皇国の守護銃~零~   作:キノコ飼育委員

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お久しぶりでございます。


トゴレス要塞撤退戦:弐

「あー終わった終わったぁ。お仕事おーわりっ」

 

 戦場真っただ中の戦争中、それも攻められている要塞の屋上だというのに、気だるげな声とともにごろりと寝転がるサプレッサー。

 マズルは『グングナール』のスコープを覗きながら、片目でそれを睨む。

 

 

 次の瞬間、どこか近場でド派手な爆発音が連続し、轟炎の黒煙が彼らの所まで巻き上がった。

 

 

 起き上がって確認してみれば、要塞後方で黒煙が上がっている。

 ぴしゃりと額を叩きながら、サプレッサーは面白そうに唸る。

 

「おおぅ……後方に回り込まれたのか?いや、朱雀お得意の浸透戦術か。てことは候補生の部隊だな?第一砲兵陣地がお祭り騒ぎだぜ」

 

 弾薬集積所に火が入ったのか、砲弾の爆裂音が何度も何度も聞こえてくる。

 

「あーあーもったいねぇなぁ。あの花火いったいいくらすんだか」

 

 砲兵本隊は分散してもっと後方なのが幸いか、とサプレッサーが呟いていると、ちょんちょんと肩が叩かれる。

 

「……サプレッサー」

 

「ん?」

 

「あそこ」

 

「んー?お!なーっはっはっは!お早いお着きで!」

 

マズルが示す先、『トゴレス要塞』の足元に、朱いマントの候補生の姿があった。

 

「となるといよいよ大詰めだな。ターゲットは?」

 

「撃破済み」

 

「ノルマ」

 

「達成」

 

「撤退状況」

 

「ほぼ完了」

 

「パーフェクト!んじゃやっぱやることねぇや。時間が来るまで寝とこうぜ」

 

「……いいの?」

 

「いーのいーの!適当にすりゃいいのさ。(おまえら)みたいにのんびりすりゃいいのさ。くっくっ」

 

「……お前は適当が過ぎる」

 

「これくらいが調度いいのさ、こんな世界じゃな」

 

 そう投げやりに答えると、サプレッサーはごろりと寝転び目を瞑る。

 彼の耳には、戦火の歌が響いていた。

 彼の目には―――

 

「おっとヤバい」

 

 突然跳ね起きた彼は、傍らの角張った銃―――『グングナール』に取りつく。

 スコープを覗くとほぼ同時、引き金が引かれた。

 

 瞬時に充填された電流が飛沫を上げ、磁力によって加速した弾丸が発射される。

 さらに絶え間なく引き金が引かれ、計5発の電磁加速弾が寸分違わず全く同じコースを飛ぶ。

 

 そして弾丸は、遥か彼方、彼らへと迫っていた朱雀飛空艇の魔導砲弾を撃ち落としていた。

 流れ弾だったのか、それ以降は飛んでくる様子はない。

 

「危ねぇ危ねぇ。もうちょっとで当たる所だったぜ」

 

 それを確認し、余裕綽綽の態度でニィと嗤うサプレッサーは再びごろりと転がり目を瞑る。

 

「……」

 

(本当に、いつもこうなら……)

 

 

 ジト目で見られていることも知らず、サプレッサーは大あくびをこぼすのだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 それからしばし。

 トゴレス要塞の結界が()()()起動したり、マズルが傍らの軍人クァールに何かの指示を猫語で下したり。

 そんな中、ぱちりとサプレッサーが目を開く。

 

「っと、早かったな」

 

 彼らの視界の端、何かが煌めいた。

 豆粒ほどだったそれは、どんどん距離を詰めその姿をはっきりさせていく。

 それはロケットエンジンを束ねた特殊高速長距離輸送機。

 トゴレス要塞を掠めるように飛んだそれから()()の影が分離、それぞれの方へ飛び立つ。

 

 サプレッサーはにやりと顔を歪め、傍らの通信機に這いより起動、援軍に通信を取った。

 

