皇国の守護銃~零~   作:キノコ飼育委員

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クポ!(さっくりと戦闘開始)
クポクポ(戦闘方式はゲームよりもムービーに近い)
クポォ♪(細かいことは気にせず、フィーリングで楽しんでほしい)


『マクタイ』撤退戦

 三人の皇国兵が、必死の形相で通りを走る。

 まるで追い立てられる鼠だ。

 

「門を閉めろ!急げ!」

 

 彼らにとって絶望以外の何でもない命令が下され、味方が大門の開閉装置に飛び付き大慌てで操作している姿が見えた。

 

「待ってくれぇ!!」

 

 このままでは閉め出される、そう確信し、彼らは命乞いにも似た悲鳴をあげる。

 が、無慈悲にも門は閉じ、彼らは閉め出されてしまった。

 

 そして次の瞬間、飛来した火球が堅く閉じられた門ごと彼らを吹き飛ばした。

 

 それを行った三つの朱い影。

 先頭に立つ短髪の少年が、儀式のように告げる。

 

「クラスゼロ、任務開始だ」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 『マクタイ』の表通り。

 街の中央部に存在する皇国軍司令本部を制圧するのなら、まず通らねばならない場所のひとつに、第一八装甲小隊は防衛線を敷いていた。

 通りの中央に自走砲台『ニムロッド』が『腹ばい』の状態で鎮座し、その側面部にたたまれていた装甲板が通りを塞ぐ壁になるように展開する。

 同時、周囲にいた兵士がその装甲板に駆け寄り、そこに格納されている機関銃を引っ張り出し、簡易の銃座とした。

 さらに銃座に付けなかった隊員も小銃を手に装甲に隠れる。

 そして『ニムロッド』に搭乗した部隊長である少尉は、拡声器で周囲の部下に指示を下した。

 

「既に前線は各所で突破された。我々はここを死守、朱雀の部隊を撃滅する」

 

 機体を戦闘モードへ移行させ、各システムを手早くチェックしていく。

 緑白色の光が操縦席を照らし、闘争本能に自らの精神が高ぶるのを感じつつ、口調は努めて冷静を装った。

 

「いいか!敵を発見次第私が砲撃を行う。それを越えてきた敵を撃ちまくれ!機関銃で粉々にしてやるのだ!」

 

「「「「ハッ!」」」」

 

 意気軒昂な部下たちを満足げに見やり、少尉は操縦桿を握り締める。

 と、ついに朱雀の兵士たちの姿が通りに現れた。

 こちらへ真っ直ぐ走ってくる。

 少尉は吠えるように命令を下す。

 

「ゥ撃てぇぇぇぇ!!」

 

 隊長の号令が下され『ニムロッド』からの砲撃と機関銃座、隊員たちの小銃からの一斉射撃が開始された。

 

 炸裂した榴弾が朱雀兵の張る『ウォール』を破砕し、通りを埋め尽くす火線網が襲い掛かる。

 銃座ひとつひとつが分間500発もの弾丸を吐き出し続け反動で銃身が躍り狂い銃口付近が真っ赤に赤熱していく。

 無数の薬莢が石畳に落下し軽やかで綺麗な音を立てながら銃声と奇妙なハーモニーを奏でた。

 朱雀兵は何度も『ウォール』を張り直しながら倒れていき、その度に距離を詰めてくる。

 そしてとうとう魔法の有効射程まで詰められ、反撃の魔法が飛来する。

 RF系魔法が幾つも放たれ機銃座を襲い、スレッジハンマーで殴られるような衝撃が伝ってきた。

 

 だがしかし、朱雀兵の放つ魔法は皇国兵が身を隠す装甲板に弾かれた。

 

 魔力伝達係数の高い鉱石を用いた導体とも言える合金と、魔力伝達係数の低い鉱石を用いた絶縁体とも言える合金、さらに強度に優れた合金を用いて造られた、特殊構造の新型装甲板である。

 非常に優れた装甲板で、こと魔法に対しては無敵と言える性能を有していた。

 これに大口径機関銃を取り付けた物を複数搭載し、強固な簡易拠点を自由に展開可能にしたものがこの『陣型ニムロッド』である。

 

 この鉄壁の防御を前に朱雀の突入部隊は後退していく。

 少尉は安堵の息を吐いた。

 

