にはわたしの胃に穴が空いてんじゃあないか?

しかも先輩曰く、驚きのある一品を作れって?

制限時間は明日の朝六時で?それまでには試食できるようにって?なんぞそれ?どんだけノルマガッチガチなんですかね。

メイン食材の卵…どーしよっかなぁ〜…。

厨房は今間違いなくごった返してるだろうし…。

あぁ〜…しかもビュッフェ形式?だから、ひと工夫必要?みたいなことも言ってたようなー。

 

卵かぁ〜…………。

ふと、遠い日の思い出にふけっちゃう。

卵と言えば、まだ母さんが入院する前、よく行ってた近所のお店のおでんがホントに美味しかった。

 

「お母さん料理もできなくってごめんね?お袋の味って憧れだったのだけど…」

 

そんなふうに、困ったような笑顔をこっちに向けて来て…。

いやまぁ、体弱いんだから仕方がないんだけどもさ。

問題は未だに帰ってこようともしないどっかの誰かさんなわけで…。

 

「そういや、最近おでんの卵とか食べてないよなぁ〜〜〜……」

 

かと言って、おでん種から色々作って出汁で煮てってするとけっこう手間なんだよなぁこれが。

 

うん?おでん…たまご…味噌…。

 

「これだぁ!!」

 

わたしは天啓を得たかのようにガバリと起き上がる。

ありがとう母さん。

お店の人の見よう見まねだけども、何とかなる…といいなぁ…。

あとは驚きって点だけど…これはまぁ、アレをアレして…。

もうこうなりゃ、半ばヤケだよね!!

わたしは椅子にかけてあった割烹着をふんづかみ、厨房へと向かったのだった。

もうどうにでもな〜れ!!




次の更新は、たぶんすぐかなぁ…たぶん…。

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