「おお! おいしそ〜!」
目の前に運ばれてきたハンバーグプレートを見てフルーフはよだれをたらす。
「ふふ、いただきます!」
「ゥンまああ〜〜いっ!」
がっつくフルーフは子供のようで可愛らしい。
「フルーフ、お肉好きなんだ」
「当たり前でしょ! 人間の体を得たってことは人間の舌を得たってことよ。これは人間の味覚を得たってことなの。サメのままじゃ味わうことなんてなかった絶品よ!!」
「なるほど……」
高速で動くフルーフの手と口を眺めながらアオもナポリタンに手をつける。
「うま……」
慣れ親しんだ味だが、一生飽きない自信がある。
二人はあっという間に料理をたいらげてしまった。
*
アオとフルーフは腹ごなしにだらだらと散歩をしていたが、やがて海辺に戻ってきた。フルーフが波のある方へサクサクと歩いて行くので、アオも後をついていった。
波に足が濡らされるギリギリのところでフルーフは立ち止まり、振り返った。
「ね、もう一つ魔法を見せてあげる」
そう言って、フルーフは上着のポケットから小瓶を取り出す。中には真珠が一粒入っていた。
「真珠?」
「そう見えるでしょ。でもこれが魔法のアイテムなのよ」
続けてフルーフはまだしていない魔法の話を始めた。
「深海の魔女に会った時、三つの薬をもらったわ。そのうちニ錠はその場で飲んで、最後の一錠は今ここに。一つは私の願い通りの人間になる薬。二つ目がきっと、唐辛子が生える薬だったんでしょうね。三つ目は、海に帰ってくる時はこれを飲んで戻って来いって言われたの。多分、サメに戻る薬なのよ」
「サメに戻る薬……そっか、薬なんだね、それ」
アオは改めて小瓶の真珠に目をやる。たしかに、飲もうと思えば飲み込めそうだ。
「私ね、毎日考えてた。これを飲んで海に戻るかどうか。唐辛子のことがあるから、魔女のところに戻って文句を言わなきゃいけないんでしょうね。でもそれより、結局人間になりきれてないことが悔しいの。私は人間でもサメでもない、半端な化け物……」
「そんなこと言わないでよ!」
アオが話を遮って叫ぶ。
「半端な化け物だなんて自分を卑下しちゃ悲しいよ! フルーフは人間でもあってサメでもある、オンリーワンな生き物だよ!」
「……! その言葉、覚えておきなさいよ? それに、話にはまだ続きがあるの。私、アオと会って初めて人間になって良かったって心から思ったのよ。まだ2日しか会ってないけどね、これから楽しくなるかもって思ったの。だから、だからその……とりあえずこれはいらない!」
フルーフは感情が抑えきれなくなって、サメに戻る薬だというのが入った小瓶を、海に投げ捨ててしまった。
「わああ! フルーフ!? 捨てちゃっていいの!?」
「いいのいいの。当分海には戻らないって決めたから! そのかわり、アオ」
「なに?」
「……これからも友達でいてくれる?」
「……! もちろんっ!」
* 第1章「サメのフルーフ」完 *
第2章「イカの護衛はイカが?」(仮題)
お楽しみに