エース娘コンバットダービー   作:Jeep53

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 後編。時間に沿ってただアルとゴルシがのんびり過ごすだけのお話です。洋服の知識が欲しい。


MISSION 13 「クリスマス・イヴ-下」

 動き始めた街中をゴルシと二人で歩く。朝より気温は高いものの、吐く息は白く、師走の寒さを実感させられる。そんな中ジーパンにTシャツ、その上にちょっと服を羽織っただけの私はというと…。

 

「寒い…。ゴルシ、走って体を温めてもいいだろうか」

 

 寒さに震えていた。朝は走っていたためジャージだけで十分、というか暑かったのだが、今は違う。寒い。

 

「お前さ、頭いいのか悪いのか時々分かんなくなるよな…。とりあえず洋服屋に直行するから、そこで暖かいの買え」

 

 ゴルシに連れられ、ようやくついた商店街の入り口付近にあった洋服屋に入店する。店内は暖房で温められており、私はホッと一息ついた。

 

「いらっしゃいませ!何をお探しですか?」

 

 店員がこちらに気づいて声をかけてくる。若い女性の店員だ。

 

「コイツに似合う服を探してて。この服以外何も持ってないんだよ」

「えっ!?こんなに素材がいいのに、勿体ない。私に任せてください!」

「よぉし、任せた!」

「私の意志はどこだ?」

 

 そのままやたらとテンションが高い店員に手を引かれ、店の奥へと連れ込まれる。彼女は私を椅子に座らせ、カタログを取り出してあーでもないこーでもないと唸っている。

 

「スカートとズボン、どちらがお好きで?」

「ズボンだな」

「分かりました。それですと…」

 

ーーー

ーー

ーー

ーーー

 

 十数分後、私は二人の着せ替え人形にされていた。何を言っても聞く耳を持たないので諦めて言われたとおりにしている。

 

「これもいいですね、どう思います?」

「アタシとしては前の方がいいかな、これはちょっと合わねぇ」

 

 そして思ったことが一つ。女性用の服は種類が多すぎる。ズボン一つにつけても何種類もあり、先ほどから何個も試させられている。

 

「よしアル!次はコイツだ!」

「アルさん!上はこちらを!」

 

 いったい何着目だ?店員も私の名前を覚えてしまっているじゃないか。渡されたものは…黒地のズボンに上はオレンジのセーター。ふむ、どこかで見た配色だな。私にぴったりと言えよう。

 試着室で着替え、カーテンを開ける。

 

「おぉ!いいじゃねぇか!」

「黒で足が引き締まってていい感じですね!他に欲しいものはありますか?」

「他に欲しいものか。そうだな、ズボンと同じ黒のトレンチコートはあるかね?」

 

 店員はもちろんです!と言って店のさらに奥へと消えていった。そして十数秒後、その店員は黒のトレンチコートを抱えて戻ってきた。

 

「こちらはえっと…どこかの軍のコートをモデルにしたトレンチコートになっております!アルさんになら似合うかと思ってついでに帽子もセットで持ってきちゃいました!」

 

 渡されたコートにそでを通してみる。サイズは大きすぎず小さすぎずちょうどいい感じであり、保温性も申し分ない。店内だと暑いくらいだ。前世で一着だけ持っていたコートによく似ている。ご丁寧に懐のホルスターまで標準装備ときた。至れり尽くせりだな。帽子は黒い普通のキャップ。ウマ娘用のため、耳の穴が開いているのが私としては珍しかった。この世界じゃ普通らしいが。

 

「おぉー!似合うじゃねぇか!首から微妙に出てるオレンジ色がいいな。店員さん、これ全部でおいくら万円?」

「今試着されているのですと…占めて25600円ですね」

「気に入った。よし、買おう」

 

 食い気味に返答し、財布を取り出す。店員に案内されレジカウンターへ。そこでタグを切ってもらい、料金を支払う。一日が始まったばかりでここまでの金額を出して大丈夫かと思われるかもしれないが安心してほしい。紫菊賞での賞金がまだあるのだ。今日一日は余裕で過ごせるくらいはある。元の服をたたんで袋に入れてもらい、受け取る。ゴルシは何やら別な服を何着か買っていたようで、私と同レベルの金額を払っていた。

 

「ゴルシ、何を買ったんだ?」

「ん?あぁ、そりゃ服に決まってんだろオメー」

 

