不運な味噌屋は帰りたい   作:ガラクタ山のヌシ

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第5話

はぁ〜…。

 

これでわたしも晴れて…と言って良いかは分からないけど高校生かぁ…。

実家や入院中の母にそのことを連絡したら、何故だか母さんも職人のみんなも嬉しそうにしてたモンだから、辞めようにも辞められないし…。

特にゲンさんは…。

 

「お嬢!!この源三郎!!信じておりましたとも!!」

 

だなんて、電話越しに涙声で言われちゃあねぇ…。

はは…笑えねぇ。

 

それにしても…。

かさ…とカバンから入学式の終わりに渡された紙を見る。

そこに書かれていたのは…。

 

「入寮腕試し…ねぇ…」

 

文字通り、入寮を許可出来るか否かを決定する腕試し。

唯一の救いは何度でも挑めるってとこか。

 

決まりとして、持ち込む食材は基本自由。

寮の担当職員に合格をもらえれば認められる…か。

ほとんど個人の好みに左右されるんじゃあないかこれ?

いやまぁ…名門校の人だし、かなり舌は肥えてるのかな…。

とにかく、最低限の腕があるかは職員自らが審査するってことか。

わたしは別に食事なんて最悪カップ麺でもいい人だから、世の料理人達のこだわりってのはよー分からん。

そりゃあ…味噌に関しちゃあど素人よりは知識もあるんだろうけど、それだって一般人に毛が生えた程度…だと思うし…。

って言うか味噌以外に味の違いなんて正直そんなに分からんし。

 

はは…。我がことながらしょーもな。

 

「なんでこんなめんどくさいことを…」

 

あぁ〜…胃が痛い…。

しんどい、帰りたい。

でも帰れない。

ここは地獄か。

地獄だった。

 

そもそもの話、わたしはただ、実家の味噌蔵で伝統の味を守るだけでよかったんだ。

未だに帰る気配すらない父に対しては、思うところがないわけじゃあ無いけど、それでもあそこはわたしの産まれた場所で、育った環境で、それはこれからも変わらない。

誇りだなんてそんな高潔なモンなんかじゃあ断じて無いけど、それでもあそこは…嫌いになれなかった。

思い出なんて、センチメンタルに浸れるほど人生重ねてなんていないけども。

料理は嫌いだ。まして、赤の他人の食べるものをわざわざ作るなんて冗談じゃあ無い。

 

でもなぁ〜…。

 

「持ってきた材料は重いし…そのせいで寮に着くのは相当遅くなりそうだし…」

 

最悪野宿か?

いやでもなぁ〜。

寝袋とか持って来てないとキツイよなぁ〜。

 

坂道は地味にキツイし、この学園の敷地は恐ろしく広いし…。

 

「わたしなんぞに期待なんかすんなよなぁ〜…」

 

よっ…と荷物の入った鞄を背負い直す。

 

……重い。

 

ちょっと持って来過ぎたか?

 

「はぁ〜…」

 

テンション上がってんのか?わたし…。

 

いや、無いか。

 

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