「じゃーん! ターボだぞ!」
カノープスの部屋に快活な声と共に入ってきたのは、低身長に青く長いツインテール、そしてオッドアイが特徴のウマ娘、ツインターボだ。
「おーどしたんターボ。今日は確か休養日だよね? 忘れ物?」
それに答えるのはナイスネイチャ。
偶々放課後のトレーニング途中にスポーツドリンクの補充に来ていたのだ。
これ見てこれ見て! と、ターボが掲げるのはビニール袋。どうやら中には箱状のものが入っているようだ。
「どれどれ……」
袋を受け取って中の箱を取り出せば、白いボディに青い炎の模様が入った車のイラストが描かれていた。
「えーっと、何だっけこれ。……そうそう、ミニ四駆、だっけ?」
「そうミニ四駆! マグナムセイバーって言うんだ、カッコいでしょ」
「そうだねえ。ま、カッコいい、んじゃない?」
少し歯切れが悪いのは、あまり男の子が好きそうなおもちゃには関心がなかった、という事で勘弁してほしいとナイスネイチャは思う。
「でもなんでいきなりミニ四駆? アンタ、前から好きだっけ?」
「ううん、名前は知ってたけどさっき初めて見た。でもちょー速いんだよ! ビューンって!」
詳しく訊けば買い物で寄った商店街で偶々模型店のそばを通ったとき、親子が楽しそうに走らせているのを見たのだそうだ。そしてその速さに衝撃を受けたのだと。
……そういやあそこの模型店、個人経営の癖に妙に広かったけど、コースがあったからか。
詳しくはないが、ターボがこうまで興奮するほど速いのであれば、それなりの長さ? 大きさ? のコースが必要になってくるだろうと、推察できた。
「でもアンタ、なんでチーム部屋に持ってきたのさ? 自分の部屋で作ればいいでしょ?」
「作ってすぐ走らせたいけど、寮で走らせたらヒシアマに怒られそうだもん。こっちなら作ったら近くの校舎の廊下とかで走らせても放課後だしきっと大丈夫!」
「ほほう、ターボにしては考えましたな」
「どういう意味!?」
アハハ〜と誤魔化し一つ。
「ま、作るのはいいけど、散らかさない、片付けはちゃんとする。いいね?」
「うん、分かったー!」
よしよし、と頷いて新しいスポドリを取り出して部屋を出ていこうとするナイスネイチャ。
その際、ターボは目をキラキラさせながら組み立てを行おうとするのを視界の端に入れ……、
「待った。ターボ待った」
「うぇ?」
慌ててターボの動きを止める。
なんだよネイチャ〜、と抗議されるが、多分これは言わないといけないのでは? と説明書を軽く読んで確認してから言う。
「いや、なに手でパーツもぎ取ろうとしてんのさ。ニッパーだっけ? 道具使いなよ道具」
にっぱー? と呆け顔をするツインターボを見て、あ、こりゃ駄目だと確信する。
「無理矢理この枠? から取ったら割れちゃわない? それにほら、書いてあんじゃん。組み立てにはニッパーとドライバーをお使いくださいって。ターボ持ってる?」
「ううん」
首を横に振るターボを見てまさかと思い、更に問うてみる。
「もしかして電池もない? モーターは入ってるみたいだけど、電池ないと作っても動かないよコレ」
「え、全部入ってないの? 走らないの!? ヤダー!!」
うわーん、と騒ぎ出すターボを見てどうするか考える。
……このままじゃ、少なくとも今日中には完成しないなこれ。仕方ないなぁ。
「わかったわかった。トレーニング終わったら手伝ってあげるから」
「ホント!? ありがとネイチャ〜〜!!」
抱きついてきたターボの頭を擦りながら嘆息するネイチャであった。
ターボが買ってきたのはプレミアムのほう。なので少々手荒に扱っても大丈夫なものとする。