皇国の守護銃~零~   作:キノコ飼育委員

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魔導院制圧作戦『日蝕』、弐

魔導アーマーを主力とし、数で持って攻めかかる皇国軍に対し、『魔導院ペリシティリウム朱雀』は駐屯していた朱雀軍、並びに『魔導院』のアギト候補生でもってこれを迎撃。

さらに召喚獣バハムートを呼び出す。

 

圧倒的兵力差を覆す召喚獣バハムートの奮戦により、皇国軍の奇襲は失敗するかに見えた。

 

しかし、ここで皇国軍特殊部隊が新兵器『クリスタルジャマー』を発動。

 

『朱雀クリスタル』の完全な封印に成功する。

 

これにより魔力の源を絶たれた朱雀軍、候補生、さらには召喚獣までもが無力と化し、為すすべもなく制圧されていった。

 

皇国軍新兵器『クリスタルジャマー』により窮地に立たされた『魔導院』は、朱雀領全土に向けて救援要請を発信。

各地の朱雀軍が一斉に領地防衛を放棄、首都救援に向かった。

 

『トゴレス要塞』より出撃した迎撃軍も同様であり、皇国軍との交戦開始後すぐに彼らは取って返した。

これは結果的に皇国軍に対し背中を見せる形になり、迎撃軍は追撃を受ける形で首都へ後退することになる。

 

このような事情から、皇国軍は極めて軽微な損害で朱雀領各地の占領に成功。

 

また、最新兵器に身を包んだ、『ノア・コマンド』と呼ばれる特殊部隊が初めて歴史の表舞台に姿を現し、後退する朱雀軍に対して大打撃を与えていた。

 

これにより迎撃軍は各個撃破され、『魔導院』の救援どころかたどり着くこともできないでいた。

 

 

 

そんな中、『魔導院』に朱雀のある特殊部隊が到着。

 

繰り返されし輪廻の歯車がまた、大きく回り始めるのだった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

魔導院制圧部隊旗艦である一番艦、その艦長であり制圧作戦の総指揮を執るロドリゲス少将は、旗艦の損傷もあり、弐番艦とともに後退。

 

現在は魔導院の救援に来た朱雀軍を相手に、魔導院と本土を繋ぐ橋を防衛していた。

 

対地対空攻撃に長け、大量の兵員輸送の可能な『空中戦艦』が二隻。

さらに魔導アーマーを主力とする四個装甲大隊が展開され、駆けつけてくる朱雀軍を蹴散らしている。

 

ジャマーが展開されてから幾度となく繰り返された光景だ。

 

『クリスタル・ジャマー』によって魔法を完全に封印された状態で攻めてくるその愛国心には共感を覚える反面、おいおい、地方防衛はどうした、とツッコミを入れたい思いを抱くロドリゲス少将。

 

「第一、第二装甲大隊より入電、『敵部隊ノ撃滅ニ成功セリ。追撃ノ許可ヲ求ム』とのことです」

 

「無論、朱雀は皆殺しだ。だが我々の任務は橋の防衛だ。深追いはさせるな、ライン2までには片を付けるよう伝えろ」

 

「ハッ!」

 

眼下の戦場では今も朱雀軍の壊滅と撤退していく姿が見えていた。

 

魔法も使えず、軍神も現れない、そのうえ現在来ているのは実戦経験に乏しい内地防衛の地方軍ばかり。

しかも統率も取れてない烏合の衆がバラバラに攻めてくるだけとあっては、嗤えばいいのか罠を疑うべきなのか判断に迷う。

 

朱雀軍の主力も、本隊の追撃を受けて大打撃を受けているという。

 

(この戦、勝ったな)

 

今日という日は、間違いなく歴史に刻まれるだろう。

 

クリスタルの加護を受けた一大国家が、僅か一日で滅んだ日として。

 

もしかしたら、このロドリゲスの名が教科書に載る日が来るかもしれん。

 

そう少将は輝かしい未来に心をはせる。

 

 

だがその妄想は、けたたましい警報に掻き消された。

 

 

「ッ魔力反応?!朱雀の飛空艇です!」

 

「なっ?!どこだ!?」

 

「至近距離!目の前です!!」

 

「この距離まで気づかなかったのか?!!」

 

宙から滲み出るように、朱雀の飛空艇が姿を現す。

 

姿を完全に隠蔽する魔法『インビジ』が船体すべてにかけられていたのだ。

 

「ええい近づかせるな!撃ち落とせ!」

 

戦艦上部の砲座が回転し、その照準を朱雀飛空艇に合わせる。

 

『朱雀』の所有する飛空艇は、皇国のものと比べ戦闘力に乏しい。

兵員輸送を任務とし、速度に特化しているためか装甲も薄い。

 

何をする気かは知らないが、『戦艦』たる火力を有するこちらと戦えば、勝つのは必ずこちら側だ。

 

 

そう、思っていた。

 

 

「ん?」

 

少将は視界の先に奇妙なものを見た。

 

小さな影、鳥か、いや人影だ。

 

飛空艇から人間が飛び降りてきたのだ。

 

事故か?それとも錯乱でもしたのか?

