皇国の守護銃~零~   作:キノコ飼育委員

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朱雀殲滅作戦『洪水』

ふわり、ふわりと飛ぶ白銀の鎧が、『魔導院』のはるか上空に存在していた。

 

もちろん『ノア04』ことスプリング中尉だ。

 

「高度限界カ……所詮ハ小型機、40機程度デハ仕方ナイ」

 

そう呟けば、スプリングよりもさらに上空から、何かが落ちてくる。

 

「オ、来タカ」

 

それは一本の鋼線だった。

 

先端には足をかけるための三角の輪があり、スプリングはそれに掴まった。

 

鋼線はどんどん巻き上げられ、雲の中に入っていく。

 

だが、それは奇妙な雲だった。

 

まるで『何か』を包むように、巨大な雲が単体でポツンと存在していたのだから。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

軽快な金属の足音を鳴らしつつ、スプリングは通路を進む。

 

といっても通路は人間サイズなため、スプリングは身体をバラして身長を縮めており、残りは円盤となって彼に付随して飛行している。

 

皇国らしい鋼と合成資材によって造られた通路は、スプリングの足音をより明瞭に周囲に響かせる。

 

しばらく歩き、辿り着いた鋼鉄の扉。

 

浮遊していた円盤からコードが伸び、備え付けのコンソールに刺さる。

 

ピーッと緑のランプが点灯し、扉が開いた。

 

入った部屋の中は薄暗く、そこら中にあるモニターの光だけが光源という状態だ。

 

至るところにケーブルが這い回り、壁に併設された大量の機材に繋がっている。

その様は闇の河を彷彿とさせた。

 

そして河が流れ着くその中心で、ひとりの少女がすさまじい速度でキーボードを操作していた。

黒髪で丸眼鏡をしたボブカットの少女は、背中に大きな箱を、コンテナのような長方形の箱を背負っていた。

長方形の箱にも様々なコードがつながっており、時折そのコードの先がひとりでに動き、壁の機器の接続場所を変える。

 

少女、『ノア・コマンド』の指揮隊長ホルダー大佐は、画面を見たまま、機関銃のようなタイピングを維持しつつ、呑気な声でスプリングに声をかけた。

 

「おっかえりー♪どうだった?ファザーの警戒する『朱の魔人』ってのは」

 

「中々ノ強サダッタ。正面カラ戦ウ気ニハナレンヨ」

 

「わーすげい。キミって白兵戦ではわたしらンなかじゃ結構上なのに」

 

「イヤイヤ、俺ハソコマデジャナイゾ?オ前ハ技術屋ダカラワカリニクイカモシレンガ、戦闘型デハ中ノ下ダ」

 

タンッ!とホルダーがEnterキーを叩き、振り向いてにっこりと笑った。

 

「私より強いんだから同じだよ。さて、こっちのお仕事も終わったし、帰ろっか!」

 

「オォ、モウ終ワッタノカ? モットカカルカト思ッテタゾ」

 

「キミが連中を殺しまくって奪いまくってばら撒きまくってくれたからね。想定よりもはかどったよ」

 

「フム、ソレハ苦労シタカイガアッタ……ナァ、気ニナルコトガアルンダガ」

 

「ん、何かな?」

 

「ふぁざーハ何故『のあ・こまんど』全員デ首都制圧ヲ行ワナカッタンダ?『戦闘型のあ』ヲ全テ投入スレバ、『魔導院』ナド簡単ニ瓦礫ノ山ニ変エラレタダロウ?」

 

「んー、ふふふ……」

 

ホルダーはニマニマと笑いながら、「しーっ」と人差し指を立てる。

 

「ヒミツさ。でも私たちが理解してるから大丈夫。君たちはただ死なないように強くなれ。不死身の魔人を殺し続けろ。そしてファザーの望む『英雄』となれ。それが我々『ノア・コマンド』の義務だ」

 

そう言って、きらりと瞳を光らせる。

 

「……任セロ。勝ツノハイツダッテ我々ダ」

 

「よろしい。じゃあ次の任務を開始しよう」

 

ホルダーは通信装置を起動させる。

 

最新鋭の通信設備の揃ったこの場所が、遥か彼方と接続、通信状態を維持する。

 

そして彼女は、自らの『家族』に命令を伝達した。

 

「朱雀侵攻中の全ての『ノア・コマンド』に伝達。パターンβ、パターンβ。『洪水』作戦を開始せよ。繰り返す。『洪水』作戦を開始せよ」

 

 

 

 

~北トゴレス地方~

 

海に臨む街『ミィコウ』。

 

その中央広場に、ソイツはいた。

 

ばったりと仰向けに大の字で寝転んでいるソイツ。

 

ソイツは、手先からつま先まで全身を光沢のあるだぶだぶとした特殊なスーツで覆っており、頭には『おい何で金魚鉢被ってんだよ?』と言いたくなるようなヘルメットをしている。