「よし、第一陣は防げたな」

 

 そう言って彼は通信機能を起動し、本部へ連絡を行う。

 

「『第一八装甲小隊より司令本部へ、撤退はまだか!既に敵が来ている』」

 

『こちら司令本部、もう少しだ!あと五分でいい!それまでそこを死守せよ!』

 

「『了解!』……ちッ!」

 

 通信が切れると同時、遠くに新たな敵影をカメラが捉える。

 しかもあのスラリとした服装にマントは『朱雀』のエリート魔導兵士である候補生の証。

 その色は……

 

「朱……だと?」

 

 情報によれば候補生は能力によって12の所属に分けられており、それぞれマントの色で識別されるそうだ。

 中でも『水色』『青色』『紫色』『橙色』は稀に国境紛争にも投入されており、いずれも甚大な被害を被っている。

 瀕死の兵士を瞬時に戦えるようにする『橙色』、無慈悲な威力の魔法を繰り出す『紫色』、砲火を潜り抜け同胞を殺す『青色』、そして魔力と暴力の怪物『水色』。

 

 だが『朱色』のマントは見たことも聞いたことも……。

 

「―――ッ!」

 

 その時、少尉はひとつの噂を思い出した。

 『魔導院制圧作戦』に言った兵士が揃って口にした、『魔人』の噂。

 

 曰く、ジャマー制御下で魔法を使った。

 曰く、『水色』を遥かに越えた化け物だった。

 曰く、ものの数分で中隊が壊滅、さらにたった三人に戦艦を撃沈された。

 

 

 ―――そして曰く、『朱色』のマントを羽織る、若い候補生だった。

 

 

「朱の、魔人……?本当にいたとは……」

 

 と、集音機から周囲の部下達のざわめきと動揺が伝わってくる。

 少尉は拡声器を起動し部下達の動揺を一喝した。

 

「狼狽えるな!!魔人など存在せん、必ず殺せる!必ず勝てる!!」

 

 狭い通りを封鎖、砲火で怯ませ火線網で絡めとる、これが必勝にして必殺のパターン!!

 例え候補生だろうと、『人間』に越えられるモノではない!

 

「喰らえッ!!」

 

 そうして彼は『ニムロッド』の照準を合わせ、砲撃を開始した。

 発射された榴弾は山なりの軌道を描き、魔人に向かっていく。

 

 だがそれは、

 

「『ウォール』」

 

 弓を手にした魔人が空中に展開した光の壁に阻まれた。

 しかも光の壁は砲撃に対し小ゆるぎもせず、その輝きを曇らせることすらない。

 

「『プロテガッ』!!」

 

 素手の魔人の身体が銀色の膜に包まれた次の瞬間、弾丸のような速度で接近してきた。

 人間ではあり得ないような速度でどんどん距離を詰めてくる。

 

 速い、そう戦慄する間もなく魔法の射程まで近づかれた。

 だが魔人はそこで止まることなくさらに接近してくる。

 

「近づかせるな撃ちまくれ!!」

 

 再び砲火が飛び火線網が広がる。

 だが砲火は魔人の速さに対してあまりに遅く、とっくに通りすぎた場所をむなしく吹き飛ばすのみ。

 そして火線網は――――――しっかりと魔人を絡め取った。

 

(もらった!)

 

 濃密な弾幕の直撃を確認し、少尉は魔人の死を確信した。

 

 だが。

 

「馬鹿な!?」

 

 あまりに理不尽な光景に操縦席の壁を殴りつける。

 なんと魔人は、機銃弾を全身に浴びせられながらなおも前進してきているのだ。

 身に纏った銀色の膜が銃弾を弾き返し、弾かれた銃弾が逸れて家屋に着弾しているのが見える。

 

 もうひとりの鎌を持った魔人はそれを盾にし、突如横に飛び出し壁を駆け上った。

 そのまま屋根に到達、さらに接近してくる。

 

「こん……ふざけるなよ化け物がぁ!!」

 

 少尉は建物ごと魔人を吹き飛ばさんと『ニムロッド』の主砲を鎌の魔人に向けた。

 

「死ねぇ!」

 

 『ニムロッド』の高角砲台が榴弾を発射する。

 弾頭内部の爆薬が着弾と同時に炸裂し、建物を崩壊させた。

 

 だが魔人は魔力によって強化された驚異的身体能力で崩壊部を飛び越えた。

 少尉は歯噛みしてさらに追撃を考えるが―――

 

「ぎゃあ!!」

「ぐあっ!?」

 

 短い断末魔、その度に火線が消えていく。

 慌ててカメラで側面を確認すれば銃座に配置した部下が次々に倒れていくのが見えた。

 皆頭を矢で射抜かれている。

 

(装甲を貫通されたのか?!)

