今回登場するのはちゃんと史実がある子です。実装はされていませんが。まぁ実装されてないからこんなことできるんですけどね。
それと、テイオーとマヤ同期問題云々言っていろいろと調べてたら
今回とんとん拍子且つご都合主義全開で突っ切ります。
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2023/10/12
ノースフライトが実装されたので名前を変更しました。ノースフライト→サテリット
『ソル2!回避!回避!』
無線からオーシアの誰かの声が響く。背後に恐ろしいほどの無機質な威圧感を感じた。先程から振り切ろうとしているが一向にできそうにない。どんな機動をしてもガッツリ食いついてきやがる。ソル隊では
『完璧な機動だ…まるでミハイの…』
半ばあきらめの境地に達して無線をつないだ瞬間、背後に強烈な衝撃を感じた。
「クソッ…!爆発する!」
懸命に消火装置を起動しようとするがどう考えても損傷が大きすぎる。
俺は静かに目を閉じた。
(
背後から轟く爆音とともに、俺の意識は吹き飛んだ。
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…はずだったのだが。気が付いたら見たことのない森の中に飛ばされてたとさ。こんな話があってたまるか。
「なぜだ…なぜ俺は生きている?」
森の中に若干低めの声が響く。ただその声は男性のものではなく、女性のものだ。傍にできていた水たまりを覗き込んでみると、そこには金髪のロングヘアーに碧眼の少女がいた。おーう、美人。
「どうなっていやがる…耳が人間のそれじゃねぇぞ…。うっ」
本来の位置にない耳を手でさわさわしていると、突如頭痛が俺を襲った。頭の中に俺のものではない記憶が流れ込んでくる。
ウマ娘?…として生を受けて今の今まで生きてきた、この体の持ち主の記憶。俺のものじゃない。…現状何も分からない状況だ。この子の記憶を覗いてみるとしよう。
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ーーー『あの子、まだデビューできてないらしいよ。もう中等部3年なのに』
ーーー『話しかけてもまともな返答帰ってこないからトレーナーもつかないんだとか』
ーーー『合同トレーニングに参加してもだれとも喋らないって噂だよ』
ーーー(生まれつきしゃべるのが苦手なだけなのに…)
ーーー『なんでトレセン学園に居られるんだあいつ』
ーーー『さっさと居なくなればいいのに』
ーーー『気味が悪いわ』
ーーー(怖い…他人が怖い…。私なんていない方が…)
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「なるほどねぇ…どこの時代、世界でもイジメはあるものだな」
この体の記憶をあらかた把握した俺は*2、この子の…もとい、自分の身体と周囲を調べることにした。泥だらけの赤と白のジャージを身に纏っており、傍らには崖。そこまで高くはないが落ちたらただでは済まないだろう。人間なら。
(さては自殺でも図ったか。はたまた事故か。崖から落ちて五体満足とは、ウマ娘とやらは大分丈夫な種族だな。それと…信じがたいが、俺はこの子に憑依してしまった、という具合か。この子の意識は微弱すぎて脳内の大部分が俺になっちまってるな)
幸いにもこの子の記憶のおかげでこの世界で生きていくことはできそうだ。もといた世界よりも大分平和な世界だが、この子の場合はちょっと違ってくる。
一つ、イジメのエスカレートにより最近は嫌がらせも増えてきていること。
一つ、模擬レースとやらで勝たないと学園に居られないこと。そして学園を出たら行く当てがないこと。
前者は俺が対応すれば大丈夫だろう。殺しに来ない限りは大丈夫だ。問題は後者。
「ウマ娘の走り方なんて知らないぞ…」
俺は立ち上がって周りを見渡す。少し行ったところに道らしきものが見えたのでそちらへと向かう。
「あーぁ。死んだら天国でゆったりできると思ってたのに…思いつめてる思春期女子に憑依とは、俺もついてないな」
道に出たところでこの子の記憶が反応する。どうやら知っている道のようだ。知っている道なら走っても学園にはたどり着けるだろう。
(移動のために自分の脚で走るなんて何年ぶりだ?)