「さってさて、ぴぴぴとな。もしもーし!ギアー?」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

『聞こえてっかー?』

 

「……作戦行動中だぞ。任務に関わらない通信は控えてくれ」

 

 第一声から既に私用の通信だと断じている言葉に、身に覚えのありすぎるサプレッサーは笑うしかない。

 

『なっはっは!ちげーよコノヤロー!状況報告、撤退はほぼ完了。殿は『白雷』サマに任せてお前は前進だ』

 

「前進?」

 

『前に出て、敵をぶっ殺すのが「ノア・コマンド」の使命だ。これ以上敵がトゴレスに集まらないように蹴散らせ』

 

「フン、そういう任務なら大歓迎だ」

 

『あと余裕があったら朱雀の飛空艇、1隻喰っといてくれ。奥のヤツだ』

 

「了解。先にそっちを済ます。もう一隻は?」

 

『こっちで落とす。無理はしなくていいからなー』

 

「フン、誰に言ってるんだ?」

 

 不敵な笑みを浮かべ、ギアは操縦幹を倒す。

 慣れた手つきで操縦席の機器を操り、機体のスロットルを全開にする。

 

「俺の腕とこいつの性能は朱雀を圧倒している。すぐにでも片付けてやるさ」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

トゴレス地方入り口に敷かれた朱雀本陣。

 

武官たちが各部隊からの報告を纏め、作戦地図に反映、新たな指示を飛ばしていく。

 

「第1大隊第5中隊、トゴレス要塞に取り付きました。正門を突破しつつあります」

 

「候補生部隊の回り込みが完了。第2大隊第6中隊と合流し攻勢配置に付きました」

 

「第3大隊本部、応答せよ。繰り返す応答せよ……駄目だ、ノイズばかりで何も聞こえない」

 

「飛空艇『アヤナミ』、トゴレス要塞への制圧攻撃を開始」

 

「現時点では『空中戦艦』並びに『飛行型』は確認されていません。小型の飛空艇はいくらか飛んでいますが撤退支援に専念している模様」

 

「撤退した敵の追撃は必要ない。トゴレスは朱雀最強の要塞だ。それを自分から明け渡したがっているのだ、逃げたいヤツは逃がしていい。それよりも爆弾か何かが仕掛けられていないか注意しろ。こちらの占拠か終わったところをまとめて吹き飛ばす心算かもしれん」

 

 軍令部長の言に、報告していた武官は青ざめた。

 

「ッ!?それはまさか、アルテマ弾のような……?」

 

「かもしれん。だがその可能性は低いだろう」

 

「何故ですか?」

 

 軍令部長は腕を組んでその疑問に答える。

 

「アレを“兵器”と捉えるから戸惑うのだ。アレは“ルシ”だ。爆裂することが使命のな」

 

「ルシ……ですか」

 

「そうだ。ルシの量産はクリスタルを著しく消耗させる。大陸ひとつ消し飛ばす、いや地方を消すだけでもどれだけクリスタルの力を消費するか。そんなものを量産など不可能だ。造れてあと一発、ないしは二発が限度。……まあ、やつらが新たにクリスタルを手にすれば話は変わるだろうが」

 

 軍令部長の分析に、武官たちは安堵しかけたが、『新たなクリスタル』という言葉に再び顔色をなくす。

 

 『玄武クリスタル』。

 それがまさに白虎の手中に収まりそうなのだから。

 

「とにかく、全てはトゴレスを取り返してからだ。第3大隊とはまだ連絡がつかんのか!」

 

「駄目です!機器に異常がないことから何らかの妨害の可能性があります」

 

「―――ジャマー……か?おのれどこまでも忌々しい……少し古い手になるが、伝令を走らせよう。一番近い部隊はどこだ?」

 

「第2大隊指揮下の部隊です」

 

「よし、では第2大隊長トウジマに第3大隊隊長……への連絡を取らせ―――」

 

