星が照らす行く先は   作:健健

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第14話

 

早朝六時過ぎ、人気のない広場で一人で魔法の訓練をしていた所、いつの間にか置いていた本を勝手に読んでいた顔見知り程度のおじさん。改めて良く見てみる。

 

厳つい顔つきにがっしりとした身体、見た目の年齢の割には真っ白な髪は、首の後ろで束ねている。

 

若い女自分と初老の男おじさん、人気のない場所、二人きり。

 

(・・・これは警戒した方がいいやつなのでは?)

 

客観的に自分の置かれた状況を理解したアルナイルは多少の警戒はしつつも会話する事にした。 

 

「おはようございます。すみません、その本は大事な物なので勝手に止まれたりしたら困ります」

「お、やっぱりこの本は嬢ちゃんのモンだったか、悪い事したな。だが大事なモンならあんなところに置いてちゃだめだぞ。俺が盗人だったらこの本はもうなくなってたぞ、気を付けな!」

 

ぐうの音も出ない正論になんて返せばいいか戸惑っていたら、今度はおじさんから声を掛けてきた。

 

「ところで嬢ちゃん、この本はどこから持ってきたんだ?あまり出回らない希少な本だぞこれは」

「えっと、、そのーまぁ、、色々ありまして」

「なんだ?訳ありか?」

 

おじさんの目が鋭いものに変わったた気がする。ベナトの書斎から勝手に持ち出した負い目もあり、更にはおじさんから告げられた希少な本だという言葉。なんと言えばいいか分からず戸惑ったが、よくよく考えればこのおじさんは赤の他人だ。正直に話しても問題はあまり無いのではないかと思い話す事にした。

 

「ちょっと言いにくいんですけど・・・一緒に暮らしてる人の仕事場から勝手に持ち出したものなんです。なので何かあるととても困るんです」

 

ベナトの事は言わなくていいだろうと思っていた。

 

するとおじさんは意外というか驚いた顔をして

 

「一緒に暮らしてる?なんだ嬢ちゃん、ベナトの娘かなんかだったのか。それは失礼な事をしたな。すまねぇな」

「え?あの、、べ、ベナトばあちゃんを知ってるんですか?」

「知ってるも何も傭兵時代は一緒にパーティー組んで長い事やってたぞ。この本をベナトに渡したのも俺だしな」

 

予想外の言葉を受けベナトは固まってしまった。

 

(まさかベナトばあちゃんの知り合いだったなんて・・・しかも本の依頼人なんて・・・どうしよう)

 

ようするにおじさんから見ればアルナイルは、依頼した筈の本を勝手に持ち出し無造作に広場に置いていた人な訳で。勝手に本を読んでいたのも自分が依頼した本が広場に置かれていたら誰だって不審に思って手に取るだろう。最初は警戒心もあって怪しいおじさんだと思っていたが相手から見れば自分の方が怪しく見えていたはずだ。アルナイルの心中は申し訳なさで塗りつくされていた。

 

「あの・・・本当にすみませんでした。まさか依頼されていた本だとは知らなくて」

 

頭を下げてアルナイルは謝った。だがおじさんは特に気にしてない様子だった。

 

「あ?あぁ、気にすんなって。ベナトの奴は信頼してるしな、嬢ちゃんも悪気は無かっただろ?誰だってこんな事は一度や二度は有るってもんだ。本も無事だしな」

「すみません」

「だから気にすんなって。ところで嬢ちゃん、ベナトの事をばあちゃんと呼んでたが、ベナトとどんな関係なんだ?一緒に暮らしてるとも言ってたな?」

 

アルナイルはベナトの関係や現在の状況、そして何故本を持ち出したのかを話した。

 

「なるほどな。要するに嬢ちゃんはベナトに拾われて、傭兵になる為に今は魔法の訓練をしている訳か」「そうです」

「最近ベナトが王都に越してきたと噂を聞いた本当だったのか」

 

ちらっとアルナイルを見ながら

 

「しかもこんな大きな娘が居たとはな」

 

笑いながらそう言ったので嬉しかった。ベナトの娘だと最近は周りに認知され始めているベナトの娘と聞くだけで嬉しくなる。

 

「ところで嬢ちゃん、名前はなんて言うんだ?おっと、俺の紹介がまだだったな。俺の名前はヒンギル。ヒンギル・ターチだ。よろしくな!」

 

「アルナイルです。ベナトばあちゃんのお知り合いとは知らずに失礼な事をしました」

「だから気にすんなって言ってんだろ?俺も気にしてねぇんだからよ」

 

一通り挨拶も済んだところで再びヒンギルの方から話しかけてきた。

 

「ところでよ、嬢ちゃん。この本を待ちだした事や魔法の訓練をしてた事から察するにこの本に書いてある光魔法を習得しようとしてたのか?」

 

どうやら嬢ちゃん呼びは変える気は無いらしい。

 

だがそんなことより光魔法の事について聞かれた時、アルナイルは多少の羞恥心があった。家で細かく内容を確認せずに待ってきた事もあり光魔法の希少性や、前提として魔力を持っているかどうかもわからず、仕方なく普段通りの訓練をしていたからだ。計画性の無さや無駄な事をした自覚があったからだ。

 

「・・・そうですね。聞いたこともない魔法だったので興味本位で出来るかどうかやってみようと思いまして・・・」

 

当初の気持ちを少しぼかしてそう言った。

 

「ですがそもそも光の魔力を持っているかどうかの確認も出来ませんし私にはその伝もありませんので・・・諦めていつもの訓練をしていました」

 

アルナイルは光魔法の事は諦めていた。

なのだが・・・

 

「んん~?どういう事だ嬢ちゃん、魔力なら持ってるじゃないか」

「・・・え?」

「気付いて無かったのか?てっきり魔力を持ってるからこの本をこっそり持ち出したのかと思っていたんだが・・・まぁ光の魔力は自分だけじゃまずそれが光の魔力とは気づけないからな」

 

ヒンギルはそう言いながらアルナイルの顔を改めてみながら

 

「なんなら嬢ちゃん、俺が教えてやろうか?」

 

笑顔でそう言った。

 

 

 

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