 

(……撤収?……せっかく勝ってるのに)

 

通信を受け取ったソイツは、緩慢な動作で立ち上がると、ぐっ、と伸びをして傍に合ったタンクを背負う。

 

背負った二連タンクにはホースが連結されており、手元の操作で内容物を放射できるようになっていた。

 

ソイツは二、三度ホースの調子を確かめると、

 

『ま、いっかどうでも』

 

やる気なさげにぶらぶらと『朱雀』の街を歩き出す。

 

そうして街の外に迎えに来ている、自分専用の戦艦に向かう。

 

静かだ。

 

実に静かな町だ。

 

物音ひとつしない。

 

時折吹く風だけが、道々に伏した何も言わぬ屍の代わりに泣いている。

 

『空中戦艦』の真下まで来ると、無人のエレベーターが降ろされた。

 

そのまま何事もなくエレベーターに乗り込み、艦内部に戻る。

 

と、スプリンクラーが作動し、エレベーター内の洗浄が始まる。

 

消毒剤のシャワーを全身に浴び、部屋から出ると、空気乾燥で乾かされる。

そして次の部屋でも別の薬剤での消毒、そして乾燥。

 

その行程をさらに三回繰り返し、ようやく彼は船内に入る。

 

「「「任務ご苦労様ですっ!サイレンサー曹長!!」」」

 

警備を行う強化兵……によく似た装備の兵士が敬礼を行う。

 

『よく似た装備』、というのは、彼らのヘルメットが呼吸器の部分もガードするように覆っているからだ。

 

『警備ご苦労さま』

 

サイレンサーは手を振るだけでそれに応え、艦橋に向かう。

 

そこに至るまでにも数人とすれ違うが、皆一様にガスマスクをしている。

 

そして誰も彼もがサイレンサーに敬礼した。

 

尊敬されている?いいや、恐れられているのだ。

 

その証拠に、彼らは皆、カタカタと細かく震えている。

荒くなった呼吸をガスマスクがやかましく伝える。

 

そんな連中を気にも留めず、サイレンサーは艦橋にたどり着いた。

 

ここでも乗組員たちは、通信手から艦長に至るまでガスマスクを着けている。

 

そして艦長席の隣には、一人の若い青年が立っていた。

 

青年は将校に与えられる制服を着ていることから、かなりの地位にいることがわかる。

 

見た目は短い金髪茶色い眼、穏やかな風貌の、どこにでもいるといった青年。

 

彼はにっこりと笑うと、サイレンサーに労いの言葉をかけた。

 

「や、サイレンサー。任務お疲れ」

 

サイレンサーは、ヘルメットのマイクで彼の労いに応える。

 

『ん、疲れた。ストックは今回楽でよかったね』

 

ともすれば皮肉にも取れるその言葉に、彼、『ノア・コマンド』総指揮官ストック准将はニコニコと笑う。

彼は、サイレンサーにそんなつもりがないことをよく理解しているからだ。

 

「ははは、確かに。君のおかげで私はとっても楽だったよ。いやいつだって私は君たちのおかげで楽をさせてもらってる。ありがたいことだ」

 

『君たち』というのは、現在『朱雀』侵攻中の『ノア・コマンド』たちのことだろう。

 

それにしても謙遜が過ぎるのではないかと、サイレンサーはいつも思っている。

 

『羨ましいね。……ま、もろもろは頼んだよ。僕らじゃ無理だし』

 

「ははは、任せたまえ。天下のノアのためだ。万全の戦場を用意しよう。次の目標のキザイアにはすぐ向かえるかい?」

 

『もちろん。今日は風の流れも最高だ。ラッキーだね』

 

「全くそのとおりだ、君はいつもツイてるよ」

 

パチン!と指を鳴らして微笑むストックに背を向け、サイレンサーは待機場所に向かう。

 

『(ツイてるのは君だよ、ストック)……それじゃ、頼りにしてるよ、「ノア10」』

 

「任せてくれ。ではまた後で、『ノア07』」

 

と、サイレンサーは一旦立ち止まり、振り返って言った。

 

『あと、マスクしなよ』

 

「ふふ、私は無駄が嫌いなのさ」

 

『無駄』、というワードに、周囲の船員たちが一斉に竦み上がったが……やはり彼らはそんなこと、気にもしなかった。

 

 

 

〜エイボン地方〜

 

アギトの塔を遠くに見ることができ、かつ蒼龍との国境近くに栄える街『トグア』。

 

今は戦火に包まれ、見るも無残に崩壊している。

 

崩れ落ちた壁に腰掛けていた強化兵が突然立ち上がり、怒りを露わに叫んだ。

 

「あ゛ぁん!?あのバカ失敗したのか!!」

 