 そうじゃないんだが。まぁ聞かれたくないようなので深くは追及しない。

 満面の笑みの店員さんに見送られ、私たちは服屋を後にした。先程までは薄着のせいで寒かったのだが、今はコートとセーターのおかげで随分と温かい。手はポケットに突っ込んでいるので、風が冷たく感じるのは顔くらいのものだ。

 

「この後はどこへ行くんだ?」

「そう急ぐなって。まずはクリスマスの雰囲気が洪水起こしてる商店街を一通り見て回んだよ!」

 

 ふむ、そういうのもアリだな。ウインドウショッピングというのだったか?気に入ったものがあれば帰りに買えばいいってことか。

 ゴルシに手を引かれるようにしてクリスマス一色の商店街を歩く。セール中ののぼりや大声を出して客寄せする八百屋、七面鳥とチキンを大量に並べている肉屋、クリスマスツリーや飾りをご丁寧に陳列している雑貨屋。どこもかしこもキラキラとした飾りと人々の笑顔で輝いている。平和とは良いものだ。

 聞いた話によると、このクリスマスという行事では親しい人にプレゼントを贈る日でもあるそうだ。連れ回されているうちに見繕うのがいいかもしれない。

 

「お!あれなんだ?なーなーアル、あっち行ってみようぜ!」

「そんなに急ぐんじゃない。迷子になったらどうする気だ」

「ならないならない。ほら早く!」

 

 人ごみをかき分けてとある店のショーウインドウにたどり着く。そこは以前マヤと来た雑貨屋だった。イルミネーションやガーランドによる飾りつけで非常に華やかな装いとなっている。

 ショーウインドウの中にはオルゴールや腕時計などの高級品から、子供が好みそうなおもちゃ達まで、数多くの品が展示されていた。

 

「ゴルシ、店に入るかい?」

 

 近所の子であろう子供達と一緒にショーウインドウに張り付いていたゴルシに声をかけると彼女はすぐこちらへ来た。

 

「あの子たちは知り合いか?」

「いんや?親が買い物している間に欲しいもの決めてるんだとさ」

 

 店内に入り、入り口わきの小さめのクリスマスツリーを横目に見ながら店の中を探す。前来た時とはだいぶ品ぞろえが異なっている。ゴルシは何やら見たいものがあるようで、私とは別な方向の棚の奥に消えていった。

 私がプレゼントを買いたい人…か。トレーナーにはお世話になっているから確定。サテリットにもだな。あとはテイオーにマヤ、いつもクラスで世話になっているナイスネイチャにも買った方がいいかもしれないな。

 トレーナーには…そうだな。このネクタイピンが似合いそうだ。いつもつけている黒のネクタイに合いそうだ。テイオーとマヤ、ナイスネイチャとサテリットには色違いのハンカチを買っていくとしよう。そうだ、あれも買っておこう。日頃お世話になっているしな。

 レジカウンターへ向かい、会計を済ませる。小さいものばかり買ったおかげでもってきたバッグに楽々入った。

 外へ出るとゴルシは大きめの紙袋を肩から下げて私を待っていた。

 

「おせーぞアル、何買ってたんだ?」

「トレーナー達に日頃の感謝の品をな。クリスマスとはそういう日なのだろう?」

「まぁ、そうだけどよ。お前って意外と大胆なんだな」

 

 はて。何のことだろうか。私が首をかしげているとゴルシは一瞬諦めたような顔をし、私をまた引っ張って歩き始めた。

 

 もう二軒ほど店を回った頃だろうか。商店街でお昼を告げる放送が鳴り響いた。

 

「もうそんな時間か。ゴルシ、どこか店に入ろう。希望はあるか?」

「おう!いい店知ってんだよ!こっちこっち」

 

 ゴルシが案内してくれたのは商店街のメイン通りから一本奥に入ったところにあるこじんまりとした店だった。表とは違って人影はほとんど見えず、遠くの喧騒が聞こえるほど静かだった。

 

「一本奥に入るだけでこうも印象が変わるものだとは…」

「すげーだろー?ここの日替わり定食がうめーんだよ。今日は…お、とんかつ定食か。これ旨いんだよな」

 

 店の前に出されている黒い立て看板にマーカーで書かれたメニューを見ていると、ガラッと扉が開けられ、中年の男性が顔を出した。

 

「聞きなれた声がすると思ったらやっぱりゴルシちゃんか。そっちの子は友達?」

 

どうやらゴルシと顔見知りのようだ。

 

「お、店長!そうそう、こいつにもここの飯食わせてやろうと思ってさ」

「そりゃありがたいねぇ。とりあえず入りな」

 

