ああ〜、胃が痛い…。
帰りたい。消え去りたい。
「母さぁ〜ん…」
入院中の母に助けを求めたくなるレベルでやばい。
なんならちょっと泣いてる…。
それと言うのも、わたしは今…。
試験を受けた料理学校の入学式の真っ只中だからだ。
え?なんで?
そりゃあ、全力でやってダメでしたって言い訳のためにベストは尽くしたけどもさぁ〜…。
なぁ〜んでわたしみたいなズブの素人が通るんですかねぇ〜?
忖度?ワイロ?
それにしちゃあ全っっ然身に覚えないんだけど!?
あの赤髪の彼には再会するなり両手を持って腕をブンブンされるし…。
そんな彼は今、わたしの隣でぬぼへ〜っとしてるし…。
何でそんなに気持ちにゆとりがあるのさ。
わたしなんてテンパってないだけ奇跡なんだけど!?
「続きまして、編入生からあいさつです」
うぇ〜〜!?そんなんあるんかい!?
聞いてない!!わたしは一度も聞いてない!!
そうだ!!隣に座る彼は…。
「う〜っす」
うわぁ〜全く気負ってない。
すごいなぁ〜。
「それでは、編入生くん。あいさつを…」
お姉さんからマイクを受け取るなり、彼は少しだけ考える素振りを見せる。
うんうん。分かる分かる。
こう言う場って何から話せばいいか迷うよねー。
長過ぎてもクドイし、短過ぎても逆に印象に残っちゃうから…。
「幸平創真っす。ぶっちゃけこの学校のことは踏み台としか思ってないんで。まぁ、客の前に出たことも無い奴らに負ける気はしないんで、それとやるからにはテッペン取るんで。まぁ三年間よろしく〜」
って…えぇ〜〜っ!?
何言ってんの!?
何言っちゃってんの!?
わたしたち今完っ全アウェーなんだぞ!?
やべーよ。この空気やべーよ。
お通夜ってレベルじゃあねぇよ。
針の筵そのものだよ。
どうすんのコレ!?
あっ、司会のお姉さんがどうしたもんかとこっちを見てオロオロしてる。
まあそうだよねぇ〜。わたしだって出て行きにくいもの。
彼がブーイングを受ける分には自業自得だけど、わたし全く関係ないもの。
そして彼は言いたいこと言ったからかスタスタと反対側の舞台袖に行っちゃうし!!
行くの!?行けるの!?
恐る恐るステージに出てマイクを受け取り、ある程度静かになった頃合いを見計らって喋り出す。
もういったれ!!
「え、ぇ〜っと…ウチ…味噌蔵やってて…その…」
「………」
無反応。き、気まずい…。
「ひ、贔屓にしてもらえればいいかなぁ〜…みたいな…」
…………………無反応。
ど、どうしよう。ある意味ブーイングよりキツイかもしれない…。
「い、以上…ですっ…」
逃げるように彼の向かった方の舞台袖に向かうと…。
「なんだよー美味かったんなら正直にそういえば…」
「だから!!あれは何かの手違いで…って、あら?貴女、顔色が悪いけれど、大丈夫?」
あぁ〜…
「帰りたい…」
ふらぁ〜
「ちょっと!?何があったの!?だ、大丈夫かしら!?」
なんか世間知らずっぽい子がワタワタしてた。
正直ちょっとだけ気持ちが和んだ。
ホームシック炸裂!!