強化兵用ヘルメットの通信機能で命令を受信した兵士、『ノア02』ことバヨネット少尉が苛立ちを隠すことなく叫ぶ。

 

それを巨漢の、『番外者』装備をより強靭に強化したような装甲を纏う兵士、『ノア13』ことセフティー中尉が宥める。

 

「仕方な゛い゛。ファザア゛も予想しでだごとだ。予定通り゛に゛動こう゛」

 

「だぁ面倒だな!朱雀の連中も、とっとと降参すりゃ無駄死にすることもなかっただろうによぉ!!」

 

「うるせぇぞバヨネット」

 

ガヅン゛ッ!!と打ち込まれた拳骨がバヨネットの頭を悶絶させる。

 

バヨネットは頭を押さえたまま振り向くと、そこには一人の男が。

 

強化兵……というには身体の随所に装甲が追加されている。

番外者……というには軽装なうえ、巨漢でもない。

 

そんな強化兵と番外者を足して2で割ったような兵士。

 

腰には後ろに拳銃のホルスター、左右に刀を提げ、背には自動小銃を二丁、ベルトで背負っている。

 

「うだうだとやかましいぞバヨネット。命令はもう降りている。さっさと終わらせるぞ」

 

「……チッ、へいへい了解しましたよ!」

 

そう言って、バヨネットは腰の手斧を手にする。

手斧と言っても、刃に触れるだけで即死するほどの強力な電撃が流れている代物だ。

さらにこれは普通片刃だが、彼のモノは両側に刃が着いており、小型のアックスを彷彿とさせる。

 

「では、俺は西だな゛」

 

試製強化型番外者装甲を纏う巨人、セフティー中尉も右手に鉄板のような巨剣を、左手に無反動砲を持つ。

 

「俺はこのまま中央だ。バヨネット、お前は東だ。能力全開で構わん。助けはいるか?」

 

「言ってろよボルトォ!アンタこそヘマすんなよな!!」

 

「その意気だ」

 

それだけ告げ、彼らは三方に散った。

 

 

 

〜ルブルム地方〜

 

『魔導院』を遠くに捉えることができる、ルブルム平原。

 

ここではトゴレスから『魔導院』救出のために後退を行っていた朱雀軍本隊が、皇国軍による苛烈な追撃を受け次々と散って行った。

 

そんな戦場跡に、五人の強化兵……に似た装備の兵士がいた。

 

強化服に『似ている』とは言っても、既に別物と言っていい形になっている。

 

本来支給されている『強化服』は、防御より回避に重点を置いている。

 

何故なら、多少強い鎧を着た程度で、コンクリートを粉砕するスノージャイアントの剛腕や、『空中戦艦』すら凌駕する朱雀の召喚獣の光線、鋼鉄を切り裂けるクリスタルの武器を凌げるだろうか。

 

無論、不可能だ。

 

ゆえに反射神経を優先的に強化し、回避に徹させているのだ。

 

しかし彼らが着るこれは、奇妙にゴテゴテしている。

 

かかとや背中、肩にすり鉢のような形状のカップや、ファン、穴が開いている。

 

そんな五人のうち、一人の青年が妙に偉そうな調子で仰々しく喋り出す。

 

「あの間抜けめ、なんたる失態か!やはりこの我が!このグリップが行くべきだったのだ!!」

 

すると、残った四人のうち三人の若い女が一斉に反応する。

 

「同意ー」「同感〜」「……」

 

しかし残った一人(これも声からすると若い女)は、肩をひょいとすくめつつ呆れたように言った。

 

「アホらしい。アタシらの任務はこっちの方が向いてるでしょ」

 

そう言って、彼ら周囲を見渡す。

 

平原中を侵す、血肉の海を。

 

そこら中に朱雀兵の無残な死体が転がっており、それらはどれもこれもひどく損壊していた。

 

「む、一理あるな!適材適所は群と軍の基本!さすが我らが参謀ハンマ少尉!!」

「よっ!コントローラー!」「よっ!ストッパー!」「……」

「バカばっかかここは……」

 

わいわいと彼らは騒いでいる。

 

と、一瞬、周囲を朱い閃光が駆けていった。

 

そして丘の向こうで上がる巨大な火柱。

 

「……まさか」

 

顔を思い切り顰めながら、青年、『ノア05』グリップ中尉は嫌そうに呟く。

 

その間に参謀呼ばわりされていたハンマ少尉が、ヘルメットの通信装置を立ち上げる。

 

「こちら『ノア03』。どうした、何があった?」

 

火柱が上がったのは、先ほど残党処理に出張ってきた大隊がいたはず。

 

そう考え、小隊ごとに随伴している通信兵に片っ端から通信を行う。

 

数人の不通の後、ようやく繋がった。

 