走る前に準備運動をしながら考える。空を飛びまわっていたころは訓練でやるマラソンを疲れすぎないようにするために効率のいい走り方を模索していたが…この子の、俺の走りに生かせるだろうか。
準備運動を終え、試しに軽く走り出す。
(うおっ…速い!?これでジョギング程度の出力か。つくづく恐ろしいなこの種族は)
前世での全力疾走くらいの速度で走りながら、この体が覚えていた走り方に注目する。
(確かに速ぇが…無駄が多いな。着地の時の脚の角度をもうちょっとキツく、つま先から。そして手はもっと振る。ほら、これだけで大分マシになったぞ)
グン、と速度が上がったのが感じられる。やがて走っている道がカーブに変化する。
(上体を立てすぎだ。もっと寝かす。足の回転を速く、歩幅を小さく。頭をブレないように。なんだか楽しくなってきたな)
クリッピングポイントをなめるように通過し、上体を起こす。だんだんと緑が少なくなり市街地が近づいてきたので速度を落として止まる。
「はぁ…はぁ…」
息が上がっている。まぁ2kmくらいは走ったから当然か?…いや違う。この体の記憶によればスタミナがそこまで多くない…らしい。レースもマイルが丁度だとか。マイルってなんだ…?あぁ、OK把握した。便利だなこの記憶。
「ちょっと、そこの君!今いいかな」
電柱に片手をついて息を整えていると、声をかけられた。顔を上げた先にいたのはスーツに身を包んだ男性がいた。その表情に悪意は感じられない。話を聞いてみよう。
「君そのジャージからしてトレセン学園生だよね?あ、俺は小林。トレーナーをやっている者だ」
そう言って小林は慣れた動作で懐から名刺を取り出して渡してくる。襟元のトレーナーバッジからして嘘ではないようだ。
「それで?何の用だ」
「今さっきの君の走りを見させてもらった。もし担当が決まっていないのならうちのチームにスカウトさせてほしいのだが、どうだろうか?」
記憶によればトレーナーが付かなければそもそも学園には居られないという。この話を受けて損はないだろうな。
「構わない。よろしく頼む」
「おぉ!それは良かった。チームメンバーが足りなくて困ってたんだよ」
このチームで大丈夫だろうか。
「担当にトレーニングは良いから早くメンバーを探して来いと言われてしまってね」
マズイ。選択を誤ったかもしれない。
「それはそうと君、名前は?それとそのジャージどうしたんだい?泥だらけだが」
ここは
「どっちだ?」
「なんか既視感が…。じゃあ両方頼もうかな」
俺はジャージに付着した乾きかけの泥を手で払って落とし、姿勢を正して真っ直ぐトレーナーを見据えた。
「俺の本名はヴィト。ウマ娘としての名前は、サテリットという」
「ま、また外国出身…!…あぁ、よろしくな」
トレーナーがわずかに頭を抱えていたような気がするが気のせいだろうな。トレーナーが付いたからには今後のレースは安泰と見ていいだろう。というかそうなってもらわないと困る。俺が。
その後トレーナーと色々と話しながら学園までの道を歩いた。どうやら今年でようやく一人前のトレーナーとして独立したばかりのようで、担当ウマ娘が一人だけいるとのこと。そいつも外国出身らしく、それで名前を聞いた時びっくりしたようだ。相当入れ込んでるらしく、そいつの魅力について延々と語られてしまった。名前を出さずにその子、その子、と言っているのには何かわけがあるのだろうか。
学園に到着し、トレーナー室とやらの場所を教えてもらった後一旦別れた。着替えるためだ。記憶を頼りに自室に戻り、着替えを取り、シャワーを浴びて制服に着替える。この精神でスカートを履くというのはなかなかに辛かったぞ。
「あ、サテリットじゃん」
「まだ居たんだ」
自室を出て廊下を歩いていると、前方からやってきた二人に絡まれた。どちらも薄笑いを浮かべていることと、俺の中の僅かな意識が怯えていることからこいつらがイジメ勢力の一端だろうな。まったく胸糞悪い。
「悪いが今急いでるんだ。どいてくれないか?」
進路をふさぐようにして立っている彼女らにそう言う。彼女らはちょっとビビったようだったがどく気配はない。
「俺は行くぞ」
「ちょっ、待て!」
彼女らを避けるようにして進もうとすると肩を掴まれた。本当に急いでるんだから勘弁してくれ。