 

 そう考えたがまた一人殺られて違うと気づいた。

 

(銃眼を射抜いただと?!)

 

 敵の放つ矢は、正確に装甲板に空いた隙間、銃眼を通り抜け、仲間の命を奪っていたのだ。

 

 次の瞬間、魔人が火線網を突破した。

 バリケードを飛び越えられ、皇国兵たちを殺戮していく。

 魔人が拳を振るい、屋根から飛び降りてきた魔人の大鎌が降り下ろされるごとに部下達が死んでいく。

 

「ぉおのれえ!!」

 

 バリケードとの連結を解き、後ろに跳び下がって近接戦用の前面機銃をバラ蒔くがまるで当たらない。

 まるで蝶のようにひらひらと避けられる。

 

 と、魔人が横に跳んだ。

 

 瞬間、強烈な光が爆発とともにモニターから飛び出した。

 ―――いや、光ではない。

 

「ばかな……ニムロッドの、90ミリ装甲を……」

 

 少尉は、信じられないといった面持ちで、自身の胸に突き立ち座席まで貫通している矢を見た。

 

「が……ぐ……」

 

 急速に狭まっていく視界の中、穿たれた穴から、こちらに手をかざす魔人が見える。

 

「ミリ、テス皇国に……栄光……あ……」

 

 強力な雷撃を零距離から浴び、少尉の乗る『ニムロッド』は爆散した。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 順調に皇国の防衛線を突破し、エイト達は皇国軍司令部があると思われる区画近くまで迫っていた。

 と、彼らは司令部前の広場に出た。

 そこには、戦争の残酷さが鮮明に広がっていた。

 

「これは……なんてことを……」

 

「チッ……」

 

 そこでは、民間人の死体が炎に焼かれていた。

 建物の崩れた箇所からも倒れ伏した死体が見える。

 目に写る赤い鮮血と肌に感じる炎の赤さが、これが戦争の現実だと突きつけてくるかのようだ。

 

「この先が皇国の指揮所だ、一気に攻め落とすぞ!」

 

 その光景を胸に焼き付け、彼らは前へと進む。

 立ち止まることはできないのだ。

 

 ―――――誰が行く手を阻もうと。

 

 

『いいや、お前たちの相手はこの俺だ』

 

 

 唐突に横手の建物が吹き飛んだ。

 

「くっ!なんだ!?」

 

 もうもうと巻き上がる土煙の向こう、そこに緑白色の光がぼんやり灯る。

 吹き飛んだ瓦礫を踏み砕きながら、そいつが姿を現した。

 

 最近前線に投入され始めた重装甲魔導アーマー、『コロッサス』―――に、よく似た魔導アーマー。

 

「こ、コロッサス……?しかしこれは……新型?!」

 

 まず『コロッサス』最大の特徴であり主兵装である大砲がなく、両腕ともにクローに換装されており、そのクローも通常のモノより大きく、刃のように鋭い。

 しかし腕は通常の機体より太く、後部にロケットブースターが取り付けられている。

 そして何より存在を主張しているのは、腕側面に存在する長大なブレードだ。腹の部分を側面にぴったりとつけ、切っ先は後ろに向いている。

 

『正確には』

 

 と、目の前の機体から拡声器による声が響いた。

 淡々とした、若い男の声だ。

 

『正確には専用機だ』

 

「専用機……!?」

 

 戦慄する面々に対し、目前の鋼機が名乗りをあげる。

 

『俺は『ノア09』ギア、階級は曹長だ。こいつは『サンダーボルト』。まぁ長い付き合いになるだろうからな、よろしくとだけ言っておこう』

 

 と、トレイはギアの言葉に気になる点を見つけた。

 

「『ノア』……?解放戦の時に出たっていう兵士もそう名乗っていたそうですが…」

 

