ミニ四駆がトレセン学園にやってきた   作:風呂

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遅くなってしまった。アイデアが降ってこなかったの。
その代わりいつもよりちょっとだけ長め。

あとお気に入り100件突破ありがとうございます。


秘密基地って何歳になっても心惹かれるよね、というお話

 ある日のこと。

「おや? ミニ四駆ですかターボさん」

 カノープスの部屋でマグナムを取り出してメンテをしていたターボは、カノープスのチームトレーナーである南坂トレーナーに声をかけられた。

 声をかけられたターボは彼へ振り返りつつ、そういえば何度かこの部屋でミニ四駆を弄ったことはあるが、トレーナーがいないタイミングばかりだったなと思い返す。

「そうだよ! カッコいいでしょー」

「ええ、そうですね」

 穏やかな笑顔で言う南坂はしかし、マシンから目を逸らさなかった。

 それに気付いたターボは端的に問いかけた。

「興味あるの?」

「……ああいや、そうですね。実は私も子供の頃にミニ四駆で遊んでた時期がありまして、気になったのですよ」

「本当か!? トレーナーのマシン見せて見せて!」

「いえ、流石に今はもう持ってないですね。実家の押し入れにまだあったかどうか」

 どこか懐かしむように彼は答えた。

「そうなのか、残念」

「申し訳ありません。……それでなんですが、少し見せてもらっても?」

「いいよー」

 南坂にマシンを手渡す。

 元々トレーニングを任せている相手だ。マシンを預ける程には信用していた。

 受け取った彼は、色々な角度から見たり弄ったりしながら、時々感嘆の声を上げていた。

「今のミニ四駆は凄いですね。ターボさんがこれを全部一人で?」

「そうだよ。お店に来てた人達に教えてもらいながら作ったんだ!」

 楽しそうに語るターボの返答に南坂は良かったですねと、と頷いた。

「ありがとうございますターボさん、とても参考になりました」

「どう致しまして!」

 なんでもない日々の中、こんな一幕があった。

 

 

 この取るに足らない会話が、後に大きな事態になるとはターボは勿論、聡明な南坂にも分かりはしなかった。

 

 

 それからまた土日が二回程巡った後のある日、カノープスの四人は放課後の空き時間に、初めてミニ四駆を走らせた廊下でマシンを競わせていた。

 初回の反省点を踏まえ、マシンには簡単な仕掛けをしてある。

 シャーシの底面に短くしたストローをテープで貼り付け、そこに長い紐を通す。

 そしてその紐の両端をスタートとゴールに固定すれば完成だ。これにより多少の揺れはあるものの、概ね真っ直ぐにマシンが走ることができる。

 更にはゴール地点にはそれぞれのぱかプチを用意。マシンを受け止めるクッションにした完璧な策だ。

「こうして、乙女の尊厳は守られたのです」

「私も痛い思いをせずにすむのですっ!」

「あ、あはは……」

 因みに、イクノディクタス考案である。鉄の女ならぬ、ゲ○の女なんて呼ばれたくはないのであった。(当たり前)

「しかしイクノが選んだのがアイアンビークとはねえ。名前的にらしいちゃらしいけど」

 ネイチャの言葉通り、カノープス三台目のミニ四駆は、イクノディクタスのアイアンビークだ。

 鉄イメージした色とV字型のノーズ。そして二つの小型リアウイングが特徴のマシンである。

 改造の方向性としては兎に角頑丈に、耐久性を上げたミニ四駆だ。

 内部パーツは全て強化パーツに交換、フロント・リアバンパー共にカーボン製の強化プレートを取り付けてある。

「無事之名車也、ですよ」

「上手い事言うねえ」

 眼鏡をクイっと上げながら、イクノディクタスは語るのであった。

 その横で二人の会話を聞きつつマシンを走らせていたターボが、ゴールしたマグナムセイバーのスイッチを切りつつマチカネタンホイザに問いかけた。

「……なあなあ、マチタンはミニ四駆買わないのか? 一緒に走らせたいぞ!」

 それに対してマチタンは、

「う~ん、私は良いかなー。あんまり速いのは扱いきれないのです」

「あー、うん。そっかー」

「それは納得するしかないわ」

「……コメントは控えさせてください」

 皆、初回のあの大惨事を思い出したのか、何とも言えない雰囲気になってしまった。

 暫く無言が続くが、そんな空気を吹き飛ばそうと、少々強引にネイチャが話題を変える。

「そ、そういえばさ、トレセン学園(こっち)にもコース欲しくない? 真っ直ぐ走らせて速さ勝負するのも良いけどさ、やっぱりコースでレースしたいじゃん? 毎回態々あのお店を利用するのも時間もお金もかかるしさ」