 招き入れられた店内には私たち以外のお客がちらほらいる程度で、空席が目立つ。ゴルシはその少ない客に対しても声をかけ気さくに挨拶している。どうやら全員と知り合いのようだな。こういうお店は嫌いじゃない。

 案内されたカウンター席に腰を下ろし、店長と相対する。ニコニコと人の好さそうな笑みを浮かべている。

 

「私はここの店で店長兼料理人をしているもんだ。気軽に店長と呼んでくれ。キミは?」

「ゴルシのルームメイトで、後輩のアルだ」

 

 私の自己紹介に店長は口笛をヒュゥと鳴らし、片肘をついて身を乗り出してきた。

 

「随分とまぁクールじゃないか。どうだ?ゴルシの相手は大変だろう?」

「オイ店長、聞こえてんぞ」

 

 店長がゴルシに小突かれる。他の客は笑っていた。

 

「そうだな。だがゴルシは良い奴だ。そこまで苦労はしてない」

「おぉ~、意外な答えが聞けたな」

 

 ゴルシは呆気にとられたような表情をしている。日頃から色々やらかしている相手に対してこうも言われたらそうなるのは少しばかり分かる気もするが、私の精神は大人である。その行動の裏側に隠された意図を読むのは朝飯前。だからたまにやられる本当に訳が分からないこと以外は可愛いものなのだ。

 

「店長、日替わり定食の小さいのをくれ。ゴルシは…」

「デカいので頼むぜ!」

「あいよ。待ってな」

 

 そういって店長は奥に引っ込んでいった。その時、入り口の扉が開けられ、複数人のグループが入ってきた。

 

「店長、空いてるか?」

 

 ものすごく聞き覚えのある声だった。

 

「小林~、歩くの速えって。ちょっと待てよ」

 

 そう、トレーナーだ。彼も今日はオフでどこかに出かけるというのは聞いていたが、まさか友達(いつぞやの旅館番台とその一味)と一緒だとは。

 

「あれっ?アルカンジュ、こんなところで何を?」

「ゴルシに連れられて昼飯をな」

 

 その声につられて息を上げて膝に手をついて下を向いていた(番台)が顔を上げて叫んだ。

 

「アルちゃんがいる!?オイ皆、早く来いよ!」

 

 そこからは静かなはずのこの小さな店は表通りの商店街にも負けないほどうるさくなった。どうやらトレーナーはここの常連の一人で、店長やほかの常連たちに私の話をしていたらしい。曰く…

 

「ほう、アルちゃんが小林の言っている最強のウマ娘か」

「この子が無敗の三冠獲れるってアンタが酔いながら豪語してた子?」

「あのシンボリルドルフをも超す存在がこの子だと」

 

…はぁ。確かに私は速い部類に入るかもしれないが誇張しすぎである。

 

「トレーナー…!買い被りすぎだ」

 

 言葉に怒気を少しばかりはらませてそういうが、トレーナーには全く通じていないようであった。そればかりか俺は信じてる!なんて言い出す始末だ。思わず眉間を押さえてしまった。

 トレーナー達が別な席に行ってからしばらくして、奥の方から店長がやってきた。

 

「アルちゃん苦労してんな。ほらよ、日替わり定食大と小、お待ちどうさん」

 

 差し出されたお盆を受け取り、片方をゴルシの前に置く。

 

「「いただきます」」

 

 二人そろって挨拶をし、食べ始める。小さなサイズでも十分なボリュームのあるこのとんかつ定食は、ゴルシが推すだけあってかなり美味である。カリカリの衣と、柔らかく肉汁あふれる中身。しゃきしゃきの千切りキャベツともマッチして食べ応えは抜群だ。正直今日は喫茶店で軽く洋食でも、と思っていたのだが。こういうのも悪くないな。

 食べ終わって口を拭き、水を飲んでお会計へと移る。

 

「…あいよ。丁度だな。アルちゃん、ちょっといいか」

 

 自分の分の金額を払い終えたところで会計を担当していた店長に呼び止められる。

 

「なんだ?」

「あいつ…小林のことをよろしく頼む」

 

 もちろんこれからずっとお世話になる気ではあるが…。

 

「どういう意味だ?」

「あいつは物事を自分一人で抱えすぎるきらいがあるから、支えてやってほしいんだ。表面上は大丈夫そうに見えても大丈夫じゃなかったことが過去に何度もあってな。ちっとばかし心配なんだ。少し前に担当ができたっつって大張り切りしてたからよ」