『こち、こちら第508小隊!しょ、召喚獣です!やつら召喚獣を呼び出しました!!ジャクソン大尉の部隊が消し飛びました!!』

「落ち着け。種別は?」

『「火炎猿(イフリート)」です!!』

「数は?」

『数は1、ひっ、き、来t』

 

通信兵の悲鳴とともに通信が途絶え、同時に爆発音が地を揺らした。

 

それを聞いていた三人、三つ子の三姉妹が、同時に反応する。

 

『ノア08』、リア准尉が「あーあー、手柄が欲しくて前線に出張ってきたクセに」と。

『ノア11』、フロント准尉が「あ~あ~、名声欲しさに戦場にしゃしゃり出たってのに」と。

『ノア19』、レーザー准尉が「………………………………………………………………」と。

 

そして声を合わせて。

 

「「弱くて死んだら意味がないっ!きゃはははははは!!!」」

「……………………………………………………………………」

 

「フン、面倒な。だが草刈も飽いたところだ。ファザーに召喚獣の首を土産とするのも悪くない」

「いやいや、そもそもアタシらの任務は『対召喚獣』でしょ。ちょうどいい機会に恵まれたって思えば?」

「わーポジティブー!わたしはダルいけど」「わ~前向き~!わたしはメンドいけど」「……」

 

彼らは何ら気負うことなく、イフリートのいる丘の向こうへ消えた。

 

数瞬後、丘の向こうに嵐が吹き荒れた。

 

 

 

~イスカ地方~

 

幾度もの砲爆撃により崩壊した朱雀の街。

 

その中心部にて、三機の鋼機が待機していた。

 

一機は『コロッサス』、もう一機は『コロッサス(?)』、もう一機は『コロッサス(???)』だ。

 

(?)の数が多いほど、何かおかしい機体である。

 

『……』

 

燃え上がる朱雀の街を、『コロッサス(?)』が無言で眺めている。

 

『どうかしましたか?ギア先輩?』

 

『……別に。何でもないさ』

 

その様子に気づいた、『コロッサス』に乗る『ノア・コマンド』、『ノア20』ことバレル軍曹が声をかけたが、ぼんやりとした返事が返ってくるのみ。

 

と、そこへ能天気に明るい通信が入る。

 

『HeyBoys!ホルダーカラノオ達シダ!『洪水』作戦ヲ始メロトサ!!』

 

『あ、了解です、マガジン先輩!』

 

『OK!Let’s Party!!派手ニイコウゼ!!』

 

マガジン大尉こと『ノア06』が操縦する『コロッサス(???)』が、再びその圧倒的な火力を市街に向ける。

 

『虐殺、か。まぁ、無力はそれだけで罪だからな』

 

それだけ呟き、『ノア09』、ギア曹長も『コロッサス(?)』の腕のブレードを展開し、クローを回転させる。

 

『アハハハハ!!お二方ともおっそろし~!!じゃあ僕も適当にやりますね!!』

 

バレルは『コロッサス』を戦闘状態に移行させ、ぐるーんぐるーんと右腕を肩から振り回し、タップを踏むようにその場で軽く飛び跳ねる。

 

なお、この動作はかなり無茶な動きだ。曲芸じみていると言っていい。

 

これにはマガジンも引いてしまう。

 

『ソレ、壊スナYO!』

 

『いえいえ!僕の任務は「鋼機の性能限界実験」!ブッ壊すくらいが調度いいと判断いたします!!』

 

『Oh!ナラ構ワネェナ!!』

 

『いいわけないだろう。戦地で取り残されたいのか?』

 

『あ、そ、それは……』

 

『まったく……お前はまだ「ノア装備無し」なんだ。他の隊の……そうだな、カロン曹長の部隊をサポートしろ』

 

カロン曹長、『戦場の叩き上げ』で有名な彼の部隊のサポートと聞いて、バレルはテンションが下がった。

悪い人ではない。悪い人ではないのだが……若干イカレてるというか戦争狂なのが困りものだ。

 

『か、カロン曹長ですか……できればフェイス大佐が…』

 

そしてなんとか『上司にしたい人ランキング(非公式)』トップスリーの一人であるフェイス大佐の方を担当しようとするが……。

 

『カロン曹長にはもう話をつけてある。合流地点はすぐそこだ。あと、大佐は俺がサポートするんでな』

 

まさかの職権行使に粉砕される。

 

『お、横暴だー!職権乱用!!』

 

『階級の正しい使い方だ』

 

『HAHA! Boys!仲ガイイノハ素晴ラシイガ作戦時間ダ。始メヨウカ!!』

 

『了解』『……了解しましたぁ』

 

『Well、Meハアッチノ要塞ヲ粉々ニシテクッカラ、マタ後デー』

 

そう言って、『コロッサス(???)』は単機でリンポス要塞に向かった。

 

 

 

〜トゴレス地方〜

 

