「たっだいま~!」
「おー、デジャブデジャブ。お帰りターボ。例のブツは手に入りましたかな?」
「もちろん!」
丁度帰り支度までを終えたナイスネイチャは、この光景、さっきもあったなと思いつつターボを迎え入れた。
ターボの様子を見るに、首尾良く必要なものは揃えられたらしい。
「んじゃ、早速作る?」
「うん!」
元気良くターボが返事をする、だがそこに声がかかった。
「なになに? 何の話?」
「おや? ターボさん、どうされたんです?」
「マチタン! イクノ!」
更衣スペースから出てきたのはカノープスの残りの二人、マチカネタンホイザとイクノディクタスだ。
先程までネイチャと一緒にトレーニングしていた二人だ。
ネイチャが経緯を語るとやはり珍しいのか、興味津々といった様子。
その最中にもターボは既に制作を開始していた。基本的にはこちらは見守るスタイルで、明らかに間違ってそう、危なそうだったりしたら声をかけるだけである。
箱を開けると、まず目に入るのはボディが付いてる枠の部品だ。
やはり一番目立つパーツであり、マシンの顔だ。それをターボはパチリパチリと借りてきたニッパーで切り取っていく。
「おー、案外ちゃんと切れてるじゃん」
「ふむ、切り終えたら次はシールですか。これがシャーシ……」
「カッコよくできたらいいね〜、ターボ」
「ムッフー、まかせろ!」
イクノが説明書を見つつパーツの確認をし、マチタンは口を出さないみたいで完全に見守り態勢だ。
「あっ、ローラー忘れてた。ドライバーあったよね?」
「私取ってくるよ」
席を立ち、ドライバーを取りに行くマチタン。
ニッパーとは違い、ドライバーは色々と使う機会もある為、チーム小屋に常備されているのだ。
「ほい」
「あんがと。ほらターボ、ボディにもローラー付けろってさ」
「うん、そこに置いてて……、あっ!」
ドライバーに少し気を取られたせいだろうか、ビスやワッシャーなどが入った袋を開けようとして力を入れすぎ、中身が飛び出してしまった。
「わっ!? ちょ、ターボ!」
「ごめーん、ネイチャ〜」
「や、怒ってないから。そんな泣きそうな顔しない」
「ターボさん、私達も探しますから」
「このちっちゃい輪っかも部品?」
こうして、四人で散らばった部品を探したり、
「…………」
「ターボ、そ~っとだよ、そ~っと」
「見てるだけでドキドキしますな〜」
「……やった! 出来た!!」
『おおおお!』
シール貼りに緊張しながら挑んだり、
「……あ、それビスのギザギザのとこまでついてんじゃん。貸して、拭いてあげるから」
「……これ、ギアにもつけるんですね」
「ハッ!? これをつけたらお肌スベスベ?」
「ターボ、それは違うと思うなマチタン」
グリス一つに変なことを考えたり、
「成程、ギアとシャフトの組み合わせでこうも見事に。単純ながらも奥が深い」
「イクノ〜、そろそろ返して〜」
「もしかして興味津々?」
「ぽいねー。眼鏡光ってるよ」
ミニ四駆の仕組みに感銘を受けたりしながら制作は進み。
そして――、
「っ〜〜、出来たーー!!」
ついに、ツインターボお手製、マグナムセイバーが完成した。
「やったじゃんターボ」
「おめでとうございます、ターボさん」
「おー、カッコいいカッコいい」
ターボの掲げた手に収まるミニ四駆。漸くの完成だった。
「よーし、走らせるぞ!」
という訳で、走らせる為に早速近くの校舎の廊下へと移動。
移動先の廊下は、普段彼女達が自分の脚で走るコースと比べれば短いが、建物として考えれば結構な長さであり、ミニ四駆を走らせるには十分な長さを誇っていた。
人影は自分達以外にはない。プレハブ小屋から寮に帰るだけなら直接外を歩いていったほうが早く、天気の悪い日でもなければ利用しないからだ。
廊下の端、スタート位置にはマシンを持ったターボとそれを見守るネイチャ、そこそこ距離のある廊下の真ん中辺りにイクノとマチタンがマシンをキャッチする為に控えている。
「じゃあ、そろそろ行くよ」
スタートの合図係でもあるネイチャが構えを取り、ターボがマシンのスイッチを入れる。
シャアア、と唸りを上げて電力の通ったモーターが動き出す。それがギアとシャフトを通じてタイヤを回転させる。
ターボがしゃがみ、スタートの構えを取ると、マシンがゲートに入り今か今かと待つウマ娘の様子とダブって見えて不思議な感じがする。
ターボの様子はというとワクワクで堪らないのか、耳と尻尾がパタパタ揺らしながら笑みを浮かべていた。
「ようい……、スタート!」
手を振り上げると同時、手から離れたマシンが勢いよく飛び出した。
「いっけー! マグナム!」
その後をターボが追いかける。
その後を更に追いかけつつ、ミニ四駆が走っているところを眺めるネイチャ。おもちゃにしては中々速いなとは思いつつも、でもウマ娘ほどではないなとも感じる。
ウマ娘の半分もないくらいの速度であろうか? 確かに純粋なヒトでは追いつくのは難しい速度ではあるが、ウマ娘にとっては流して走っても追いつくくらいでしかない。
しかし、それはまっすぐ走れていた場合の話である。
「わわっ、マグナム!?」
暫く走っていたかと思うと、徐々にコースを外れていき、壁の方に寄っていってしまう。ローラーがあるおかげだろうか。激突してクラッシュする事はなかったものの、弾かれるように向きを変え反対側へ。
「どこに行くんだー!?」
ターボと一緒に確保しようとするも、あっちに行ったりこっちに行ったりと中々に忙しい。何が原因かは分からないが、動きが不規則であり、小さい上に中々にすばしっこくもあって、捕まえるのが容易ではない。
……最高速度では勝ってるけど、こっちが加速する前に方向変えてどっかに行くから面倒っ!
縦の長さは兎も角、横幅が加速するには全然足りていない。
それにマシンを踏んで壊すようなことがあれば、多分ターボが泣く。それだけは避けねばならない。
やりにくさに内心、うにゃー! と叫びつつネイチャも暴走ミニ四駆大追跡に参加した。
「タンホイザさん、私達も」
「うん!」
ゴールで待っていたイクノディクタスとマチカネタンホイザも参戦。マシンを挟んで追い詰める算段だ。
ナイスネイチャから見て右にイクノディクタス、左にマチカネタンホイザだ。
――そして、オチが確定した。
マシンを追いかける事に集中していたターボが頭からイクノの腹に体当たりし女の子が出してはいけない声がイクノの口から出て、マチタンが大分手前で躓いてコケて顔を上げた瞬間にマシンが顔に突っ込んで鼻血が出て叫んで、そこからマシンが幾度か壁などで方向転換したところで、丁度ネイチャの下に来たので片膝をついてマシンをキャッチした。
「――――」
ネイチャは無言でミニ四駆のスイッチを切って立ち上がる。
あまり見たくはないが、仕方ないので恐る恐る顔を上げて目の前の惨状を直視した。
チームメイトが三人重なって倒れる姿に悲哀を感じ、天井を仰ぎ見て、こう呟かざるを得なかった。
「ミニ四駆って、こわぁ……」
外で野放しで走らせればこうもなる一例。(誇張アリ)