人生、誰でも死にかけるなんてことは1回くらいはあるんじゃないだろうか?
え?ない?
あははは。
うるせぇ、聞け。
まあ死にかけることはきっとあるはずだ。
例えばブランコから飛び降りようとして失敗した時、エスカレーターでずっこけた時、間違えて洗剤を飲み込んじまった時。
すっげぇ苦しくて自分死ぬんじゃねぇかな、なんて思うことあるだろう。
でも人間って言うのは結構頑丈にできてて、それくらいなら死なない。
ただやたらと痛かったり苦しかったりするだけだ。
そういうこと自体キツくて死にたくなるってこともあるだろうが、生きてるだけ御の字ってもんだと俺は思ってる。
さて、なんで俺がこんな話をしていると思う?
それはな、
「あぁぁぁぁああああ!!!!!!!」
俺のすぐ後ろでは風切り音。それも分厚い板が通り過ぎるような音。
後ろを振り向いてる暇はない。
全力疾走で音源から離れなければならない。
そう、俺は現在進行形で襲われているのだ。
「ちくしょぉぉぉぉまたかよぉぉぉぉ!!!!」
そしてこれは1度ではない。
俺は今まで何度も何度もこういう現場に居合わせては襲われたり、巻き込まれては死にかける。
天性の
それが俺、
で、フェイドアウト出来ればいいんだが、そうもいかない。
「逃げんなこらぁ!!!!逃げなかったら楽に殺してあげるから!!!!」
「殺されるってわかって逃げない奴がいるかぁ!!!」
できるだけ狭い路地を潜り抜け、追跡者に武器を振らせないようにする。
あれの獲物はデカい。やたらめったらに振り回せないだろう。
「くっそちょこまかと…!」
後ろから悔しそうな声が聞こえてくる。
走る走る、息が上がってくるのを堪えて走り続け、目的地へとたどり着く。
目の前にはフェンスと崖、眼下には木々と街が広がっている。
パッと見ここから飛び降りれば無事で済まないと思われるだろう。
だが俺は知っている。
俺しか知らない逃走経路。
後ろを振り返ると大剣を肩に担いだ女がそこにはいた。
いわゆるゴスロリチックな服を着て、普通に見ればコスプレかなんかに思われるだろう。
女はこちらに大剣の切っ先を向ける。
「観念しなさい、そっから先は行き止まりよ。大人しく私に殺されなさい」
「おいおい、だから言ってんだろ。別にあんたが何してようと俺は関係ない!俺はたまたまそこ通りがかっただけだからあんたのやった事をどっかにチクるつもりは無いって!」
「通りがかったからこそ信じられないのよ。会ったばかりの人間の言ってること素直に信じる方が馬鹿だわ」
だったら俺に見られるようなヘマをするなよ…!
とは思うがこの手の輩には言ったって通用しない。
ならば仕方ない、逃げるしかないのだ。
「そうは言っても俺だって死にたくないんでね…!意地でも逃げさせてもらう」
フェンスに腰掛けて後ろに体重をかける。
そうすると当たり前のように重力が働き、俺の体は崖の下へと引き込まれる。
「ちょ、ちょっと!」
女の動揺する声が聞こえてくるがもう遅い。
俺はそのままゴロゴロと崖を転がり落ち、あっという間に木々の中へと姿を眩ませた。
そしてしばらくゴロゴロと転がっていると、アスファルトの地面へと放り出される。
「よっと!」
上手く着地して体に着いた土を払う。
そして周囲を見渡してため息を1つ。
どうやら巻けたらしい。
ホッと一安心して俺はその場に座り込んだ。
この逃走経路はよく使っている。
さっきも言ったように、俺はこういうことは1度ではなく何度も経験している。そしてその度に俺はこの経路にお世話になっているわけだ。
「あー、ツイてねぇなぁ」
そもそもツイている事自体稀なのだけれど。
これは俺がなんやかんやとトラブルに巻き込まれ、そっから生き延びる話。
せめて、笑ってくれたら幸いだ。