 

 どうやらトレーナーはかなり長い間ここの店の常連のようだ。店長が息子を心配する親父の顔をしていた。トレーナーは確か二十代前半だからな、まだまだ若い。年長者として私がサポートするのが筋という者か。…いや、今は逆だから…まあいいか。とりあえず適度にトレーナーをねぎらえばいいという事は分かった。

 

「あぁ、分かった。心に留めておこう」

「それじゃあな、また来てくれよ!」

 

 店長に見送られ、店を後にする。先に行っていたゴルシと合流し、商店街散策に戻る。時刻はもう一時半。少しばかりあの店に長居しすぎた感も否めないが、楽しい時間を過ごせたので良しとしよう。

 商店街の半分を過ぎたころだろうか、ある場所に人々が多数並んでいるのを発見した。

 

「お?福引じゃねーか」

「福引?」

「なんだ―オメー、福引も知らねぇのか」

 

 曰く、商店街で買い物をして福引券とやらを貰って、それを使って行うくじ引きのようだ。

 

「福引券とは…あぁ、さっき貰ったやつか」

「おっ、やるか?」

 

 せっかく来たのだ、やらねば損という物だろう。あの長い列に並ぶのは少し億劫だが…まあ時間は有り余っているのだ、問題あるまい。

 ゴルシと二人で列の最後尾に並ぶ。時折鳴り響く鐘の音を聞きながら私達は順番が来るのを待った。

 列に並んでる間、時折こちらを見てヒソヒソ話してる者や、何故か写真を撮っていく者が居たが、あれは何故だろうか。ゴルシ曰く私の姿が整っているからでは、との事。その通りであれば良いのだが。

 それはそれとして無断撮影の輩の所には即座にゴルシが飛んでいって制裁していた。

 

 いよいよ私たちの順番がやってきた。手持ちの券は3枚なので3回回せる寸法だ。ゴルシは4回。

 係の人に券を渡し、ハンドルに手をかけてクルっと一回転。出た玉は白。

 

「残念、6等のポケットティッシュです」

 

 些か残念である。まあいい、まだ2回もあるのだから。

 2回目は1回目よりも少し強く回した。決して何か出て欲しいと思った訳では無いぞ。断じてな。

 

「残念、6等のポケットティッシュです」

 

 3回目だ。今度こそ何か出て欲し……いやなんでもない。この程度のことで(6等が何回続いたとしても)私は動じないのだ。

 

「5等、商品券2000円分です!」

 

 まぁ、こんなものか。それにしても6と5の差がありすぎではないだろうか。まあ当たったからいいのだが。

 

「良かったなアル、それこの地域ならほとんど使えるやつだから使い勝手がいいぞ」

 

 そう言ってゴルシはガラガラの前に立った。彼女は意気揚々と福引券を係員に渡し、回した。結果は…

 

「残念、6等のポケットティッシュです」

 

 彼女のポケットにティッシュが4つ増える羽目になった。目に見えて彼女は落ち込んでいる。

 

「ゴルシ、商品券で何か買ってやるから…元気を出してくれ」

「よぉしこれでジェンガやろうぜ!」

「さては元気だろお前」

 

 バレた?とお茶目に舌を出して逃げるゴルシを軽く追う。直ぐに追いかけっこは終わりまた散策に戻った。ゴルシはもう行きたいところがないらしく、行先は任せると言われてしまった。

 現在時刻は午後4時を回ったところ。そろそろ日が落ちてくる頃だ。いくら休みとはいえ門限はあるので7時までには帰らないといけない。余裕を持って6時には商店街を出るとしてあと行くところと言えば…

 

 「おや、マヤノちゃんの友達の…」

「アルカンジュだ。久しぶりだな」

 

 私たちは前にマヤと来た模型店に来ていた。店内に人はあまりおらず、閑散としていた。

 

「スホーイは作れたかい?今日は何を探しに?そして後ろの方は?」

「あぁ、完璧に仕上げた。今回は銃…モデルガンのパーツを探しに来た。後ろは先輩だ」

「初めまして。アルカンジュのルームメイトで先輩のゴールドシップと申します。以後お見知りおきを」

 

 誰だお前!?中身が入れ替わったか!?…あ、笑っている。遊んでいるのだなこれは。

 彼女は私のリアクションに満足したのか、それ以降変なしゃべり方はしなかった。

 その後、私は店主に案内されモデルガンコーナーへ。ゴルシは電子工作のコーナーへと消えていった。

 