『あぁ、俺の兄弟が世話に……いや、「世話を」したそうだな。スプリングから聞いている』

 

 そしてその巨体が建物から踏み出した。

 その時、『サンダーボルト』の足が民間人の死体を踏み潰し、石畳に赤い花を咲かせた。

 

「あ」

 

 その声は誰が出したものだろうか。

 それに反応したのか、『サンダーボルト』から何でもないような調子で返答が返ってきた。

 

『ん、ゴミを踏んでしまったか。まぁ狭いのだから仕方ないな』

 

 そう言ってまた一歩踏み出し、子供の死体を踏み潰す。

 

「貴様……」

 

 文字通り人道を踏み潰すその有様に、エイトが怒気を露わにする。

 しかしギアは、『ノア09』は、非常に興味深げな、面白がるような調子でエイトにカメラを合わせるのみ。

 

『ん?怒ったのか?ユニークな連中だな……こいつらは弱者だ。死んで当然だろう』

 

「何ですって?!」

 

『この世界では強者のみが生き弱者はことごとく死ぬ。そして最後には強者だけの世界が完成する。だから感謝しているんだぞ?間引いてくれて』

 

 “間引く”

 

 それが自分たちが排除した皇国兵たちのことだと、彼らはすぐに気が付いた。

 その、自分の味方にすら冷酷な態度を隠さない姿に、彼らははっきりと嫌悪を感じる。

 

「じゃあアンタも弱者ってわけだ……今からアタシらにぶっ殺されるんだからなぁ!!」

 

 サイスが握る不吉な死の色を纏う大鎌(デスサイズ)、その切っ先が『サンダーボルト』に突きつけられた。

 

『フッ……』

 

 しかし『サンダーボルト』の拡声器からは、涼やかな嘲笑が流れ出たのみ。

 

「何がおかしい」

 

 拳をゴキゴキ鳴らしながらエイトが睨み付ける。

 

『おかしいさ』

 

 『サンダーボルト』が鋼鉄の両腕を駆動させると、腕に沿う形で後ろ向きに畳まれていたブレードが、180度回転して前へ突き出す形に展開した。

 

 それは分厚く、『サンダーボルト』自身の前後の長さよりも長く、無視できない威圧感を与えてくる。

 

 と、その分厚いブレードが縦に薄く割れたかと思うと、割れ目からジャキッと人間が持つ刀剣サイズの刃が飛び出した。

 機械が金切り声をあげ、ブレードに沿うように刃が走り出す。

 

 そう、言ってしまえば巨大なチェーンソーである。

 

『で、そのちんけな武器で戦うのか?』

 

「……上等だよ」

 

 サイスは冷や汗を一滴流し、ひきつるような笑みを浮かべた。

 

 そして両陣営は、示し合わせたかのように同時に攻撃を開始した。

 

『サンダーボルト』の肥大した両腕のロケットブースターが業火を一度吹きその巨体を前に弾き飛ばす。

同時、トレイは瞬時に矢を放つ。

『サンダーボルト』の目である前面カメラを狙った矢は、しかし『サンダーボルト』のチェーンソーが弾いた。

 

「速い!?」

 

「あの腕のブースターだ!」

 

 『サンダーボルト』はともすれば鈍くなりがちな重量級の機体を、ブースターによる一時的かつ爆発的な加速で動かし、白兵戦への対応を可能にしているのだ。

 体当たりでもするように飛び込んできた巨体がその場で右足を軸に半回転、地面ごと抉るように左のブレードチェーンソーで薙ぎ払う。

 

 それを飛び越えて避けたサイスが『サンダーボルト』の腕に着地し関節へ大鎌を降り下ろした。

 だが魔力で切れ味を跳ね上げられているはずの斬撃は、火花を散らしながら重装甲に阻まれる。

 

『無駄だ』

 

 今度は右のクローが回転しながらサイスを叩き落としにかかる。

 しかしサイスはそれを身軽にかわし、宙返りしつつ着地、そのまま後退する。

 

 そして―――

 

「『サンダラ』!!」

 

 サイスを囮に懐に飛び込んでいたエイトが雷撃を放った。

 雷撃系統の魔法は皇国に対する定石であり、魔導アーマーへの切り札であった。

 

 あの至近距離から高威力の雷撃を直接叩き込まれては、さしもの専用機といえど黒煙を吹きながら爆発する――――――はずだった。

 