 

そう考えた、次の瞬間だ。

 

人影が強烈な発光を、『己のよく知る閃光』を放ったのは。

 

「召喚光……だと…ッ!?」

 

永遠の一瞬が過ぎ、閃光の中から漆黒の騎士が現れた。

 

八つの脚を持ち空を駆けるスレイプニルに跨がり、悪魔のように捻れた角と死神のごとき形相、鮮やかな血の色に輝く三つの瞳。

そしてその手に握るは斬鉄剣、ただ一振りで数多の命を奪う魔剣である。

 

その騎士の名は『オーディン』、『朱雀』を守護する軍神、その一柱である。

 

『オーディン』は手綱を繰り、スレイプニルを奔らせる。

宙を踏みつけ高らかに馬蹄の轟きを響かせながら突っ込んでくる。

 

その眼光に射抜かれた艦長は、はっきりと死を幻視した。

 

悲鳴を上げるようにその恐怖を振り切るための命令を下そうとするが――――――

 

「げ、迎げ……」

 

一瞬の交差、騎士の握る斬鉄剣が、『空中戦艦』の装甲を切り裂き、機関部もろともその半ばから真っ二つにした。

 

「こんな、馬鹿な―――」

 

その呟きを最期に、彼は戦艦の爆発に飲み込まれた。

 

しかし『オーディン』はそれだけでは止まらない。そのまま駆け抜け、さらに至近にいた弐番艦も斬り倒すと、首都のど真ん中に飛び込んだ。

 

その衝撃で爆発が巻き起こり、運悪く近くにいた皇国兵達を吹き飛ばした。

 

既に満身創痍の体で何とか立ち上がり、その死神の姿を目にした彼らは、一様に絶望の呻きをあげた。

 

「な……ん…?」

「あれ、は……馬鹿な…」

 

逃げるという思考すら凍りついた。

 

彼らをひたりと睨み据えた『オーディン』が、斬鉄剣を横凪に構え、その圧倒的な魔力を込めて斬撃を放つ。

 

描かれた軌跡に従い、破壊のエネルギーの奔流が皇国兵達もろとも辺り一帯を凪ぎ払った。

 

 

燃え盛る焔の中、『オーディン』の姿が渦巻く風と光となり掻き消えた。

 

代わりに12の人影が、まるで不死鳥が焔の中から飛び立つように現れ出でる。

 

『朱雀』の朱を背負いし候補生の若者たち。

 

その中心に立つ少年が言った。

 

我ら来たれり―――

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

音が聞こえる。

 

小雨のように軽やかに連続する、キーボードを叩く音だ。

 

カタカタという調べは一瞬も止まることはなく、まるで水のように流れていく。

 

「ふふーふーふーん、ふふふふーふふーん。ふふーふーふーん、ふふふふーふふーん……」

 

それに混じって、奏者による皇国軍歌のハミングが聞こえる。

 

と、その奇妙なハーモニーにブザーの音が三度響く。

 

奏者はピタリ、手も歌も止めて画面を注視した。

 

「あぁ、来た来た……」

 

そこに映るは12人の少年少女たち。

焔の中より出でて、『朱雀』の旗を掲げている。

 

その映像に、奏者は笑いかけた。

 

「ハロー、初めまして……クラスゼロ」

 

そうして通信をある部隊に繋ぐ。

 

「『「マルク工作員」に伝達。火の鳥が来た。繰り返す、火の鳥が来た』」

 

暗号を伝達する声は固い。

 

『こちら「マルク工作員」。了解、ケツに火をつける。右回りで走り出そう』

 

返答も感情を排した冷たいものだ。

 

「『承認した。通信を終える』」

 

切れた通信を、すぐにまた別のところへ繋ぐ。

 

「『スプリング、トリガー、奴らが来たよ』」

 

と、今度は先ほどと打って変わって砕けた口調であり、また声色も穏やかだ。

 

『わかりました。急ぎます』

 

『了解シタ。指示ヲ頼ム』

 

そしてそれへの返答も、口調こそ砕けていないがお互いの信頼度を窺わせるものだった。

 

「『トリガー、君の任務はついでだ。くれぐれも欲張ってくたばらないでね。スプリング、君は待機。すぐに忙しくなるから楽しみにしてて』」

 

『スプリングを回収したら離脱してください。私は適当に逃げます』

 

『待ツノハ嫌イダ……早ク頼ム』

 

奏者は笑みを深めつつ、一番大切なことを伝えて通信を終了することにした。

 

「『やれやれ、血気盛んな子達だ。とにかく、首ひとつになってでも生き延びるように』」

 

『了解』

 

『クックック、ヒドイ冗談ダナ。了解シタ』

 

 

「さって、私もアタック再開だ。深く潜るとしよう」

 

 

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