「アルちゃん、持ってるモデルガン(おもちゃ)はなんだい?」

「私のモデルガン(ホンモノ)はGLOCK17という型だ。パーツはあるかな?」

 

 もちろん、と店主は言って棚から引き出しをひとつ取りだしてきた。中には本物と見間違うレベルの精巧さを誇るパーツたちがズラリ並んでいた。

 

「この中身は全部GLOCK系のパーツだ。何が欲しい?まけとくよ」

「そうだな…」

 

 私は改めて引き出しの中のパーツを見る。小型ドットサイト、マウントレール、フラッシュライト、レーザーサイト、ストライクフェイス、拡張マガジンにPDW化キットまである。

 あまり銃本体を大きくしたくは無いから…

 

「フラッシュライトとレーザーサイト、それとストライクフェイスを貰おうかな」

「毎度!拡張マガジンとかはいらないかな?」

 

 すまない店主。拡張マガジンは使えないんだ。

 そういう意味を込めて首を横に振ると、店主は大人しく引き下がってくれた。彼はパーツを持ってレジへと向かい、金額計算と在庫メモを始めた。

 

「あいよ、占めて21500円だな」

「丁度だ」

 

 削り出しフェイスとレーザーサイトが高くついたな。なんならフラッシュライトも普通に高い。結論全部高い。前世の若手の頃買ったパーツ類はもうちょっと安かった記憶があるが…まあ致し方あるまい。

 私が会計を終えた時、ゴルシも何かを抱えて戻ってきた。どうやら電子工作キットを持ってきたようだ。

 

「お会計お願いします」

「あ、あいよ…5640円だな」

 

 どうやらこの店ではあのキャラで通すらしい。黙っていれば究極美人のゴルシであるから、店主が戸惑っている。多分彼女は内心大笑いしていることだろう。

 無事会計を済ませ、店を出る。ゴルシはデカい工作キットと、雑貨屋で買ったデカい物を持っているせいでヨタヨタと歩いている。

 

「ゴルシ、片方貸せ。持ってやる」

「お?マジで?サンキュー!」

 

 彼女の工作キットの方を受けとり、2人して商店街の入口へと向かう。夕日がほぼ沈み、空は地平線間際を除いてもう夜の色に染まっていた。そんなに長いはしておらず、まだ5時を少しすぎたくらいだと言うのにもう辺りは街灯がつき始めてイルミネーションの輝きがさらに増してきている。

 

「ゴルシ、あとは帰るだけだな?」

「おう。やりたいことは全部やったぜ。飯は学園の食堂でいいだろ」

 

 他愛もない話をしながら学園までの道のりを歩く。改めて今日は本当に楽しかった。心からそう言える1日だった。

 

 学園に戻り、1度自室に戻って制服に着替えた。学園内私服は認められていないからな。

 

「お?アルどっか行くのか?」

「あぁ、テイオーとマヤ、あとネイチャ、そしてトレーナーとサテリットにプレゼントを渡してくる」

「…そっか、いってら」

 

 部屋の片付けをしているゴルシを置いて、寮を回る。各員の部屋の位置は覚えたので迷うことは無かった。テイオーとマヤに至っては同室だしな。

 

 「マヤ、テイオー、居るか?」

「アルちゃん?どうしたのこんな時間に」

「どこ行ってたのさー!」

 

声をかけるや否や扉が開かれ中から元気なふたりが飛び出してきた。

 

「クリスマスプレゼントを渡そうと思ってな。これ、ハンカチなんだが…」

「えっくれるの!?ありがとう!」

「ヤッタアアアアアアア!」

 

 ハンカチでここまで喜ぶものなのだろうか。年頃の子の考えることはよく分からないが、喜んでもらえてこちらも嬉しい。

 

「それじゃあ、他にも渡すところがあるから失礼させてもらうぞ」

「そっか、またね!」

「またあした!」

 

 さて、次はネイチャだ。彼女の部屋は…ここだ。同室は確か高等部の先輩だったから慎重に…

 

「すみません、ネイチャさんは…」

「およ?アタシに何か用ですかな?」

 

 びっくりした。背後から急に声が飛んできた。振り向くとそこにはネイチャがいた。

 

「びっくりしたじゃないか。いや何、クリスマスプレゼントを渡そうと思ってな」

「あらま、そんな気を使ってもらわなくていいのに…」

「まあそう言うな、ハンカチなんだが、貰ってくれるか?」

「もちろん!ありがとうねアルちゃん」

 