「おお、トレセンコースだな! 面白そう!!」

「ほほう、それは興味深いですね」

「良いね~。でもあれを作るのは大変そうだよ? どうしよっか?」

 う~ん、と四人で悩んでいたら、

「ふふふ、お困りかな? お嬢さん方」

 唐突に、近くにある昇降口から声をかけられた。

 振り向くとそこには、キザったくポーズを取りながら扉にもたれかかっている男性と、その傍に立つもう一人の男性がいた。

「え、あの、ちょっと引くんですけど沖野トレーナー?」

「ゴフッ!」

 女子高生のドン引きな態度は成人男性からしたらクリティカルなんだよ! と崩れ落ちながら言うのは、特徴的な髪型といつも咥えているキャンディーと将来有望なウマ娘がいるとすぐに太もも(トモ)を触り始めるという悪癖を持つチームスピカのトレーナー、沖野である。

 ……沖野さんて改めて考えなくても不審者でアウトだよねー、と思いながら引き続きネイチャが問うた。

「トレーナーも揃ってどうしたんです? 今日はカノープスは皆トレーニングは休みだし……」

「ええ、トレーニングの事での用ではないのですよネイチャさん」

 もう一人の男性、南坂が言うには別件という事らしいがどういうことかと聞くと。

「皆さんの為、というかこちらが悪ノリした所為といいますか。取り敢えず見て貰いたいものがあるんですよ」

 とのことで、カノープスはトレーナーを含め、後片付けをしてからその場を後にするのだった。

 なお、沖野はいつの間にか復活して、彼女らの後をしょんぼりしながらついていった。

 

 

 辿り着いた先は、チーム小屋のあるエリアより更に奥、普段は人気もなくトレーニングですら使わないような、しかしある程度は平地の広がるエリアだった。

 元々はトレセン学園が建設された時の資材置き場としてや、掘り返した土の置き場所等に使われていた場所だ。

 管理用に半開放型とも言える倉庫のような小屋があるくらいで、今まで放置されていたのだが、その様子は一変していた。

「……へ?」

「おお、凄〜い!」

「これはまた見事な」

「コースだああああああ!!」

 そんな寂れた筈の場所にあったのは、まさにサーキットと呼ぶに相応しいミニ四駆コースだ。

 商店街の模型店のコースよりも巨大で、木製だったりプラスチック製だったりとツギハギな印象がある。

 しかし、よく見るとどうやら本格的な道具等を用いたようで、出来そのものはとてもしっかりしたものだった。

 各セクションもバラエティに富んでおり、公式大会どころかゲームでしか見ないようなものまである。

「あの、これ、どうやって……?」

 とんでもないものを見せつけられた衝撃から、辛うじて復活したネイチャが声を絞り出すように問うた。

 なお、残りの三人は興味津々でコースを見て回っていた。

「おう、そりゃ儂が知り合いの蹄鉄職人に頼んでな、そこからの伝手で要らなくなった道具やら何やらを譲ってもらった訳よ。あとはここの若え奴らが設計やら作製やらを、な」

 そう言って倉庫小屋から出てきたのは、オグリキャップのトレーナーをしていた六平トレーナーだ。

 還暦を迎えて久しい彼は既に現役トレーナーを退き、現在はトレーナーのご意見番みたいなことをしているらしい。

「いやいやいや、どう見てもやりすぎでは? あと許可とか……」

「はっは、遊びは全力でするから楽しいんじゃよ」

「ア、ハイ」

 ……確信犯だわこれ。言質とったら共犯にされる奴だ。

 これ以上は触れてはいけないと悟るナイスネイチャ。これが大人か、と思いつつも沈黙することを選択するのだった。

「けどまたなんでこんなことを?」

「ああ、南坂が沖野にツインターボがミニ四駆で遊んでるというのをトレーナーの集まりがあったときに漏らしての。それを聞いた周りが自分もやってたと話が盛り上がった結果じゃな」

 懐かしさと悪ノリと行動力の結果らしい。その結果に呆れるばかりなネイチャであった。

「お〜いネイチャー! 話してないで一緒に走らせようよ!」

 ターボが大きく手を振りながらネイチャを呼んでいる。その手には勿論マグナムが。

「コースの出来をチェックするためには走らせたが、本番どころか練習走行すらまだだからの。初のお客さんじゃ。楽しみな」

「……はい! ターボ今行くー」

 スタート地点に行けば既にターボとイクノの準備は整っているようで、あとはネイチャだけの様子。

 それならとネイチャが準備すればスタート五秒前。

「それじゃいくよ〜。……レディ、ゴー!」

 マチタンの合図で三台のマシンが走り出した。




元ネタはつべで見たどこかの模型店のミニ四駆コース。
流石に三レーンは殆ど無いけど、一本レーンなら探せばあるらしいよ。
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