トゴレス要塞、その頂上に位置する指令室。

 

その屋上に、奇妙な一団が集まっていた。

 

強化兵装備に身を包んだ、薄い水色の髪の小柄な少女。

傍らには『長方形に角張った銃』を置き、屋上の端に腰かけている。

彼女は『ノア14』・マズル少尉という。

 

「…………にゃあ」

 

そのマズルが一言、猫のように鳴く。

 

『『『『ミャァアゴ』』』』

 

すると後ろに控えていた、人ほどの大きさもある山猫『レッサークァール』、それを軍用に訓練した『軍用クァール』―――をさらにマズルが強化した『軍人クァール』の指揮個体たちが一斉に返事を返し、要塞内に散っていった。

 

彼女もまた、ヘルメットの通信機能で報告を受け取ってある。

 

彼女の任務は『捕虜の処分』と、『その他もろもろ』である。

 

と、彼女の背に声がかけられる。

 

『狩りは上手くなったかい?』

『お母さん……』

 

振り返ると、そこには彼女の育ての親がゆったりと佇んでいた。

 

『それがお前の新しい牙かい?』

『うん。どんな獣も一撃で殺せる』

 

マズルは手にした『角ばった銃』を誇らしげに見せる。

 

なんとなく褒めて欲し気だ。

 

それをわかっているからか、彼女も穏やかな笑みを浮かべて、マズルに頬を擦りつけた。

 

『そうかい、よかったねえ。でもよく覚えておきな?』

 

だが忠告はする。親とはいつになっても子供が心配なのだ。

 

『自分の牙の鋭さに傲ってはいけないよ。牙が鋭いのはお前だけじゃない。お前が噛み殺そうとする相手もまた、鋭い牙をもってるんだ。それどころか角や毒を持ってることもあるんだからね』

 

『うん。わかってるよ』

 

『そうかい。じゃ、私は帰るよ、達者でね。あの子たちもしっかりお前が率いるんだよ』

『うん、お母さんも元気で』

 

別れを告げ、マズルから離れた彼女は蒼い光になって飛び去った。

 

母の残り香を感じながら、マズルはポツリとこぼす。

 

「お母さんって……いくつなんだろ?サプレッサーはどう思う?」

 

「え?いや、俺にわかるわけねえじゃん」

 

「……やっぱりいたんだ。自信なかったのに……」

 

無表情がデフォルトな彼女にしては珍しく、目を丸くして声の発生源を見る。

 

「……オレ、話しかけてたんだぞ…………あんまりだチキショウ……!」

 

そう言って、『ノア15』サプレッサー中尉は、がっくりと項垂れた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

欧歴842年水の月03日 【魔導院制圧作戦】

 

『ミリテス皇国』による『朱雀領ルブルム』への電撃的侵攻は、『朱雀』首都を除く全領土の占領という形で終わっている。

 

しかし同日、魔導院制圧失敗の報が届くと、皇国軍は『ルブルム地方』、『北トゴレス地方』、『エイボン地方』の占領を一斉に放棄。

物資略奪と、都市や要塞などの施設を破壊し、速やかにトゴレス地域への集結を開始した。

 

これは、『魔導院』再侵攻への布石というよりも、『朱雀』による反攻作戦への備えであったという。

 

この一連の行動により、皇国軍の占領した『朱雀』の領地は、『トゴレス地方』『イスカ地方』『メロエ地方』の三つ。

 

皇国軍の去った後の占領区は完膚なきまでに破壊されており、とくに『北トゴレス地方』は二度と生物が生きることはできないとまで言われ、現在はモルボルを始めとした凶悪かつ強靭なモンスターが多数生息する危険区域である。

また『イスカ地方』では執拗なまでに朱雀人への虐殺が行われ、中には連れ去られた人間も多数存在した。

そして朱雀軍主力部隊が通った『ルブルム地方』では、その平原が紅く染まるまで苛烈な追撃が敢行され、殿を務めた部隊で生還できた者はいなかった。

 

だが何よりも脅威的なのは、それを行ったのが『ノア・コマンド』というごく少数の精鋭部隊であるということである。

 

彼らはこの時代における『科学』という分野の極致にあり、同じく『魔導』という技術分野と比べても、隔絶した技術力によって造られた兵器で武装しており、また個人としての武力も徹底的に鍛え上げられた存在だった。

 

あれから五百年が経過した今でも、彼らの武装には謎が多く、まったくの『オーパーツ』であることを鑑みると、当時彼らと相対した人間はどれほどの衝撃を受けたのか、計り知れない。

 

しかし数少ない現存した記録によれば、当時の皇国の科学力が、平均してその水準に達していたかと言えばそうではない。

むしろ皇国の人間ですら理解の外であったという。

 

といっても、開戦から終戦の間に、皇国の技術力は飛躍的に増し、またそれに比例するかのように朱雀の魔導技術も跳ね上がって行った。

 