 と、そこで軍令部長は口を開いたまま固まった。

 

「……どうかしましたか?」

 

 訝しげに武官が尋ねると、軍令部長はみるみる顔を青ざめさせて呟いた。

 

「思い出せん……?!」

 

「は?」

 

「トゴレス攻略に投入している第1師団、その第3大隊長の、それどころかその指揮下にある6個中隊隊長それぞれの顔も名前も思い出せん!?」

 

「た、確かなのですか!?というか、覚えているものなのですか?」

 

「当たり前だ誰が編成してると思っとる!貴様とて担当クラス員の把握はしとるだろう!」

 

「そ、それとこれとは」

 

「ええいうるさい!何だったら後で貴様の経歴を諳じてやるから今は黙れ!とにかく第3大隊の所在を確認せねば!第2大隊本部に連絡を取れ!」

 

「待ってください」

 

 そこへ声をかけたのは0組指揮隊長クラサメだ。

 

「なんだ!?」

 

 苛立ち露わに怒鳴りつける軍令部長に、クラサメは冷静に――いや、一滴の冷や汗を流しつつ指摘した。

 

「現在第1大隊は左回りに、第2大隊は右回りに、そして第3大隊は中央に進軍させていました。そして軍令部長のお言葉が正しければ第3大隊は壊滅した可能性が高い……それはつまり」

 

 言葉が続くにつれ軍令部長の顔にも理解の色が、それも青色が浮かんでいく。

 

「―――トゴレスから『本部(ここ)』まで、まっすぐ通り道ができている?」

 

 突然、その予想を裏付けるかのごとく、あるいは大正解のファンファーレの代わりか、けたたましい警報が指揮所に鳴り響く。

 

「ッ!?巨大なCエネルギー反応が高速でこちらに接近中!」

 

「遅かったか!」

 

「飛空艇『シキシマ』より入電!こちらに接近する飛行型魔導アーマーを発見、迎撃するとのこと!」

 

「ルシではないのだな!?」

 

「ルシ反応はありません!」

 

ルシではなく、しかし膨大なCエネルギーを発する存在。

 

それはつまり、クラスゼロから報告のあった皇国軍の精鋭――――――

 

「『ノア・コマンド』か!」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 飛空艇『シキシマ』、その操舵室では、数人の航空士がそれぞれの担当の報告を上げていた。

 周囲の映像を魔法で投射し、船体各部と魔法で通信。

 それはまさに、魔導の粋を集めた魔導兵器の中枢であった。

 

「よぉし戦闘だ!索敵長!」

 

「周囲に新たな敵影なし。ヤツの一騎駆けです」

 

「動力長!」

 

「魔法陣から各部への魔力供給淀みなし」

 

「結界長!」

 

「安定しています」

 

「攻撃長!」

 

「いつでもどうぞ!」

 

「そして船長である俺!もちろん調子はばっちりだ!よぉしよォしヨーソロー!『シキシマ』隊、出るぞォ!」

 

朱雀中型飛空艇『シキシマ』が迎撃の為に前進を始める。

 

朱雀における航空戦力である魔導飛空艇は、皇国のそれである『空中戦艦』とは似て非なるものである。

『空中戦艦』が『戦力を乗せた空飛ぶ砦』であるのに対し、『飛空艇』は『部隊で運用する空飛ぶ大型魔導兵器』だ。

 朱雀クリスタルの魔力を大型の魔法陣によって増幅、循環させ、個人では不可能な大魔法を安定して起動させる。

 強固な障壁魔法陣、強力な攻撃魔法陣、それらを丸ごと移動させる浮遊魔法陣などなど。

 最近では魔導連射砲という新兵器もロールアウトされつつある。

 しかし現在の本艦が持つ兵装はひとつ。

 

「迎撃だ!魔導砲用意!照準、接近する飛行型魔導アーマー!」

 

「魔導砲用意!照準、飛行型魔導アーマー!」

 