 彼女は笑って受け取ってくれた。普段から周りを伺っていて作り笑いが多い彼女だが、今ばかりは本当に笑っていた。受け入れられて私も一安心だ。

 さて、次はトレーナーだ。彼の事だ。戻ってきた後また仕事をしているに違いない。きっとトレーナー室だろう。

 案の定トレーナー室に電気が点いていた。いざドアを開けようとしたところ、中から話し声が聞こえる。どうやらサテリットもいるようだ。ノックをして、ドアに手をかける。

 

「トレーナー、サテリット、渡したい物が…」

「おっ、昼間ぶりだな」

「帰ってくるのが遅いじゃないかアルカンジュ」

 

 部屋に入ると、そこには小さいツリーが飾られ、机の上にはご馳走が並べられていた。そしてサテリット、敬語を使うなとは確かに言ったが慣れるのが早すぎやしないか?

 

「それで、渡したいものってなんだい?」

「クリスマスプレゼントだ。サテリットにはハンカチ、トレーナーにはネクタイピンを買ってきた」

「…俺用意してないですよ?」

 

 サテリットが申し訳なさそうにハンカチを受け取る。トレーナーは意外そうな顔をしていたが、受け取るとすぐに笑顔になってくれた。

 

「いやぁ、俺も担当からプレゼントを貰える日が来るとは…くぅ、感動…!」

 

 そんなに嬉しいか。そこまで喜んでくれると私も嬉しいというものだ。

 

「それじゃ、アルカンジュも来た事だし食事にしようか」

「そうだな」

「今日はたまたま私が外で食べなかったからいいものを…今度からはちゃんと事前に言ってくれ。少し待て、ゴルシに連絡を入れる」

「「はい…」」

 

 かくしてチームでのクリスマスディナー(食堂製)が始まった。いつもより豪華な食事に3人で舌鼓をうちながら完食した。特にステーキ、あいつは美味かった。

 

 

 時刻はもう7時を回っている。そろそろ寮に戻らなければならない時間だ。

 自室の前まで来てふと背筋にいやな感じを覚えた。扉の向こうに何か恐ろしいものが待っているような、そんな気配。意を決して開けると…

 

「…ゴルシ?」

「よう、アル…」

 

何故か元気の無いゴルシがそこに居た。体調不良という訳ではなさそうだが、実に不機嫌そうである。

 

「なぁ、アル」

「なんだ?」

「アタシに渡すもの、ないの?」

 

 その一言で理解した。コイツ自分だけプレゼントが貰えてないから拗ねてるだけだ、と。そして夕食も一緒にとれなかったしな。拗ねて当然か。

 

「安心してくれ、ちゃんとある。ほら」

 

 私は雑貨屋で買っておいたものをゴルシに渡す。それを見た途端、彼女はみるみる元気になった。やはりな。

 

「やっぱ分かってんじゃねーか!…お?スマホケース?」

「私とお揃いだ」

「…!!!!」

 

 ゴルシが飛びついてきた。

 

「そんなに嬉しかったか」

「だっでよぉぉ…忘れられたかと思ってよぉぉ…」

 

 そういう彼女の手には小さな包みが握られていた。

 

「…っと。これ、アルの分な。良かったら使ってくれ!」

 

 すっかり元気を取り戻した彼女から渡されたのは黒フレームに、グリップがオレンジの多色ボールペンだった。最近クラスで話題になっている使いやすいボールペンだ。

 

「これは…。ありがとうゴルシ。大切に使わせて貰うよ」

「おう!無くすんじゃねーぞ!ヨシ、風呂いくぞ!!」

「だいぶ急だな?」

 

ーーー

 

 あの後風呂に行き、特に何事もなくサッパリして部屋に戻ってきた私たちは一日の疲れを少しでも取るためにいつもより早く布団に入って寝る事にした。

 ゴルシはスマホケースを受け取ってから上機嫌ではしゃぎ続けていたため、布団に入ってから数分もすると、寝息を立て始めた。

 ゴルシが寝に入ったのを見届けて、私も目を閉じた。途端に疲れがベッドに染み込むような感覚に襲われ、体が動かなくなる。

 どうやら自分が思っていた以上に私も疲れていたらしい。今日はこのまま眠るとしよう…。




 後日、カスタムした銃をニコニコ眺めているアルカンジュを苦笑いで見ているゴルシがいたとか居ないとか。

 次回トレーニング回の予定です。ではまた。
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