ともあれこの戦いが、(クリスタル)の時代に終わりを告げる『ラグナロク』、その始まりであったのは明白だろう。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

ところ変わって『魔導院』、その一画にある『魔法局』、その奥地、立ち入り禁止の、魔導の秘とも呼べるような区域。

 

そこに一人の強化兵が立っていた。

 

手には一本のナイフと非常に強力な徹甲弾を発射する拳銃。

 

それらを構え、全力で戦闘を行っている。

 

彼の名はトリガー。

 

『ノア・コマンド』がひとり、『ノア01』ことトリガー中佐だ。

 

だが彼は、珍しく焦燥の汗をかいていた。

 

「何らかの妨害は予想していましたが……まさか、こんなのに妨害されるとは」

 

彼の見つめる先には、追跡者の影が二つ。

 

『間者の分際でこの我を“こんなの”とは無礼な輩だな』

『魔導院は俺らのシマだ、勝手をさせるわけないだろ?』

 

彼自身、優れた隠密性とかなりの戦闘力を誇っているのだが、どうしてか易々と発見され、こうまで追い詰められているといった次第だ。

 

彼の任務は、皇国元帥シド・オールスタイン直々の勅命であり、今回の『日蝕』作戦にはない秘密裏の単独任務。

 

『任務遂行不能と判断した場合の即時撤退』は認められているが、出来ることならシド元帥―――ファザーの願いを叶えたいところ。

 

しかし、目の前の追跡者たちは非常に強大な戦闘力を持っており、このままでは任務遂行どころか死ぬ可能性すらある。

 

ここは口惜しいが―――

 

「退くとしましょう」

 

撤退を決意した、瞬間!

 

『逃がさん!』

『ここで死にやがれ!!』

 

地面を滑るように近づき、その凶刃を突き立てんとする追跡者と、トリガーの退路を断つ形で当たれば即死確実の狂風を吹き付ける追跡者。

 

それらをトリガーは、

 

「フッッ!!」

 

壁に向かって飛び、そこからさらに壁を蹴って天井高くへと躱した!

 

だが、凶刃の追跡者もすぐに壁を蹴り宙を舞うトリガーに迫る。

 

瞬間、トリガーは手にしたナイフを凶刃に投げつけ、拳銃の残弾すべてを狂風に撃ちこむ。

 

凶刃の追跡者は手にした刃の先を軽く動かすだけでナイフを弾き、そのまま突っ込んでくる。

 

狂風の追跡者は弾丸ごと風をトリガーにたたき返してやろうかとも考えたが、もう一人も巻き込む可能性があると素直に避けることを選択した。

 

この間刹那―――トリガー、追跡者、ともに未だ空中。

 

だがここでトリガーは、その刹那の時間でさらに霞むほどの速さを持って腕を動かす。

 

そして宙を舞う、幾つもの小さな楕円体。

 

凶刃の追跡者はそれを皇国兵が使う『手榴弾』という名の爆弾であることを知っていた。

 

『ちぃ!プロテガ!』

 

凶刃の追跡者が呪文を唱えると、彼らの身体を銀色の膜が覆った。

これは防御魔法のひとつ、『プロテス』、その最高位の『プロテガ』だ。

『ウォール』が宙に浮く壁であるのに対し、『プロテス』は全身に纏う魔力の鎧である。

その最高位のものを一瞬で行える追跡者はかなりの手練れと言える。

 

宙を舞う手榴弾は、起爆して辺りに爆風と鉄片を撒き散らす――――――ことはなかった。

 

代わりに強烈な閃光と爆音を炸裂させた!

 

『しまった!』

 

追跡者は皇国のもう一つの爆弾である『閃光手榴弾』に目を焼かれ、勘に任せて気配に刃を振るい、着地。

 

そのまま辺りの気配を探り、攻撃されたら『後の先』を叩き込まんと待ち構えた。

 

狂風の追跡者は『アボイド』という『自分の身体を魔力で操り、自動で敵の攻撃を躱す』というチート魔法を装備しているので心配する必要はない。

 

が、気配はなくなっていた。

 

どうやら宣言通り逃げたらしい。

 

『ちぃっ!おのれ白虎の痴れ者め、今度会ったらなます切りにして炉にくべてくれる!!』

 

忌々しげに地団駄踏んで悔しがる凶刃の追跡者。

 

『あぁーあ、大将があそこでジャンプなんかしなきゃなー。俺が仕留めてたのになぁー』

 

そこへやはりぴんぴんしていた狂風の追跡者がからかうように声をかける。

 

それを射殺さんばかりに睨み付け、血管ピッキピキと浮かばせながらも、凶刃の追跡者は冷静に為すべきことをまず為すことにした。

 

