不運な味噌屋は帰りたい   作:ガラクタ山のヌシ

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続きできました。


第2話

「デカい…」

 

それが遠月学園に辿り着いてわたしが最初に言った言葉だ。

建物が、というよりスケールが違う。

見回すといくつもの山に、それぞれの専門だろう建物がわらわらと生えている。こわい。

郵送されたパンフレットを片手に、編入試験会場までどうにかこうにかやって来た。

周囲には何やら荷物持ちらしき人間を連れた育ちの良さそうな連中…まぁ、言うなれば坊ちゃん嬢ちゃんとおぼしき連中がたくさんいる。

…正直言って場違い感がすごい。

文字通り住む世界が違うのかなぁ…なんて呑気なことを考える。まぁ、現実逃避なんだけども。

 

「低俗な庶民がボクと並んで座るなぁ!!」

「うぉっ!?なんだよ急に!?」

 

気晴らしに休憩でもしようと思ってたら、何やらたいそうプライドの高そうな声が聞こえて来る。

 

「…ん?」

 

気になって声の聞こえた方に向かってみると、赤髪の少年が、ベンチに座る坊ちゃんらしき人物に怒られていた。

なんか知らんうちに失礼な事でもしたのかね。

金持ち連中のルールってよーわからんし。

 

しばらく上から目線のお説教を垂れて満足したのかふんっ、と怒りに鼻を鳴らしてどこかに向かう坊ちゃん。

…やっぱ、どこでも人間ってのは変わらんのかね。

まだ時間も早いし会場前のどこか他のベンチにでも移動したんだろう。

もう一人の彼を見ると、何やら呆然としていた。無理もない。

ああ、可哀想に。そう思って少し話しかけようと近づいたわたしだが…。

 

「なんとか編入試験で結果をださねぇと!!」

 

…もう気持ちを切り替えてた。元々ポジティブなタチなのか、それともただ呑気なだけなのか…。

見たところ、そこまでこたえては無さそうだ。

そのメンタリティは腹がたつほど羨ましい。

 

「ん?なぁ、アンタ顔色悪いけど大丈夫か?」

 

キョロキョロと周囲を見回す。

しかし、話しかけられたのだろう人物は彼の視線の先にはいない。

…ひとりを除いて。

 

「え?わたし…?」

「そーそー」

 

わたしに話しかけるな。

お前ともどもヘンな目で見られるだろうが。

ああ胃が痛い。

 

「見たとこ、アンタも編入試験受けるんだろ?」

「はぁ…まぁ…」

 

なんで初対面でここまで話せるんだよ。

あぁ。アレか。周りの話聞くに食堂やってたんだっけ?接客業だもんなぁ…。

そりゃあ人慣れもしてるかぁ…チクショウ。

 

「オレはオヤジに行けって言われてさぁ〜、アンタは?」

「いや…その…な、なりゆきで…」

「なぁ〜んだ!!似たようなモンじゃん!!」

 

全っっ然似とらんわ!!

正直困惑しかしてませぇ〜ん!!

 

「そんじゃあ、オレ会場こっちだから!!お互い頑張ろうなぁ〜!!」

 

ほぼ一方的に喋るだけ喋って彼は去って行った。

良くも悪くも嵐のような男だったなぁ。えぇ〜っと…。

 

…あれ?お互い自己紹介してなくない?

 

まぁいっか。

 

「………」

 

ピラリ…と、同封されていた手紙に目を通す。

 

『キミの父親について、伝えなければならないことがある』

 

じゃあ、そのまんま手紙に書いとけよ。気が利かないな。

 

極め付けはこれだ。

 

『キミの入学、心待ちにしている』

 

「なんで受かる前提なのよ…」

 

ま、言い方は悪いが、最悪落ちたり、途中で退学になったってわたしや味噌蔵に直接ダメージがある訳でも無い。

っていうか、父が退学になった時に落ちる分落ちたろ。知らんけど。

そもそもこっちは別にお願いした立場って訳でも無い。

元々料理人を目指していた訳でもなし。

ライバル…ともいえないだろうが…まぁ、なあなあでやってるような奴がひとりでも減った方が、真剣にやってる人らのためにもなるだろう。

 

「はは…帰りたい…」

 

ただ…。

 

「ホント…デカいなぁ…」

 

何となしに、聳え立つ建造物群を見上げてつぶやく。

 

父の母校の風景を見る機会が得られたのだけは、大きかった…とは思う。

 

ことにした。

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