 『シキシマ』の前面に、赤く輝く歯車型魔法陣がふたつ展開される。

 それらは照準を迫り来る飛行型魔導アーマーに合わせるように角度を変えた。

 魔力を純粋な破壊のエネルギー塊として直線状に発射する魔導兵器だ。

 

「撃てェ!」

 

 船長の号令のもと、朱き破壊の砲撃が空を走る。

 が、接近する大型の飛行魔導アーマーは、機体を大きく傾かせ、渦のような抉りこむ軌道でそれを躱した。

 そのまま魔導アーマーは天高くへ急上昇していき、そのまま『シキシマ』の真上から急降下をかけた。

 

「速い!障壁展開、反撃に備えろ!」

 

 攻撃用の魔法陣が消え、その分多くの魔力を回された障壁が青く輝き、船体を覆う。

 

「魔導アーマー、上から来ます!」

 

 さぁ、何が来る?

 『シキシマ』の船長は砲弾が来るか爆弾が来るかと予想をたて―――

 

 その予想はまさかの「体当たり」に粉砕された。

 

 大質量がそのまま激突した振動が操舵室を大きく揺らす。

 

「な、なにぃ!?」

「しょ、障壁が抜かれました!」

 

 そこからさらにもう一度激突音、さらにさらに連続して破壊音と振動が伝わってくる。

 何度も何度も、バキバキべきべきと剥がすような音も。

 

「なんだ!何が起きている!」

「ま、魔導アーマーが下から船体に取りつきましたァ!外壁を剥がしながら暴れてます!」

「陸戦隊!敵を叩き落とせ!各班の予備隊も出動させろ!」

「予備隊は全員甲板に出ろ!敵の好きにさせるな!」

 

 だが―――ガ、クン!と激しい浮遊感が身体を襲う。

 

「なんだ!?まさか―――」

 

 あまりに短時間で状況が急変を遂げ、現実感すら喪失しかける中、さらに最悪の事態が巻き起こった。

 

「動力部大破!浮遊魔方陣が破壊されました!」

 

 『シキシマ』がこの大空から大地へ向かって落下を開始。

 

「くっ!何とか不時着する!総員何かに捕まってろ!」

 

「魔導アーマー、船体から離れました!」

 

『甲板が火の海だァー!手の空いてるヤツは消火に来い!』

 

「ええい置き土産まで!消火は後回しでいい!とにかく何かに掴まれェ!!」

 

 必死に船体をコントロールし、バランスを保ったまま不時着すべく奮闘する船長。

 と、その時だ。

 

 投射されていた空中映像を、紅蓮に燃え盛る炎が横切った。

 それはまさに、朱雀にとっての希望の焔。

 

「あれは…イフリート!イフリートだ!助かった!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 高速で接近する飛行型。

 それは、『ノア09』ギアが操る鋼機『サンダーボルト』であった。

 

『調子に乗っているようだな朱雀ども!!』

 

 『サンダーボルト』の刃のように鋭かった四枚クローは、大きく開いて竜巻のように回転している。

 長大なチェーンブレードも大きく広げられ怪鳥のようだ。

 プロペラクローが空気を掻き込み、翼が風を掴み、ロケットブースターが大気を蹴飛ばす。

 そうして鋼の巨人が空を飛ぶ。

 『コロッサス』ほどの巨体が、悠々と空を飛んでいるのだ!

 

 飛来した魔砲弾を機体を捻るように躱し急上昇。

 そのまま上昇を続け、朱雀飛空艇の真上を取ると―――

 

『物理障壁展開!そォら!』

 

 その全身が銀色に輝き、翼を鋭角に畳み急降下、一直線に突っ込んだ。

 チェーンブレードの金切り声が天空からまっ逆さまに落ちていき、朱雀飛空艇の胴体を引き裂いていく。

 