『貴様……いい度胸だな。気に入った、殺すのは最後にしてやる。今は白虎の残党どもを狩るぞ』

『へいへい、りょーかい』

 

それを最後に、追跡者たちは闇に消えた。

 




『ノア・コマンド』はまだ全員出てません。
全員出たら名前と番号を載せます。

朱雀に謎の影?
最終章までこの作品が続いたらわかります(テヘペルォ~


〜もし……クラサメ隊長がジャマー破壊に行ってたら〜

「きゃあ!」

『魔導院』に併設された闘技場、そこでは一方的な戦闘が行われていた。

闘技場の中心部には、巨大な魔導アーマーが鎮座し、皇国兵の部隊が待機していた。

そしてその魔導アーマーのパイロットであり、乙型ルシであるクンミもまた、そこにいた。

それに対峙するは、たった一人の少女。

水色のマントをし、両手にダガーを構えるアギト候補生、名をレムと言った。

彼女はかなりのダメージを受けており、今にも倒れそうだ。

「ハァ、ハァ……」

それを行ったのは、クンミただひとり。

ルシとしての圧倒的な力は、候補生を容易に嬲ることを可能にしていた。

「ハッ、アギト候補生っていっても、存外大したことないね」

いっそ傲慢と言ってもいい態度で、クンミはレムをあざけ笑う。

「くっ!」

悔しげにダガーを握り締め、どうにか現状を打破しようと考えるレム。

その時だ。

闘技場の石造りの扉が、重厚な音を立てて開いた。

味方が来たのか、それとも敵の援軍か。

そう両陣営が考え、注意を向けたその時、レムのみが感じていた。

必死で戦い、今にも燃えそうなほど熱を持った身体が、一気に冷たくなっていくのを。

彼女たちは、扉の奥、闇の中を見つめる。

そこから浮かび上がったのは、『朱雀』の士官服を纏い、手には氷でできた剣を握る、仮面の男。

彼はよく通る声で、レムに声をかけた。

「手こずっているようだな」

茫然として声の出ないレムに代わり、クンミが男へ恫喝するように声を上げる。

「なんだテメェ?」

それを聞き、クンミに目を向けた男、クラサメは冷淡に笑う。

「フッ……もう私の知られていない時代か。早いものだな」

その飄々とした態度に苛立ったクンミだが、近くにいた皇国兵が呻くのを聞いた。

「氷の、剣……?…………ッ?!あ、あいつは、まさか!?」

「知ってるのか?」

「あいつは死神、『氷剣の死神』です!!」

それを聞き、周囲の兵士にも動揺が広がる。

「す、朱雀四天王!」

「へぇ……あれが。面白い」

「狼狽えるな!ヤツはもうかつての死神ではない!既に老いた朱雀だ!今なら殺れる!!」

動揺する兵士たちに、部隊長が檄を飛ばし、

「クンミ様、申し訳ございませんが、あれは我々が倒します!」

と言った。

「ふん、まぁいいさ。好きにしなよ」

クンミもまた面白そうな見世物が見れそうだと許可を出す。

「『死神』を討ち取れ!討ち取って名を上げろ!行けぇ!!」

隊長の号令で強化兵たちが一斉に飛び出し、弾幕を張りながらクラサメに迫る。

レムは慌てて前に出ようとするが、クラサメはそれを制し、彼女の前に『ウォール』を張ると、自身には『プロテス』をかけ、氷剣片手に自ら突撃する。

「「「「うぉおおおおおおお!!!」」」」

「はぁぁぁぁぁあああああああ!!」

撃って、撃って、撃ちながら迫って刺し殺す、そのために走る強化兵たち。
弾丸を防ぎ、切り落とし、前へ前へと進む『死神』。

彼らは両陣営の中間で交差し――――巨大な氷山がその間を埋め尽くした。

「すごい……」

極大冷気魔法(ブリザガ)』による広範囲凍結。

候補生主席である自分でも、これほど巨大な冷気魔法が使えるだろうか。

「ぐっ、馬鹿な?!」

「へぇ……」

驚愕に目を見開く部隊長、興味深そうに眼を細めるクンミ。

「えぇい!弾幕だ!砲兵も「やめろ」ッ!?」

「私がやる。手を出すな」

部隊長を制止し、クンミが前に出た。

「し、しかし!!」

部隊長の声を無視し、余裕たっぷりにクンミは前へ進む。

対するクラサからは手から槍のような巨大な氷塊が射出される。

当たれば凍る前に顔面を串刺しにするであろう氷塊は、しかしルシである彼女には大した脅威ではない。

クリスタルの力を纏った右手を外側へ振るだけで、その氷塊は粉々に砕け散る。


――――――ルシ・クンミは軍人ではない。

彼女はそもそも文官、それも最先端兵器の研究員だった。

だが何の因果か、彼女はルシという人類を超越する力を手にした。

その圧倒的な力は、朱雀の候補生ですら歯が立たないほど。

その身に宿した力はそれほどまでに圧倒的で、それゆえ彼女は忘れていた。

―――――――自分が、決して『戦士』ではないことを。



視界を塞ぐように砕け散った氷塊、そのすぐ後ろに『死神』の影が潜んでいた。

「っんな!?」

氷剣がクンミの咽喉へ突き出される。

だが不意を打たれてもルシ、すぐに身体を捻ってそれを躱す。

氷剣の切先がクンミの横を通り抜け――――すぐさま横薙ぎに変化した。

氷剣、氷でできた剣、だが実際は剣ではない(・・・・・・・・・・)