『こそばゆいな』

 

 まるで効いた様子もなく『サンダーボルト』はエイトを踏み潰しにかかる。

 エイトはそれを転がりながらかわし、再び雷撃を放つが、全く通じた様子はない。

 

「雷撃が効いていない?!」

 

『いつまでも弱点をそのままにしておくと思ったか?とっくに対策済みだ』

 

 『サンダーボルト』が万歳するように両手を上げる。

 必然的にロケットブースターが地面へ、足元のエイトに向いた。

 

『死ね』

 

 加速のための爆炎ではなく焼き払うための火焔がブチ撒けられ、地面を舐めるように広がった。

 

「ぐぁああ!!」

 

 火焔の舌に巻き取られ、エイトが苦痛の声をあげる。

 周囲を高熱が埋め尽くしサイスもトレイも近づけない。

 

「エイト!この!!」

 

 咄嗟にトレイが弓を引き矢を放つ。

 矢は一直線に飛び『サンダーボルト』のカメラを狙うが、『サンダーボルト』は少し身体を屈めて装甲でそれを受ける。

 サイスは『ファイラRF』を唱え火球を飛ばすが、『サンダーボルト』はそれも装甲で受けた。

 頭の一部を抉られながら、それでも腕の火焔を一切緩めずひたすらエイトを殺しにかかっている。

 

「ぐぐ……」

 

『おっと』

 

 突然、『サンダーボルト』は火焔を爆炎に切り替え後ろに飛びずさった。

 

「『ブリザガァ』!!」

 

 その瞬間、火焔が全て凍りついた。

 冷気魔法により鋭い氷山が隆起し周囲に満ちていた熱気が霧散、代わりに冷えた空気が満ちる。

 エイトは焔に焼かれながら詠唱を続け、逆転の一撃にかけたのだ。

 さらにエイトは冷気魔法を暴走させ、自分自身も凍らせることで炎を鎮火したのだ。

 

「『ケアルラ』!」

 

 サイスの癒しの魔法によって、エイトの火傷を負い炭化した体、凍傷を負い凍りついた体がみるみるうちに元通りになっていく。

 その自らの犠牲すら計算に入れ、冷徹なまでに敵を倒そうとするその姿に、ギアは大きな戦慄を覚えた。

 

『恐ろしい奴だ……ファザーの言う通り、真正の化け物だな』

 

「『ファザー』?それがお前らの首魁か!」

 

『想像に任せるよ。さて、そろそろ時間だ。撤退させてもらうぞ』

 

「逃がすと思っているのか?」

 

 傷を癒し立ち上がったエイトが、再び拳を構える。

 だがギアはまるで相手にしない。

 

『そう焦るな、いずれお前たちは負ける運命なんだから』

 

 突然、ギアの操る『サンダーボルト』から煙幕がとてつもない勢いで吹き出し、たちまち辺りを覆い尽くした。

 

「くっ!目眩ましのつもりか!」

 

 と、今度は地響きとともに突風が吹き、煙幕を吹き飛ばした。

 

 そうして煙幕が晴れると――――――

 

「―――いない?!」

 

 そこには何もなかった。

 

 後には戦火に焼けた町と、そこに佇む魔人だけが残された。

 




ふと、この話を書いて思ったこと。
皇国の隊長格倒すと、「ミリテス皇国に栄光あれ」って死ぬじゃないですか。
クラサメさんは「クリスタルの加護あれ」って死んだじゃないですか。
フェイス大佐は「彼らが最期に何を言ったのか、何を願ったのか覚えていない」と言ったじゃないですか。
その直後のナインは「ぶっ殺したから覚えてねえや」とも。

……たぶん、彼らが最期に叫ぶ言葉が、どれだけ遠くの、どれだけ多くの誰かに届いたとしても、そのすぐ後には『内容は覚えていないが誰かが何かを叫んだのは覚えている』に変わってしまうのでしょうな。
なんか、切ないですねぇ。それでも彼らは、みんな祖国の勝利を願って死ぬのですから。

では、次は無印でお会いしましょうノシ
次話の皇国サイドの話が完成すればこちらも投稿します。

追記
そうそう、今回の最後のシーン、とあるアニメのオマージュもしくはパクリなんですが、わかる方いますか?
いたら私と握手!
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