海のフルーフ   作:矢田悠進

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他のもの優先して書くので続きはしばらく無いです!すみません!
2章はこの1話しかないので読まずに一章だけで完結と思っていただくことを推奨します!


第2章 イカの護衛はイカが?
6.私と一緒に住まない……?


先のデートから1週間、アオはフルーフに会いに行かなかった。

家中の整理整頓に時間を使っていたのだ。もともとぐちゃぐちゃしていたわけではないが、2DKの空間はすっかり片付いた。寝室に使っていた部屋はそのまま、もう一つの部屋は雑多に物を置いていたのでそこを重点的にやっつけた。おかげでその部屋は空っぽも同然である。

 

「私一人で住むならワンルームで良かったな……ま、いいか」

 

アオは一通り家の中を見渡して、特に問題ないことを確認すると外に出た。

 

 

「フルーフ〜!」

 

アオは砂浜の隅まで駆けていく。人がなかなか進入しないためフルーフが私物を隠しているゾーンだ。今日もフルーフはそこにいた。

 

「あらアオ。こんにちは」

「うん! こんにちは〜」

 

フルーフの挨拶は丁寧たな、とアオは思う。

 

「今日はお仕事ないの?」

「うん、日曜日だから」

「そっか、日曜日」

 

フルーフは木の枝で砂浜に「日」と書く。

 

「かんじぃ〜」

「フルーフ、漢字もわかるんだ。さすがだね」

 

フルーフはつづけて「よ」「う」「日」と書き連ねていく。「曜」は分からないようだ。

 

「フルーフさ、」

「なあに?」

 

アオは深く息を吸う。

 

「なになに?」

「私と一緒に住まない……?」

「……わお、急ね」

「はは……だよね……」

 

ここ砂浜の端にはフルーフの私物のようなものが散らばっている。前回ここに来た時に確信した。フルーフは、最もシンプルに言い表すなら、ホームレスなのだ。海から上がってきた時の持ち物はどれほどだったのだろう。今では服や唐辛子収穫のハサミなど、人間のモノをたくさん集めたようだが、それでもさすがに「家」だけは入手できていないと見える。それに気づいたアオは、慈悲やボランティア精神などではなく、ただ好奇心と欲で、フルーフを連れ帰りたくなってしまった。

 

「フルーフが家にいてくれたら、楽しそうだなって、思っちゃって……」

「なにもごもごしてるの? あなたらしくないわね。まさか、さすがに非常識なこと言っちゃったー、とか思ってる?」

「……はい」

「……ならなんで言ったのよ〜」

「口に出してから、じわじわ後悔が……」

「まあいいわ。ニンゲンからしたら私なんて非常識の塊だしね」

「あっはは……」

「住むわ」

「……!?」

「住まわせてよ、アオのおうち」

「ほ、ほんと!? いいの!?」

「そのかわり私、な〜んにもしないただのサメよ? いっぱい食べるペットよ?」

「んーいいのいいの。一人は飽きた頃だから!」

 

 

荷物をまとめたフルーフを、アオは自宅まで案内した。住宅街の一角にあるアパートの一階だ。

 

「ここだよ!」

 

アオは鍵を開ける。

 

「どうぞ」

「お邪魔しますわ」

「靴はここで脱いでねー」

「これが……玄関! わああ! これが、家!!」

 

フルーフはアオハウスを見渡す。そんなに広くないが、人の家というものを見たことがないフルーフには新鮮である。

 

「手前はご覧の通り食卓とキッチンです。正面の部屋が私が使ってるところで、隣のお部屋はフルーフが自由に使っていいよ。片付けといたから! それと私の部屋の手前の扉がおトイレ! そのまた隣が洗面所とお風呂!」

「ひ、一部屋も使っていいの?」

「いいよいいよ、元から使ってなかったから」

「ふふっ、今めっちゃ嬉しい」

 

フルーフは割り振られた部屋に飛び込む。

 

「すごい快適! やはり人の体には人の家!」

 

ぼふん、と外を歩くのに隠していた尾ひれが姿を表す。

 

「そう言いながらサメの体が半分出てるぞ〜?」

「半々くらいが一番楽ちんなの〜」

 

「フルーフ用の合鍵を作らなきゃね〜。フルーフを閉じ込めたいわけじゃないからさ。あ、あとひとつだけ注意して欲しいのはあんまりはしゃがないでね。壁、薄いから」

「お隣さんにご迷惑ってわけね。わかったわ」

「フルーフは大人しそうだし、多分大丈夫だろうけどね」

「そうねえ……まあ声とか動きは静かな方かな。……そうだ、聞いてよ。ちょうどこの前アオとご飯食べた後くらいから変なやつにつきまとわれるようになってね」

「なにそれストーカー!?」

「ちょちょ、落ち着いて。アオの方がうるさくしそうで心配ね……。ストーカーっていうのは否定できないけど、私と同じ海の仲間なのよ」

「海の……」

「そうよ。なんでもそいつが言うには……」

 

ピンポーン。呼び鈴がなる。ここのものだ。

 

「ん? 郵便かな……古いアパートだからドア開けないと誰か分かんないんだよね〜」

 

不用心にもアオはそのままドアを開ける。海街でのんびり育ったアオは基本的に楽天家である。

 

「はいは〜い。おや?」

 

そこには、一人の女の子が立っていた。フルーフより少し背は低いだろうか、三人で比べるとアオが一番高い。低いところで結ばれた長い銀髪のツインテールと、ダークグレーの瞳は、明らかに日本人のものではない。身を包んでいる焦茶のローブが浮世離れしている印象を与える。

 

「どちら様かな?」

「ニンゲンのお方!? こちらに他に誰かいらっしゃいませんか?」

「ええ?……いないよ?」

「どうしたのアオー?」

「ちょい!」

 

相手は少女とはいえ怪しいのでフルーフの存在を誤魔化そうとしたが、本人がのこのこ出てきてしまう。

 

「いるじゃないですか!」

「なー! アンタは! アオ、こいつよ! こいつが海から来たストーカー!」

「ええ!?」

 

少女はにこにこ笑顔で

 

「フルーフ様! 身の危険を感じておりませんか? わたくしの護衛はイカがでしょう!!」

「アンタに追われる今が身の危険だよ!!!」

「まってこの子だれ!!!!」

「わたくしはヴィイと申します! イカのヴィイです!」

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