クラサメの持つ氷剣の正体は、極限まで圧縮された冷気魔法の塊だ。

ゆえに、質量がほぼゼロと言ってもいいほどに軽い。

つまり、軌道を途中で自在に変えることができるということだ。

「ッッ!!」

クンミは超人的身体能力でそれも何とか避け、バックステップで距離を取ろうとするが、そんなことを許すクラサメではない。
クンミが一歩下がる間にクラサメは二歩詰め、クンミに体勢を立て直す隙を与えず、どころかどんどん崩していく。

「チッ!最悪!」

不利を悟ったクンミは、己の特殊能力の一つである『瞬間移動』を行う。

自らの体を光の粒子に分解し、離れた場所で再構築する絶対回避の技だ。
これでクラサメの死角を突き、一撃で葬り去る。

「これで……」

転移した先、『死神』が待ち構えていた。

「終わりだ」

氷剣がクンミの顔を切り裂いた。

瞬間、再びクンミの体が消え、今度は離れた場所にある大型魔導アーマー『ダーインスレイブ』の前に出た。

クンミの兜の面がぱっくりと割れ、素顔がチラ見できる状態になっていたが、どうやら当たってはいなかったようだ。

クラサメはそれを見て、やれやれと肩をすくめる。

「やはり口惜しいな、身体が思うように動かないというのは」

「わわわワンパターンだな!もう飽きたよ!」

初めて明確な『死』のビジョンを見たクンミは、ルシとしての全力を解放することにした。

特殊大型鋼機『ダーインスレイブ』が起動し、搭載された『クリスタルジャマー』を最大出力で発揮する。

緑白色の光が世界を満たし、神秘の全てを駆逐した。

クラサメの手にしていた、その二つ名の元でもある『氷剣』が砕け散り、キラキラと氷雪のように溶けていく。

「……ふむ」

「て、てこずらせやがって!」

「これで貴様も終わりだ!」

クンミが『ダーインスレイブ』に乗り込み、残った皇国兵たちが士気を取り戻し騒ぎ立てる中、クラサメは何を思ったのか、側に落ちていた皇国兵の死体から自動小銃をもぎ取った。

「へ、へっ!こけおどしだ!朱雀に銃の使い方がわかるかよ!!」

「馬鹿め!安全装置も外せんだろう!」

クラサメは彼らの言葉を聞きながら、奪った自動小銃の側面にあるツマミをカチリと回して『ア』から『レ』へ、コッキングレバーを引いて初弾装填。
両手で持ち腰だめにしっかりと構えた。

「……え?」

銃声。

ヒゥンッと飛来した弾丸は、『ダーインスレイブ』前面機関砲の口に吸い込まれ、内部で暴発を引き起こす。

「ふむ、ずいぶんと性能が上がっているようだな。精度も、威力も」

『な、なんで……』

呻くように向けられた疑問の声に、クラサメは事も無げに返答する。

「『誰でも』使えるのだろう?お前たちの兵器は」

クラサメの手がぶれ、皇国兵たちへ宙を三つの影が飛ぶ。

瞬間、連続して銃声が鳴り、弾丸が正確に影を捉えた。

影―――自動小銃の弾層はその底部を見事撃ち抜かれ、内部の弾全てが暴発、空中で弾け飛び、皇国兵たちへ弾丸の雨を浴びせた。

「「「「ぐぁあああああ!!」」」」

『く、くそ!なんだ!なんなんだお前は!!?どうしてそんな戦い方ができる!?朱雀のお前が!!』

『ダーインスレイブ』の拡声器から、クンミの悲鳴のような声が流れている。

それを氷のような眼差しで睥睨し、クラサメは淡々と答えた。

「私は、お前たち以上にお前たちの戦い方に詳しい。それだけだ」

弾層を交換しながら、クラサメは『ダーインスレイブ』に向けて迫る。

「行くぞ。『死神』の名を刻んでやろう」



「なんというか……」

「登場するタイミング、逃がしちゃったカンジ~?」

「あ、あの人すごく強いです!」

セブン、ジャック、デュースの三名が、何とも手持無沙汰にそれを見ていた。
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