「急いで、いるんだが?」
関わるな、という意味を込めてそいつを睨む。ひゅっ、という情けない声をだしてそいつは手を引っ込めた。これにて一件落着だ。
指定されたトレーナー室の前まで来ると、何やら話し声が聞こえる。どうやら待たせてしまっているようだ。急いで入らないと。ノックをしよう。
『開いてるぞー』
「失礼する」
扉を開け、中には言って一礼。顔を上げて挨拶を…
「俺はサテリットと申します。今日からこのチームでお世話に……キング?」
「…何だと?」
完璧な挨拶をしようと思っていたのだが、部屋の中にいたもう一人のチームメンバーをみて思わず言葉が漏れてしまった。容姿は全くと言っていいほど違うが、佇まいがそう感じさせたのだ。
「悪いがトレーナー。少しだけ、少しだけ席を外してはくれないか?ちょっとばかり彼女と話したいことがある」
「あ、あぁ。分かったよ」
彼女がそう言うとトレーナーは不思議そうな顔をしつつも部屋を後にした。瞬間、彼女が俺に詰め寄ってきて両肩を掴む。
「何故私をキングと呼ぶ?それと貴様の本名は…」
「ヴィトです。2番機のヴィトですよ」
「……嘘だろう」
目の前の彼女…反応的にもう確定だろうが…は俺から手を放し、一歩後ろによろけて下がる。
「端的に説明します。エルジアは負けました。その後紆余曲折あって内戦が起き、我々ソル隊は有志連合にボスルージ空軍として参加し、オーシアの連中と共闘することになったんです。その部隊で新型UAVを撃墜する任務の最中で、俺は墜とされました。まるで貴方みたいな動きをするUAVでしたよ」
「なんてことだ…!UAVは生産されてしまったのか…!?」
彼女…もとい彼が驚愕の表情を浮かべた。やっぱりキングの動きを取り入れたものだったみたいだな。
「トリガー…三本線がやってくれましたよきっと。まだ2機だけでそいつらを止められれば止められる状況でしたから」
「そうか…成功したと、信じておこう」
彼はどこか遠い目で虚空を見つめていた。さて。身元が確定したところで…
「それでキング。何やってるんですかこんなところで」
「それはお前も同じだろう!?」
ーーー
「いやー、二人が親戚だったとはね。そりゃびっくりもするわけだ」
その後話し合った結果外面的にはお互い外国出身で親戚ということになった。これなら初対面時の反応の筋も通るしな。
「サテリットがお姉さんで、アルカンジュが妹みたいな関係だったのか?」
そして驚いたのがキングの方が年下だったってことだ。身長が同じくらいだからてっきり同学年かと思ったんだが。そのせいで敬語を使いにくくなってしまった。あっちは敬語でなくこっちが敬語とかおかしいからな。ま、キングに敬語やめるように言われたから徐々に慣れるとしよう。
「違うな。私がよくこいつを助けていた。危なっかしい行動ばかりするからな」
「いやぁ…それを言われると何も言えねぇ…」
トレーナー室に3人の笑い声が響いた。心なしか、かすかに残る
チームメンバー追加回(一人のみ)でした。チームって最低5人だって聞いた記憶があるんですけど、あと3人どうしましょうね。
エスコン7をやった人ならわかると思いますが、一応ヴィトの詳細情報下に置いておきます。プレイヤーの動き次第では生き残ることができる唯一のキャラです。自分はヴィトを生かすことはできませんでした。
トレーナーは今話題沸騰中のアルカンジュのチームという事を伏せて驚かそうとしていたが予想外の展開になって不完全燃焼。今後もチームメンバー集めに勤しむ。
ヴィト
ソル隊二番機。シラージと同じくエルジアに吸収された小国ボスルージの出身であるが、彼が育ったのは併合後のボスルージであるため、祖母らが話す祖国の言葉が分からないことを悲しんでいる。よく無線に登場し、僚機を気遣っていたり、ミハイを尊敬している様子など実直な青年であることが窺えるが、トリガーのストライダー隊と行動を共にするサイクロプス隊のエースがミハイに撃墜されたことをネタに、挑発を行ってくるなどある意味「若者らしい」人柄。(ピクシブ百科事典より抜粋)
前回、この次は弥生賞だーと言いましたが多分それ嘘になりそうです。サテリットのイジメを根絶させなきゃなので。