 上から下へ斬撃を叩き込んだ『サンダーボルト』は再び急上昇、飛空艇の船体に真下から『取りついた』。

 プロペラクローを停止させ、ジェットの勢いそのままに船底に激突。

 プロペラがクローへ変形、船体に食い込ませ、腕のロケットエンジンと足の制御ノズルを全開に。

 そのまま翼の角度を変えてチェーンブレードも船体に叩き込み、下からバキバキと抉っていく。

 

「障壁を変更、魔法障壁を展開」

 

 スイッチひとつで『サンダーボルト』を覆う障壁が変更され、銀色の膜は紫の膜に色を、性質を変えた。

 と、船内へ突っ込まれた『サンダーボルト』の腕や頭を押し返そうとしてか、内部から朱雀兵の攻撃が飛来し―――何の効果も及ぼさずに掻き消される。

 

『ハッハッハッ、死ね』

 

 『サンダーボルト』の腕部が180度回転、ロケットエンジンが船内に向けられ、業焔を流し込んだ。

 驚愕する朱雀兵がなすすべなく炎へ呑まれていく。

 そこからチェーンブレードを突っ込み、推力全開、船体を引き裂きながら離脱した。

 どうやら()()()()浮力に関する魔法陣を破壊できたらしい。

 朱雀の飛空艇が急速に落下を始めている。

 

『さて、あとは……ん?』

 

 朱雀本陣を()()()べく回頭しようとしたとき、真っ赤に燃え盛る何かが空を駆けてくるのがモニターに映った。

 それは戦場で猛威を振るう朱雀最強の兵器、『召喚獣』、その一体であるイフリートだ。

 『召喚獣』がひとたび解放されてしまえば、他国の兵士はひたすら逃げ惑うしか手はない。

 

 否、()()()()()()

 

『フン、『()()』か……くだらないな。人を喰らって暴れまわる怪物なぞ『悪魔』で十分だ』

 

 モニターに映し出された、燃え盛る死の象徴。

 それが自分殺すためだけに向かってくるのを、彼は冷ややかな態度で迎え撃つ。

 

『『輝彩滑刀』起動』

 

 彼が操作盤を叩き、コクピット内の機器をいじくると、命令を受けた機構が動きだした。

 『サンダーボルト』の翼、無数の(つるぎ)が再び走り出す。

 

 ここまでは以前魔人に見せた物と同じだ。

 

 だが今回はそれだけではない。

 

 その剱一枚一枚が、煌々と耀き始めたのだ。

 

 機体内に響き渡る強烈な駆動音を聞きながら、ギアは獰猛にわらう。

 

『アダマンチウム合金から何をどう手を加えたかさっぱりな過程を経て完成した究極金属ウルトロン合金。別名『軍神殺し(アレスキラー)』。知ってるか?軍神は死ぬと死体が残るんだぞ。そして()()が―――』

 

 両腕のロケットエンジンが、脚部補助ブースターが盛大に火を噴き、プロペラクローが轟音を上げ、『サンダーボルト』の巨体がさらに加速する。

 

 対し、『イフリート』は燦然と燃え上がる火球を抱え上げ、突撃してくる『サンダーボルト』へ投げつけた。

 中型艦載艇程度なら一撃で爆散させる火球に、しかし『サンダーボルト』は些かも怯むことなく突っ込んだ。

 魔力によって形を保たれていた業火の塊が弾け飛び、空が鳴動するほどの衝撃が走る。

 

 その結果に朱雀兵たちは感嘆の息をつき、快哉をさけ―――――ぼうとした、その時だ。

 

 眩く煌めく黄金の光が、猛り狂う爆炎の中から飛び出した。

 

 光は真っ直ぐに『イフリート』へ向かっていく。

 

 それが何なのか、わかったのは対峙していた『イフリート』だけだった。

 

 『イフリート』は戦いの雄叫びを上げ勇猛に光へ殴りかかり―――突如として蛇のような軌道を描いた光、それが『イフリート』を両断した。

 

 

 戦場の空に火の粉を巻き散らし、軍神が二つに別れて墜ちていった。

 

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